突然ですが、あなたは「溶血性尿毒症症候群」をご存じでしょうか?
実はこの症候群は、子どもたちがO-157の合併症として死亡例まで報告されたことで一躍有名になりました。
今回は、そんな「恐ろしい合併症:溶血性尿毒症症候群」についてご紹介します。
合併症?
溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome=「HUS」とも呼ばれる)
そもそも、この症候群は小児科医:ガッセルらによって、1955年に報告された病気です。実は、60年以上も前に発見されています。
さて、溶血性尿毒症症候群は様々な原因で起こるため病態(病因)は不明ですが、特に病原菌性大腸菌(O-157意外にもO-26・O-91など様々なものがある)に食べ物を介して感染する場合があります。
これらの菌は、腸の中でベロ毒素をだして重篤な症状を引き起こします。
食中毒が原因で発生する溶血性尿毒症症候群
例えば、O-157感染症のうち9~30%がHUSを発症するそうですが・・・
- 15歳未満が80%を占め(半分が5歳未満)
- 乳幼児に多い
つまり、子どもに発生しやすい合併症です。
症状は?
3つの徴候が指摘されています。
検査により・・・
- 溶血性貧血→赤血球が壊され貧血になっている状態。
- 血小板減少→出血しやすくなる。
- 急性腎機能障害→腎臓の働きが低下。
という検査結果が現れれば「HUS」と診断されます。
ただ、検査結果をゆっくり待っている時間はありません。
というのも、以下のような様々な症状が現れるためです。
様々な症状
主な症状
- 蒼白(顔などの血色が悪い)
- 倦怠(全身がだるい)
- 乏尿(尿の量が少ない)
- 浮腫(むくみ)
→これらが主な症状ですが、他にもこんな症状も現れます。
中枢神経症状
- 傾眠(眠くなりやすい)
- 幻覚
- けいれん
といった症状も現れてきます。
そして忘れてはいけないことは、こういった症状がでている多くの場合が「まだ免疫力も体力もなく、未発達な乳幼児や子ども達が対象になっている」ということです。
そもそも、O-157など食中毒になれば「下痢」や「嘔吐」が続き、「脱水」が引き起こされている状態になっていることが想像できます。
そんな状態で、こんな合併症が引き起こされれば命の危険があることはいうまでもありません。つまり、検査結果を待っている場合ではなく、「早い段階で対処する必要がある」ことになります。
特徴は?
病原菌性大腸菌に感染したことが分かってから、5日~10日くらい経ってから発症します。
- 発症した場合は、入院が必要。
- 血小板の数や腎機能の回復を待つ。
- 急性腎不全になった場合は、一時的に人工透析。
- 貧血がひどくなれば輸血が必要な場合もある。
→今は、早期発見ができればほとんど治る病気です。
ですが、冒頭で紹介したようにO-157の合併症として発症した子ども達が亡くなり有名になった経緯もあるため、かなり注意が必要です。
*HUSは、下痢・腹痛などが起こってから数日~2週間後に起こるため油断できない。
最後に
「合併症を引き起こすと危険!」といわれますが、この溶血性尿毒症症候群も状態を悪化させてしまいます。
溶血性尿毒症症候群は、O-157などの病原性大腸菌に感染しないことがなによりも大切です。
病原性大腸菌は、きちんと加熱されていない生肉や乳製品・不衛生な調理器具などを介して体内に侵入してくるため、しっかり加熱してから食べるようにして下さい。
もし、子どもが食中毒になった後はしばらく様子をみてあげて下さいね!
参考
中野こどもクリニック
→https://nakanokodomo.com/sickness/food-poisoning/
知って得する病気の知識
→https://www.med.or.jp/chishiki/o157/002.html
溶血性尿毒症症候群
→https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2016/11/13.7_HUS_aHUS.pdf
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
→https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2016/11/13.7_HUS_aHUS.pdf
コメントを残す