子どもの「癖」が口腔機能発達不全症のきっかけに!?子育ては難しい・・・

 

皆さんは、2018年に新しく分類された病気をご存じでしょうか?

この病気は、呼吸や嚥下に障害を生じてしまいます。

今回は、赤ちゃんの食事の与え方などが影響してしまう「口腔機能発達不全症」ついてご紹介します。

 

口腔機能発達不全症ってなに?

「口腔機能発達不全症」って、早口言葉みたいに長い名前ですよね。

そもそも、口腔というのは「歯・舌・口蓋(口の天井部分)等を含む器官」です。つまり、呼吸や食事など生命の根幹の働きをする器官であり、コミュニケーションに不可欠な発生発語も担っています。

つまり、この「口腔の機能がうまく発達していない(発達不全)ために引き起こされる症状」という意味です。

そのままの意味ですね・・・

さて、この病気の怖い所は乳幼児期に与えられた「ミルク」や「離乳食」、「生活習慣」などを通して、本来は自然に身につけていける口腔機能が、「発達しきれていない」もしくは「正常に機能獲得ができていない」ために、専門的な関与が必要な状態になってしまっていることです。

つまり、「母乳・ミルク・離乳食などの誤った与え方」により、呼吸や嚥下に障害を生じさせてしまう病気ということになります。

 

どんな症状があるの?

  • 咀嚼や嚥下が上手くできない
  • 構音の異常
  • 口呼吸

→本人には、自覚症状がない場合が多い。

さて、診断するために以下の診断基準が設けられています。

 

【食べる】

1.歯が生えるのが遅い
2.歯並びやかみ合わせの異常がある
3.噛むのに影響する虫歯がある
4.強くかみしめられない
5.かむ時間が長すぎる・短すぎる
6.かむ側に偏りがある
7.舌の突出が見られる(離乳後)
8.授乳・食事の量や回数にムラがあるなど

 

【話す】

9.話し方に障害(省略・ゆがみなど)がある
10.口がぽかんと開いている
11.指しゃぶり、爪をかむなどの癖がある
12.舌小帯(舌の裏側のひだ)に異常がある

 

【その他】

13.やせ、または肥満
14.口呼吸をする
15.口蓋へんとうなどが肥大している
16.睡眠時にいびきをかく
17.上記以外の問題点

 

【診断基準】

  • 1~6のうち1項目以上
  • 1~12のうち2項目以上

→口腔機能発達不全症と診断される。

 

どうして「口腔機能発達不全症」になるの?

そもそも、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の発達段階で「個人因子」あるいは「環境因子」に専門的な関与が必要な状態です。

例えば食事でいえばこのようなことが考えられます。

  1. 離乳期に発育に応じた硬さや形状の食べ物が与えられなかった(環境因子)
  2. 永久歯が生えるまでの時期に丸呑みの習慣がついた(個人因子)
  3. 幼児期にさまざまな硬さや大きさの物を適切に食べてこなかった(個人因子・環境因子)

それでは、口呼吸についてはどうでしょうか?

例えば、「猫背」が癖になってしまうと背中を丸める姿勢により下顎が引っ張られてしまい、口が開きやすくなってしまいます。

→タブレット端末ばかりで遊ぶ習慣が付いてしまうと、「猫背になりやすい」と指摘もされています。

tung256 / Pixabay

当然ですが、特に小さい子どもの生活習慣は、親が作っています。

とはいえ、忙しい毎日でテレビやタブレットにお世話になることはよくありますよね。

ただ、だからこそ危険性を知った上で「取り返しが付が付かなくなる前に治療しましょう!」ということです。

子育ては、孤立しやすく一生懸命頑張っても正しいか間違っているかさえ分かりません。そもそも、子育て情報は大量にありすぎて選別するのも大変ですよね・・・

そのため、私の場合で言えば専門医(医師など)が発表している情報から選ぶようにはしています。

それでは、具体的に一つ一つの習慣が体にどんな影響を与えるのでしょうか?

 

習慣が体に与える「癖」とは?

《上手くかめない》

  • 丸呑みする→肥満
  • 砕いて飲み込めない→成長の遅れ、痩せ

 

《指しゃぶり》

  • 出っ歯になる→かみ合わせ異常
  • よく舌が出る→舌足らずな話し方になる

 

《その他》

  • 口呼吸→乾燥し、虫歯になる・いびき・無呼吸症候群
  • ぽかんと開いた口→上顎の成長を抑制してしまい、かみ合わせ異常が起こる

他にも、発達障害などさまざな影響が考えられます。

このように、「小さい頃の生活習慣」やその時に備わった「癖」がその後の人生にまで悪影響を及ぼしてしまうため、子どものうちに治療を始める必要があります。

 

最後に

15歳までに適切な機能を獲得できず、さらに歯科治療も受けていない場合、高齢期に機能が低下していくスピードも早くなります。

例えば、山の頂上まで登った人よりも、5合目ぐらしか登れなかった人の方が早く登山口まで戻ってこれることになります。

ただし、この場合は機能低下の話しですので、「早く登山口に戻ってくる」と言うことは、それだけ早く機能が落ちているという意味です。

このように、乳幼児の食生活などの生活習慣が生涯にわたって悪影響を及ぼしてしまいます。

そのため、2018年から「口腔機能不全症」として新しく病名に加わりました。

「病名に加わった(分類された)!」ということは治療に公的医療保険が認められるようになったということです。

ただ、病気の有無に関わらず、定期的な歯科受診はした方がいいでしょう。そして、今回紹介したような子どもの癖は、早く治した方がいいでしょう。


参考

yomiドクター:子どもの「口腔機能発達不全症」…成長に悪影響 早期治療を
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200127-OYTET50037/

日本歯科医学会:口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方
https://www.jads.jp/basic/pdf/document_03.pdf#search=’%E5%8F%A3%E8%85%94%E6%A9%9F%E8%83%BD%E7%99%BA%E9%81%94%E4%B8%8D%E5%85%A8%E7%97%87′

ひろ歯科クリニック
http://www.hiro-dc.info/function.html

 

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