以前、海の事故についてフロートと呼ばれる「乗り込み型の浮輪」が流されて・・・なんて事故が発生していることをお伝えしました。
安全対策として、子ども用ライフジャケットの着用が示されています。
私が子どもの頃は正直、「そんな大袈裟な・・・」なんて思っていました。
今回は、いざというときの命綱。「ライフジャケットは普及しているの?」についてご紹介します。
→フロートについての記事はこちら!
ライフジャケットの効果は?
着用義務化の話しをすると、2018年2月から全ての小型船舶の乗船者にライフジャケットの着用が義務化されています。
ちなみに、乗船者にライフジャケットを着用させなかった船長(小型船舶操縦者)には、最大で6ヶ月の免許停止になります。
このように、ライフジャケットの有効性は認められています。
水難事故
日本では、2013年からの5年間で、5歳~14歳までの不慮の事故により亡くなったのは交通事故に次いで「溺死」が多くなっています。
全国で5年間に128人が亡くなっています。
そんな中、水難事故対策にライフジャケットが期待されています。
釣り人が海中に転落した場合
- ライフジャケット着用者の死者・行方不明者率 :34.9%
- ライフジャケット非着用者の死者・行方不明者率:46.8%
もちろん、ライフジャケットは絶対安全ではありませんが、1割は減少していることが分かります。
さて、そんなライフジャケットは各省庁で法的な着用義務がない場面であっても着用を勧めています。
例えば、消費者庁:「子どもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議」では、
「釣り・ボート・川遊びなどをするときは、ライフジャケットを正しく着用するように」と発表されています。
ライフジャケット着用は当たり前?
平成31年3月 東京都生活文化局:子ども用ライフジャケットの安全な使用に関する調査より
消費者アンケート調査が紹介されています。
対象
東京・埼玉・神奈川・千葉県内に在住する20歳以上の男女で水辺での活動を経験した小学生と同居しかつその活動に同行した保護者。
→質問対象となる小学生の性別は男児・女児ともに1,250人以上。(対象者:2,576人)
・調査期間:2018/10/16~10/20まで
質問
①子どもと一緒にいった水辺の活動(複数回答)
図1 子どもと一緒に行った水辺の活動
図1より、魚釣り以外の海や川などでの遊びが、半数以上を越えていることが分かります。
また、複数回答ができることから1人で複数回体験していることが分かります。
②活動前のライフジャケット所有状況
図2 ライフジャケット所有状況
全体で見ると、ライフジャケットの所有率は35.3%ですが・・・
- シュノーケリング
- 流れのある場所でのボート遊び
- ボートからの釣り
- エンジンのない乗合船での堀・水郷めぐり
こういった経験をしている回答者は、50%以上がライフジャケットを所有していました。
このことから、危険度が高いと思われる川や海などでの活動では準備をしっかりする親御さんが多いようです。
ただ、ライフジャケットを着用したかどうかは別のようです・・・
③ライフジャケット着用の有無
図3 活動中、お子さんのライフジャケット着用の有無
図3から、所有しているライフジャケットの着用は約2割しかなく、5割以上は着用していないことが分かります。
ちなみに、着用しなかった55.6%の水辺の活動を種類別に着用しなかった割合を見ると・・・
- 川・沼・湖・用水路での水遊び、魚とり(釣りを除く)・・・80%
- 海での水遊び、魚とり(釣りを除く)・・・75.8%
- 陸上からの釣り・・・58.9%
ライフジャケットを着用していない割合が、水遊び感覚で遊びに行った場合はかなり高くなっています。
このように、危険が小さいと思われるただの水遊びや陸からの釣りなどでは、ライフジャケットの着用は当たり前になっていないようです。
→溺れる可能性が、ほとんど考慮されていないことが分かります。
それでは、ライフジャケットを着用していて役に立ったことはあったのでしょうか?
④ライフジャケットが役に立つ経験はあったの?
図4 ライフジャケットが役に立った経験割合
図4から、良くも悪くもライフジャケットが役に立った経験がある人は、1割もなかったことが分かります。ちなみに、ライフジャケットが役に立った水辺の活動は全体で109件。
- シュノーケリング・・・39件
- 流れのある場所(海・川など)でのボート遊び(カヌー・カヤック・ラフティングなど)・・・18件
- 川・沼・湖・用水路での水遊び、魚とり(釣りは除く)・・・16件
多い順に、こういった水辺での活動時にライフジャケットが役に立った経験の割合が高くなっていました。
役に立った経験の内訳
- 水に落ちたが浮いた・・・30件
- 流されたときに対処できた・・・8件
ライフジャケットを着用していたことで、最低限の安全確保として役に立っていることが分かります。
とはいえ、ライフジャケットをしていれば「絶対安全!」というわけではありません。
ライフジャケットを着用しても脱出できない!?
さて、これまでライフジャケットの着用はまだまだ浸透していないことを紹介してきました。
ですが、たとえライフジャケットを着用していたとしても、脱出不可能な循環流(リサーキュレーション)というものがあることをご存じでしょうか?
循環流(リサーキュレーション)
川を横断するように設置されている*堰堤(えんてい)の直下流では、越流した流れが上流側に反転する流れのこと。この場所では、渦が発生しているため、脱出できなくなります。
(「堤体(ていたい)に戻ろうとする流れ:バックウォッシュ」と「進もうとする流れ:アウトウォッシュ」がぶつかり渦ができる)
循環流に捕捉されると、脱出が非常に難しくなります。
*堰堤・・・堤防や小規模なダム。
最後に
ライフジャケットは、「ただの水遊び」という認識の時は付けないことが多いようです。とはいえ、川の中は突然深くなり流される可能性もあるため、油断はできません。
また、ライフジャケットをしていたとしても2019年8月に「としまえんのプール」で8歳の女の子が亡くなった事故がありました。
「としまえん」では、空気を膨らませたマットなどの遊具を道のように浮かばせていましたが、「そのマット下に潜り混んだ状態で、少女が発見された」という事故でした・・・
仮に、ライフジャケットをしていても事故は起こってしまいます。
親ができることは、ライフセーバーがいる安全に利用できるはずのプールであっても、子どもから目を離さないことぐらいでしょう。
子ども達と水場に行くときは十分にご注意下さい。そして、ライフジャケットを過信しすぎないようにして下さいね。
参考
東京都生活文化局
→https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/documents/lifejacket3.pdf
国土交通省
→http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html
消費者庁
→https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/children_accident_prevention/
FNN PRIME:「としまえん」プールで8歳女児死亡…ライフジャケット着用でも事故を防げなかった盲点とは
→https://www.fnn.jp/posts/00047772HDK/201908161917_livenewsit_HDK
水辺の安全ハンドブック
→http://www.kasen.or.jp/Portals/0/pdf_mizube/mizubehandbook2017.pdf
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