●この記事では、「睡眠時の歯ぎしりなどが身体に与える影響と検査・治療」について説明しています。
力を込めるときに、歯を食いしばることはありますよね?
それでは、睡眠中に「歯ぎしり」や「食いしばり」などをされていませんか?
ただこれは、自分では分かりませんよね・・・
今回は、「早めの治療が必要な睡眠時ブラキシズム」についてご紹介します。
「睡眠時ブラキシズム」ってなに?
睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism:略称「SB」)は、寝ている人がしていればすぐに気付きますよね。
ただ、自分がしているかどうかは分かりません。
家族と暮らしていれば、教えてもらえることができますが一人暮らしをしていれば、それも難しいでしょう。
ただ、睡眠中に歯ぎしりをする習慣があると、以下のような症状が現われることが「オムロン」では紹介されています。
- 家族や友人などから、1年に2回以上歯ぎしりを指摘されたことがある。
- 朝起きたとき、あごにこわばりを感じることがある。
- 食事のときに口を開けにくいことがある。
- 昼間でもふと気付くと歯を噛みしめていることがある。
- 下の歯の内側の歯肉に骨が盛り上がったところがある(※1)。
(※1)歯ぎしりを繰り返すと、歯を支える骨が影響を受け、盛り上がることがあります。下の歯の内側の歯肉部分は骨が出っぱりやすいので、歯ぎしりを知るサインとなります。
私の場合は、過去に上記の2つが当てはまっていました。
それが、「家族から歯ぎしりを指摘」と「朝起きたときのアゴのこわばり」です。ただ、実際に歯ぎしりをしているかどうかは検査しないと分かりませんよね。
実は、2020年4月から健康保険の制度を利用して睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)の検査ができるようになりました。
睡眠時ブラキシズムの特徴は?
そもそも、睡眠時ブラキシズムは「眠っている間に行なわれる顎や口の非機能運動または異常機能」と定義されています。
さて、いきなり「非機能運動が・・・」といわれてもよく分かりませんよね。
まず大前提として、歯や歯周組織に加わる力には「機能運動」と「非機能運動」に分けられています。
- 機能運動・・・ 咀嚼・嚥下・発音など、日常生活に不可欠な機能。
- 非機能運動・・・習慣・癖になっているもので、なくてもいい機能。
歯ぎしりは、習慣や癖になるため「非機能運動」になります。さらに、言えばブラキシズムは歯ぎしりだけではありません。
ブラキシズムの3分類
- 歯ぎしり(グラインディング)・・・上下の歯をこすりあわせる動き。音がしない場合もある。
- 食いしばり(クレンチング) ・・・上下の歯をぐっと噛みしめる動き。覚醒時に行なわれることも多い。
- タッピング ・・・上下の歯を噛み合わせる動き。
このように、「ブラキシズム」と一言でいってもこの3種類があります。
そして、自覚がない人が多いかもしれませんが、そもそも睡眠時ブラキシズムは「病気」です。このことは、健康保険で検査対象になったことからも理解できるのではないでしょうか?
有病率は?
「第6回ISMSJ学術集会サテライトシンポジウム 03/08/14 神戸」で発表された歯ぎしりの発生率を確認するとこのようになっていました。
- 3~10歳 :14 ~35%
- 10代後半 :13%
- 成人 : 5 ~10%
- 60歳以上 :3%
つまり、年齢が上がるごとに患者さんが減少していくことが指摘されています。
また、「ストレス」や「喫煙」、「歯並び」などさまざまな原因が指摘はされていますが、はっきりと証明されていません。
ただ、「睡眠時ブラキシズム」によるトラブルは深刻な場合もあります。
睡眠時ブラキシズムの放置は危険!
そもそも、「噛む力」でスポーツ選手の記録は大きく変わる場合もあります。
噛むこと研究室では、「噛む力」が紹介されています。
- 筋力が4~6%アップすることがある。
- 姿勢が安定する。
- 前頭前野の血流がよくなり、集中力と判断力があがる。
とはいえ、噛めばいいわけではありません。
例えば、運動パフォーマンスを上げるなら上下左右合せて8本の奥歯をしっかり噛む必要があります。
そのためには、「マウスガードを使用して歯がしっかりと噛み合うようにする」といった工夫が必要になります。
さて、睡眠時ブラキシズムは睡眠中に口を動かしているわけですから、中には「口の筋力がアップするからいいのでは?」と考える人もいるかもしれませんね。
ですが、問題は覚醒時よりも睡眠時の方が力が強く加わることがあるなど、口腔内に与える影響が大きすぎる点です。
睡眠時ブラキシズムは、病気!
繰り返しになりますが、睡眠時ブラキシズムは病気です。
それでは、なぜ病気として対応する必要があるのでしょうか?
答えを先に言ってしまえば、「治療が必要だから」ということになるでしょう。
「睡眠中」ということは、無意識ですよね。つまり、睡眠中ですので当然、覚醒時ほど力をコントロールできていません。
場合によっては、クルミの殻を割ってしまうほどの圧力をかけている場合もあるようです。その結果、さまざまな影響が現われることになります。
睡眠時ブラキシズムの影響はさまざまさまざま!?
2016年「睡眠時プラキシズムの基礎と最新の捉え方」では、以下のような悪影響が指摘されています。
- 咬耗
- 噛み合せの力が原因の歯質の欠損
- 歯の破折
- 補綴物(ほてつぶつ:「詰め物」や「入れ歯」など)の破損
- 歯周病の増悪
- 顎関節・咀嚼筋の疼痛・疲労
- 緊張性頭痛
- 肩こり
など、多くの症状が引き起こされる可能性が指摘されています。
つまり、睡眠時ブラキシズムは顎関節の痛みだけでなく、「自分の歯」や「入れ歯」などの破損についてまで指摘されています。
確かに、クルミが割れるほどの圧力が加わるとしたら、おかしいことではないのかもしれません。
検査と治療?
先程もお伝えしたように、睡眠時ブラキシズムは2020年4月から健康保険を使って検査ができるようになりました。
検査
- PSG(ポリソムノグラフィー)
→夜間就寝時の脳波や呼吸、心電図や顎や眼球の筋肉の動きを計測する検査。(通常1泊の入院)
- 睡眠時歯科筋電図検査
→計測装置(図 1)を本人が装着し、自宅で睡眠時の顎の筋肉の筋活動を測定。
→4 月より保険適用:検査費は3 割負担で 2,000 円弱(再診料等は含まない)。
治療
「スプリント」と呼ばれるマウスピースを睡眠時に装着。
このスプリントにより、「歯」や「被せ物」などを覆うことができるため保護することができます。
また、歯列全体でブラキシズムを受けることができるため、過度な力が1箇所にかかることを防ぐ目的もあります。
最後に
睡眠時ブラキシズムは、高齢者にも引き起こされますが多くの場合は子どもに発生します。
実際に、私の息子も歯ぎしりをよくしています。
とはいえ、歯が摩耗していたり、もちろんそれにより欠損が見られたりするわけでもありません。
そもそもの話しですが、「睡眠時にブラキシズムをしていれば必ず治療が必要!」というわけではありません。
実は、睡眠時ブラキシズムは完治が必ずしも目的ではなく、「緩和」が必要な場合もあります。
例えば、ストレス過多でイライラするだけでなく、時には仕事中に声が出なくなることさえあります。
もしも、睡眠中の歯ぎしりなどがストレスを緩和するための手段だった場合、この症状をなくしたことで、他の部分に現われるかもしれません。
ある意味、歯ぎしりなら見た目で分かるため気付きやすいですが、次に引き起こされた時は精神的な病気になっているかもしれません。
そのため、完治ではなく緩和が優先されることもあります。
どちらにしても、子どものうちから「歯並び」や「虫歯」の確認など、歯科への定期受診は忘れずにした方がいいでしょう。
参考
小林歯科医院:寝ているあいだの病気
→https://www.syuei.com/happy/html/5059.html
こうなんファミリィ歯科:「口腔内における力について」
→http://www.konan-family.com/img/tikara.pdf
長崎県市町村共済組合:お口の健康アドバイス
→http://www.nagasaki-kyosai.jp/up_files/whatsnew/20200728.pdf
医療法人 奥田歯科医院:歯医者が教える「歯ぎしり・食いしばり」についての正しい対処法
→https://okuda-dental.jp/column/featured/3211/
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