子育てをしていると、虫歯にさせないように毎日歯磨きがかかせません。ですが、お口の健康で気をつけないといけないのは、他にもあります。
みなさんは、「歯周病」と「歯槽膿漏」の違いについてご存じでしょうか?
「子どもは歯周病にならない?」
「歯周病は命に関わる?」
なんて話を耳にしたことはありませんか?
今回は、そんな「歯周病」のお話です。
そもそも「虫歯」と「歯周病」は違うの?
虫歯も歯周病もどちらも細菌による感染症です。
虫歯菌・・・「歯」そのものに菌が感染して歯を溶かしていく。
- ミュータンス菌
が代表的な細菌。
虫歯についてはこちらの記事で紹介しています。
→再石灰化は唾液の作用! 虫歯は再石灰化と脱灰とのせめぎ合い!?
歯周病菌・・・歯根膜といわれる部分が菌に壊され最後は歯が抜け落ちる病気です。
- アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A.A菌)
- プロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)
- プレボテーラ・インテルメディア(P.I菌)
- スピロヘータ
といったこれらの細菌が歯と歯茎の境目(歯肉溝)で異常増殖していきます。
というわけで、虫歯も歯周病も菌により破壊されることは同じですが破壊される部分が違います。ただ、結果として歯を失う危険性をはらんでいます。
歯周病と歯槽膿漏の違いは?
実は、歯周病が重度になった状態が歯槽膿漏です。それでは、「歯周病」について順番に説明していきます。
❶歯茎が炎症する総称を「歯周病」と呼ぶ。
➋炎症が表面の歯肉だけに限られている→「歯肉炎」
❸炎症が歯槽骨などさらに広がっている→「歯周炎」
それでは、「歯肉炎」と「歯周炎」について見ていきましょう!
歯肉炎ってなに?
「歯肉炎」は、歯周病の初期段階。
歯肉炎は歯垢(プラーク)が引き起こす歯肉の炎症です。虫歯の記事でも書いていますが、歯垢は細菌の塊で虫歯の原因でもあります。
子どもだけでなく、多くの人がかかる歯肉炎ですが、痛みなどの自覚症状がないことが特徴です。つまり、放っておくと次の段階「歯周炎」に進行してしまいます。
ただし、歯肉炎を引き起こしている場合は判別することは可能です。
- 歯肉が赤く腫れ上がる(健康な人は薄いピンク色)
- 歯磨きなどちょっとした刺激で歯茎から出血する。
*歯磨きは力を抜いて磨くことが鉄則!
歯周炎(歯槽膿漏)
《軽度歯周炎》
歯肉の炎症が進み、歯と歯肉の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができます。→*歯槽骨の破壊が始まります。
医学上では、「歯周ポケット」は・・・
①歯肉溝が正常な状態:1mm~3mm。
②歯肉溝が4mm以上。
この2種類に分類され、4mm以上になると「歯周ポケット」と呼ばれます。歯肉溝が4mm以上になると、歯周病が進行しつつある状態のため、歯科医による診断が必要になります。
《中等度歯周炎》
歯肉がブヨブヨに腫れ、歯周ポケットから膿が出て口臭がひどくなります。歯が浮く感じがして、物が噛みにくくなります。
《重度歯周炎》
歯槽骨がほとんどなくなり、歯根が露出します。歯肉が腫れて痛み、歯がグラグラになって最後には抜けてしまいます。
*歯槽骨は、歯を支えている顎の骨で歯はこの骨の中に植立しています。
膿漏とは、膿(うみ)が絶えず流れ出す状態をいいます。つまり、歯槽膿漏とは歯槽骨が細菌により破壊され膿が出ている状態をいいます。
歯周病の進行は下の図のような段階で進んでいきます。そして、最後には歯が抜け落ちます。
歯の統計調査
厚生労働省がH28年に発表した歯科疾患実態調査参照
歯肉炎になる割合は?
図1 年齢別の歯肉出血割合
歯肉出血は、歯周病の初期段階である歯肉炎を引き起こしている割合です。図1から分かるように、20代以上になると歯肉炎になる割合が一気にあがります。
それでは、歯周炎の割合はどうなっているのでしょうか?
図2 4㎜以上の歯周ポケットを有する者の年次推移
図2をみると、(医師の診断が必要な歯周ポケットの歯肉溝が4mm以上)の歯周ポケットがある割合は、どの年代でも2016年度が大きく悪化していることが分かります。つまり、図1・2から歯周炎の状態に誰がなってもおかしくないことが分かります。
それでは、口腔ケアといえば毎日の歯磨きですが、しなくなってしまったのでしょうか?
図3 年代別の歯ブラシ実施率
図3を確認すると、1969年の時点で毎日歯を1回以上磨く割合は約80%に近い数値になっています。その後は、1日にみがく回数が増えています。現在では、毎日1回みがく人は全体の2割以下と減少し、かわりに2回以上みがく人が大きく増えています。
年代別に、2回以上(1日に2回・3回以上)歯を磨く割合は、図4になります。
図4 毎日2回以上歯を磨く人の割合
現在では、じつに全体の約8割の人が1日に2回以上歯を磨いていることになります。これだけを見ると、「歯を磨く回数が増えたことで逆に歯周病が増えていった?」ように見えます。
しかも、現在では歯にいいとされるフッ素が入った歯磨き粉やキシリトールガムなど歯に効果があるとされる商品が、多数売り出されているにもかかわらずです。
*厚生労働省が実施したH26年の「患者調査」で、継続的な治療を受けていると推測されている「歯肉炎・歯周疾患の総患者数」は331万5000人。前回調査よりも65万人以上増加しています。
そもそも「歯周ポケット内」のプラーク(歯垢)などは歯磨きではとれない
虫歯にしろ、歯周病にしろ原因はプラーク(細菌の塊)ですが実は、虫歯は激減しています。これは、以下の記事でも紹介しています。
→再石灰化は唾液の作用! 虫歯は再石灰化と脱灰とのせめぎ合い!?
ですが、歯周病にはあまり効果がありません。
歯は、歯磨きによる個人の努力で防げますか歯周ポケットは歯磨きでは難しいことが現実です。以前から、歯ブラシが歯周ポケットの歯垢を掻き出すなんてありますが、歯周ポケットがあまり深くなると掻き出すことができなくなるようです。(毛先が届かない)
つまり、結論としては「歯周病は一度進行してしまえば歯科受診!」をする必要がでてきます。(もちろん、「歯周病の予防」という意味では歯ブラシは効果があるでしょう)
そして、プラークを除去するので歯磨きは当然、虫歯にも効果があります。というわけで・・・
- 「歯」の手入れは自分で。
- 「歯茎」から出血するようになれば歯科受診へ!
ただし、歯医者で「すぐに抜きましょう!」などと言われる場合は注意が必要なようです。
歯医者選びの注意点
東洋経済新聞に「本当にいい歯医者を見分ける5つのポイント」という記事があったのでご紹介します。
私が、子どもの頃は怖いおじいさんの歯医者さんがいて、いきなり歯を削ることが当たり前でした。ですが、今では治療の細かい説明があったり、削るにしても最低限の部分しか削らない。歯の写真をとるなど、とても丁寧にしてくれる歯医者さんがあるようです。
*歯は削れば削るほどもろくなり、削ったところから再び細菌に感染して虫歯になりやすくなります。
というわけで、歯医者選びの5つのポイントをご紹介します。
- すぐに虫歯を削ろうとしない。
- 治療前に歯科衛生士が口の中を掃除する。
- 治療のたびに歯の写真を撮影する。
- 自分が不得意な治療は断る。
- 初回の診察時間が長い。
以上が、プロが考えるいい歯医者を見分けるポイントです。
歯医者さんも「近いから」ではなく知識をもって選ぶ時代なんですね。
今回のポイント
- 全体の約8割が歯磨きを2回以上するようになったにも関わらず、歯周病は増え続けている。
- 歯周ポケットの歯垢は、歯周病が進行し歯周ポケットが深くなると歯ブラシでは届かなくなる。
- 歯茎の炎症は歯科受診。
参考
日吉歯科診療所
→http://www.hiyoshi-oral-health-center.org/shisyu1/
エンジョイライフのイーライフ
→http://www.ee-life.net/hatena/sishubyou.html
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所
→https://www.lion-dent-health.or.jp/100years/article/health/001.htm
メディカルノート
→https://medicalnote.jp/diseases/%E6%AD%AF%E8%82%89%E7%82%8E
kao
→https://www.kao.co.jp/clearclean/oralcare/basic/08/
パナソニック
→https://panasonic.jp/teeth/doctor/bk01.html
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