難病の医療費助成と言えば「指定難病」のはずが・・・ 誰でもは受けられない!? 

 

皆さんは、「指定難病」という言葉をご存じでしょうか?

「難病」と言えば、「不治の病」ということはご存じの方も多いと思います。

今回は、「特定疾患」から完全移行された「指定難病の特徴と課題」についてご紹介します。

 

そもそも「指定難病」ってなに?

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が平成26年に交付されました。この法律に基づき指定された難病を「指定難病」といいます。

ここでいう「指定」というのは、医療費助成の対象として指定された疾患(難病)という意味です。

*「難病対策」については、昭和47年の「難病対策要綱」を始め、これまでも取り組まれてきました。

 

難病ってなに?

冒頭でお伝えしたように、難病は「不治の病」です。

ですが、ひと言で「難病」といっても「高い確率で命を落とす病気から、病気のない方と同じような日常生活を送り天寿を全うできる病気までその種類は様々です。

ここまで差がある理由は、難病が指定される基準にあります。

 

◎「難病」と規定される基準◎

1.発病の機構(メカニズム)が明らかではない。
2.治療方法が確立していない。
3.希少な疾患。
4.長期の療養が必要となるもの。

もちろん、難病ですので療養が必要です。

ですが、例えば運動などの制限を守り薬を飲み続けることで症状を抑えられる難病もあります。つまり、「難病=大変」ということはあっても、「難病=なにもできない!」は大間違いです。

「難病」という大きなグループで考えるよりも、「病名+個人の症状」で考えた方が自然でしょう。

*指定難病は、上記の1~4にさらに追加基準があります。

 

◎指定難病と規定される基準◎

5.患者数が本邦において、一定の人数(人口の約0.1%程度)に達していないこと。
6.客観的な診断基準(それに準ずるもの)が成立していること。

このように、指定難病はさらに2つの条件が追加される必要があります。

難病の中でも、「客観的な診断基準がそろっているにも関わらず、患者数が少ないこと」が要件になっています。

とはいえ、「指定難病」は段階的に増えています。

 

「指定難病」は、告示番号で整理!

  • 平成27年1月1日施行の指定難病(告知番号1~110)
  • 平成27年7月1日施行の指定難病(告知番号111~306)
  • 平成29年4月1日施行の指定難病(告示番号307~330)
  • 平成30年4月1日施工の指定難病(告示番号331)

直近で指定難病に指定されたのは、「告示番号331:突発性多中心性キャッスルマン病」という難病です。このように、指定難病は平成30年4月で331種類が指定されています。

 

「指定難病」制度の問題点は?

「指定難病」は、患者さんの医療費助成という目的もあります。ただ、それ以上にその病気の情報(データ)収集という大きな目的があります。

このことは、支給を受けるために「特定医療費(指定難病)支給認定申請書」を提出する際に、厚生労働省が臨床調査個人票」の情報を利用して・・・

  • 難病の発病の機構(メカニズム)
  • 診療及び治療方法に関する調査及び研究

 

を行うための基礎資料として、使用することへの同意・署名が必要となることからも分かります。もちろん、研究・開発が進むことで、難病ではなくなる可能性もあるので意義のあることだと思います。

ただし、実際にこんなことが起こっています。

 

「特定疾患」という区分が廃止

2017年12月末で経過措置(難病法)が終了したことで、「特定疾患」が廃止されました。そのため、今回紹介する「指定難病」へと多くの対象者が移行されました。

*ただし、対象者全体の2割近くが医療費の助成を受けられなくなりました。

 

◎「特定疾患」に移行できなかった理由◎

  • 軽傷者と判断され不認定となった。(その後、入院し申請に行けない事例もある)
  • 臨床調査個人票の記載を医師に依頼したが、医師から「軽症になるからメリットがない」と言われ、書いてすらもらえなかった。
  • 提出書類が複雑で申請できなかった。

つまり、そもそも「指定難病」として助成を受けるためには、ハードルが高いことが分かります。

 

移行できなかった理由をもう少し詳しく!

理由から見て分かるように、仮に指定難病であっても「軽症」と判断されれば申請すらできません。これは、「重症度分類等」に照らして「病状の程度が一定程度以上だ!」と認められる必要があるためです。

→つまり、病状が進行しないとそもそも助成を受けることができません。

 

◎指定難病は、患者さんが全人口の約0.1%◎

  • 全人口:約1億2千万人の0.1%=約12万人
  • 指定難病は、平成30年4月現在:331種類

つまり、約12万人✕331種=約3,972万人

→これだけの人数を対象に助成するのは無理ということでしょう・・・

*ちなみに、軽傷者でも医療費の総額が33,330円を越える月が、支給認定申請月以前の12月以内に3回以上あれば、医療費助成の対象となります。

 

◎支給認定に必要な書類は・・・◎

  • 特定医療費の支給認定申請書
  • 診断書(臨床調査個人票)

他にも「住民票」や「保健証の写し」など、必要なものは他にもありますが・・・

そもそも、「指定難病」に移行できなかった理由で、『「臨床調査個人票」を書いてもらえなかった』ということは、指定難病に罹患している一定の症状であるという証明(診断書)がないため、「そもそも申請すらできなかった」という意味です。

 

最後に

「指定難病」を受けるためにはそもそもハードルが高く、またそもそも「特定疾患」からの移行も完全には完了できていません。

少なくとも、「書類の複雑さ」「入院してしまい、申請ができない!」ということは大きな課題でしょう・・・

また、治療は最初が肝心と言われるなかで、医療費の問題があるとはいえ軽症の場合は対象になりにくいというのもおかしな話しです。

難病になっても安心して使える制度になるには、まだまだ時間がかかるようです。


参考

JPA一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会
https://nanbyo.jp/2018/11/09/keikasoti/

難病の患者に対する医療等に関する法律
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=426AC0000000050#28

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nanbyou/index.html#h2_free1

 

 

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