蚊についての記事をこれまでご紹介してきました。
蚊に刺されることは、痒みだけでなく掻き壊しなどもありとても厄介なことですよね・・・
そんな蚊の被害のなかでも、蚊が媒介する病気をご存じでしょうか?
今回は、「日本でも被害がでているデング熱」についてご紹介します。
デング熱ってそもそもなに?
デング熱は、「蚊媒介感染症」と呼ばれる病原体を保有する蚊に刺されることで起こる感染症の1つです。
蚊媒介感染症といえば・・・
- デング熱
- チクングニア熱
- ジカウイルス感染症
- ウエストナイル熱
- 黄熱
- マラリア
- 日本脳炎
といった感染症があります。
これらの感染症は、主に熱帯・亜熱帯地域で流行していますが、日本でも人ごとではありません。
日本では、日本脳炎以外の蚊媒介感染症は海外からの輸入感染症として見られていましたが、残念ながらデング熱は2014年に国内感染症例が報告されました。
とはいえ、2015年以降は海外からの輸入例のみで、国内感染例は見られていません。
*2014年のデング熱の国内感染例の大部分は、都立代々木公園周辺への訪問歴がありました。そして、「同公園周辺の蚊に刺咬(しこう)されたことが原因」と推定されています。
→代々公園では・・・
- 薬剤散布
- 約2ヶ月(9月~10月末)公園の閉鎖
- 蚊のウイルス保有の調査(9月25日以降の調査ではウイルスの保有は確認されていない)
こういった対策が取られました。
それでは、デング熱に感染するとどうなってしまうのでしょうか?
デング熱に感染
デング熱は、デングウイルスによって起こる発熱性疾患です。
デングウイルスに感染すると・・・
通常
- 20~50%:3~7日(最大2~14日)の潜伏期間を経て発熱・皮疹といった症状
- 通常は、1週間前後の経過で回復
ただし、一部の症例において重症化する場合があります。
重症型デング
- 出血傾向
- 血漿漏出傾向
- 臓器不全傾向
デング出血熱
重症型デングのうち・・・
- 血小板減少
- 血管透過性亢進(血漿漏出)
デングショック症候群
- ショック症状を伴うもの。
重症型デングを放置すると、致命率が10~20%に達しますが適切な治療を行うことで致命率を1%未満に減少させることが出来ます。
*テングウイルスに対する特有の薬はないため、対処療法しかありません。また、日本国内でワクチン(予防接種)もありません。
大人と子どもで症状は変わる?
-
乳児
→重症化のリスクが高く、デング出血熱やデングショック症候群を発症する可能性に注意する必要がある。
-
小児
→多くは軽症ですが、症状が非特異的で他の感染症との鑑別が難しい。
→成人と比べて、嘔吐・発疹・熱痙攣などの出現頻度が高い。
☆重症化のリスク☆
- 妊婦
- 乳幼児
- 高齢者
- 糖尿病
- 腎不全
などが指摘されています。
デング熱を疑う目安は?
発熱と下記の所見が2つ以上を認められる場合、デング熱が疑われます。
- 発疹
- 悪心・嘔吐
- 頭痛・関節痛・筋肉痛
- 血小板減少
- 白血球減少
- *¹ターニケットテスト陽性
- *²重症化サイン
このように、デング熱には様々な症状が現れます。
*¹ターニケット(駆血帯)テスト
駆血帯(くけつたい)とは、採血時に巻き付けるゴムヒモのこと。
上腕にこの駆血帯を巻き、収縮期血圧と拡張期血圧の中間の圧で5分間圧迫を続け、圧迫終了後に2.5㎝✕2.5㎝あたり10以上の点状出血が見られた場合に「陽性」と判断される。
*²重症化サイン
- 腹痛・腹部圧痛
- 持続的な嘔吐
- 腹水・胸水
- 粘膜出血
- 無気力・不穏
- 肝肥大(2㎝以上)
- ヘマトクリット値の増加(20%以上、同時に急速な血小板減少を伴う)
入院が必要?
成人の軽症例
- 経口水分補給が可能で尿量が確保されており、重症化サインが認められていない場合は外来治療も可能。
小児軽症例
- 脱水になりやすいため、十分な観察が必要。(特に、乳児は入院加療が推奨される)
- 重症化のリスクがないことが確認されるまでは、連日外来で検査が必要。
このように、必ずしも入院治療をする必要はありませんが、重症化の危険性は常に考慮する必要があります。
最後に
蚊に刺されることで、蚊媒介感染症に感染するリスクがあるため予防としては「蚊に刺されないこと!」に尽きます。
日本での発症は2014年以降は見られていませんが、渡航により感染する可能性があります。そして、帰国後に発熱など体調不良があれば、必ずすぐに医療機関に受診する必要があります。
なぜなら、デング熱を発症した人が蚊に刺されると、その蚊にウイルスが移ります。そして、その蚊に刺された他の人に感染していきます。
*日本では、全国どこにでもいるヒトスジシマカがデング熱などを媒介することが分かっています。
→蚊の大量発生を防ぐには、こちらの記事で紹介しています。
参考
厚生労働省
→https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164483.html
NIID 国立感染症研究所
→https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/2358-disease-based/sa/zika-fever/8592-zika-medical-g5.html
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