皆さんは、タバコを吸われるでしょうか?
これまで、タバコについての記事はいくつか書いてきました。その中でも、2020年4月1日「改正健康増進法」により、例えば屋内での喫煙は原則禁止されることになります。
ただ、この政策に呼応するかのように、健康増進法の対象にならない「無煙タバコ」が、すでに販売開始されています。
そんなタバコですが、実は新型コロナウイルスも含めて感染による症状がずっと重たくなることが分かっています。
今回は、「新型コロナウイルスとタバコ」についてご紹介します。
→無煙タバコについては、こちらの記事で紹介しています。
そもそも日本禁煙学会が危険性を報告している!?
日本禁煙学会が2020年2月20日に発表している「新型コロナウイルスの危険因子」として、以下の5つが挙げられています。
- 男性
- 高齢(60歳以上)
- 喫煙(現喫煙者並びに過去重喫煙者)
- ぜんそく、COPD
- 糖尿病
とあります。
《危険因子となる根拠は?》
- 「60歳以上」で「男性」というのは、当時の中国の状況から。
- 「喫煙」については、MERSコロナウイルス(中東呼吸器症候群)の報告例で、喫煙者19例のうち10例が死亡、9例が生存していたことに対して、非喫煙者は10例のうち、死亡は0例でした。
- 「ぜんそく」や「糖尿病」は、肺感染症であれば重症化することは当然ということになります。
→糖尿病の場合、血糖値が高くなると白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下するため、病原菌と十分に戦うことができなくなります。(血糖コントロールと免疫力は、密接に関わっています)
さて、それではなぜ喫煙が新型コロナウイルスを重症化させてしまうのでしょうか?
喫煙と新型コロナウイルス
日本禁煙学会では、「新型コロナ感染症で死なないために紙巻きタバコも電子タバコもやめましょう」という衝撃的なタイトルで報告されています。
電子タバコも例外ではない!
電子タバコ使用者は、呼吸器感染症にかかりやすく治りが遅いことがすでに分かっています。
動物実験と細胞実験の結果、ヒトの気管支の粘液繊毛運動が抑制され、さらに咳反射が減ることで電子タバコ使用者の肺炎リスクが高まることが報告されています。
「咳反射が減る」というのは、電子タバコのエアロゾルにさらされた30名の非喫煙者の咳の出方が減っていたためです。
そもそも、喫煙者が重い感染症・敗血症・鈍的外傷(鈍い物がぶつかる)を患うと、急性呼吸不全症候群(ARDS)を併発しやすくなります。
さらに、体内にニコチンが入り込んでいる人の場合、受動喫煙によるごくわずかな量であっても、ARDSによって呼吸不全に陥る危険性がとても高くなります。
つまり、特にパンデミックが発生してしまっている現状においては、受動喫煙の本当の恐怖を思い知るのは、むしろ「禁煙してから」ということになります。
中国での感染者については、このように分析されています。
中国からの情報ですので、一概に信用していいのか分かりませんが、少なくとも中国の喫煙率は女性よりも男性が多い(男性:2億8800万人 対 女性:1260万人)こと。
さらに、新型コロナウイルス肺炎患者では喫煙の有無により14倍も肺炎の悪化、死亡が多くなっていました。
国立薬物依存研究所所長の見解は?
ちなみに、国立薬物依存研究所所長:Volkow(ボルコフ)博士はこのように発信しています。
世界が新型コロナウイルスとの闘いの最中だが、大事なことは、とりわけ薬物依存者が被害を受けやすいという警告を専門家が発信することだ。新型コロナウイルスは肺に感染しやすいので、紙巻きタバコ、電子タバコ、マリファナ使用者は重大な危険にさらされている。
博士によると、電子タバコや紙巻きタバコは、肺を傷つけることが分かっているようです。特に、電子タバコのエアロゾルが「肺の細胞を傷つけ、感染を防ぐ力を削ぐ」という研究結果が積み上げられているとのことです。
簡潔にいえば、喫煙は「免疫システムを傷つけ、感染症悪化と重症化をもたらす」ということでした。
それでは最後に、2020年3月10時点の中国の感染と喫煙についてまとめられたバーモンド洲ジョージメイソン大学公衆保健学部などが発表した「ニコチンは呼吸循環器の COVID-19 感染リスクを高めるか? 」についてご紹介します。
喫煙関連疾患は、心血管と肺に多く起こる!
ニコチン受容体が、心臓・肺・血管に多く分布していることが影響しています。受容体というのは、「生物の体にある外界や体内からの何らかの刺激を受け取る構造」のことです。
さて、そんなタバコ製品にはニコチンだけでなく、がん・心血管疾患・呼吸器疾患を発病させる5000種類以上の科学物質が含まれていることが分かっています。
さらに、紙巻きタバコを使用すると一酸化炭素・多環系芳香族炭化水素(有機汚染物質の1つ)などが体内に入り、肺・心臓・血管・免疫システムに悪影響がもたらされ、新型コロナウイルス感染症の悪化にもつながります。
そして、「電子タバコが世界的に拡がっていることが、新型コロナウイルスなどのウイルスによる呼吸器感染症増加に拍車をかけている」ことが指摘されています。
最後に
呼吸器感染症の重症化リスクは、受動喫煙でも同じです。
ただ、例えば電子タバコを使用することでCOPDになるかどうかはまだ明らかになっていません。ない物を証明しようとすることは「悪魔の証明」と呼ばれ、不可能かもしれません。
ですが、ある物なら証明することができるでしょう。
少なくとも、感染症のリスク因子としてタバコが挙げられているにも関わらず、今の状況で喫煙を続けることは自殺行為ということができるでしょう。
喫煙者は、どうしても自己責任になってしまいます。ただ、受動喫煙にさらされる特に子ども達への影響を心配しています。
以上、今回は「タバコの煙は新型コロナウイルスの危険因子の1つ。」という記事でした。
参考
一般社団法人 日本禁煙学会:「喫煙歴がCOVID-19肺炎の最大の重症化因子」
→http://www.jstc.or.jp/modules/information/index.php?content_id=246
糖尿病情報センター(NCGM):糖尿病と感染症のはなし
→http://dmic.ncgm.go.jp/content/070_070_01.pdf
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