これまで、停電についての記事を紹介してきました。
そして、年々想定外が繰り返される災害により、電柱が見直されるようになり無電柱化の推進がなされています。
それでは、そもそも無電柱化はできるのでしょうか?
無電柱化については、「世界と比較にならないほど日本は遅れている」と言われます。
今回は、そんな「無電柱化の取組み」についてご紹介します。
→「電柱」については、こちらの記事で紹介しています。
「無電柱化」ってそもそもなに?
国土交通省のHPを確認すると、このように示されています。
道路の地下空間を活用して、電力線や通信線などをまとめて収容する電線共同溝などの整備による 電線類地中化や、表通りからみえないように配線する裏配線などにより道路から電柱をなくすこと
これだけを読むと、「電柱の役割を地下にうつすことで電柱をなくしてしまおう!」ということになりそうですが、現実問題として全て無くすことは難しいようです。
なぜなら、無電柱化には例えばこのような取組みが必要になるためです。
①電線共同溝方式による地中化
電線共同溝とは・・・
- 電線を通っている電力線・通信(通話)線等をまとめて収容する施設。
- 電気の高圧を低圧に変換するための地上機器(変圧器等)が設置される。
- 狭小歩道の場合は、柱上式機器方式(街灯に取付けるなど)が採用されることもある。
つまり、「地中化」とはいえ電柱を全て地中に埋めるわけではなく、変圧器など地上にも機器を備え付ける必要があります。
ただ、電柱とはちがい車道に建てる必要はなく、子どもの身長ほどのコンパクトなボックスを例えば歩道のスペースを使って設置されます。
②地中化以外の無電柱化
- 裏配線方式・・・屋根裏側の道路上に設置されている電柱から架空で配線する方法。(表通りのみを無電柱化)
- 軒下配線方式・・・引き込み線のみを軒下配線により数件の家屋へ供給する方法。(家屋の軒下に目立たないように配線)
このように、「無電柱化」といっても完全に電柱を無くすことは現実的に難しいこと。
そして、基本的に全てを地中に埋められるわけではなく、電柱のかわりとなる物を設置する必要があります。
つまり無電柱化とは、「大幅に既存の電柱を削減していく取組み」ということができます。
ただ、そもそもなぜ無電柱化が推進されているのでしょうか?
無電柱化は必要?
結論からいえば、技術的・コスト的な部分がクリアできれば諸外国と同じように無電柱化は絶対必須だといえるでしょう。
例えば、「災害」という面から見ると一目瞭然ではないでしょうか?
日本は、地震や台風、ゲリラ豪雨など災害が次から次へとやってきます。
個人的には、震度3程度ではそこまで慌てないようになりました。それだけ、日本では災害は当たり前のようにあります。
なにが言いたいかというと、「一度災害に見舞われると電柱の倒壊が引き起こされる」ということです。
しかも、想定外の威力が当たり前になってきました、
まだ、はっきりしたことは分かりませんが、千葉の台風15号(2019年)では電柱が風の力だけで倒壊した可能性が高いようです。
(管轄している東電では、2018年まで風だけの力だけで倒壊した電柱はなかったようです。)
今回の台風により、電柱の安全基準の見直しが測られるようですが、そもそも外に電線を設置することは物理的に難しい時代になったのかもしれません。
無電柱化をするための課題は?
無電柱化をするためには、なによりコストと時間がかかることが国土交通省や電力会社など各種関係機関で示されています。
日本で最も無電柱化が進んでいる東京23区(約8%が進行)では、「東京都無電柱化計画」が策定されています。
この計画によると・・・
課題1:時間がかかりすぎる
一般的に、道路延長約400mの無電柱化を実施するためにどれだけかかると思いますか?
→約7年間
東京では、昭和30(1955)~60(1985)年までは、電力・通信需要が高い都心部等において、電線管理者による単独地中化がおこなわれてきました。
そして、都道は計画に基づいて昭和61(1986)~平成28(2016)年の30年間で整備累計延長が913kmとなっています。
このように、無電柱化にはそもそも長い年月がかかります。
②莫大な費用
先程紹介した、電線共同溝施設を1km延長するためにどれくらいの費用が必要になると思いますか?
→5.3億円(国土交通省調べ)
- 道路管理者(3.5億円/km)
- 電気・通信事業者(1.8億円/km)
負担が大きく、無電柱化が進まない要因になっています。
このように、無電柱化を現実的に実施するためには時短とコストカットが求められています。
言うのは簡単ですが、そもそもすでにガス管や水道管などが地下には通っていますよね・・・
それでは、どういった取組みがなされているのでしょうか?
どんな取組みがあるの?
地下にはすでに、水道管やガス管が通っています。
逆に言えば、すでに地下空間が存在しています。
つまり、既存のマンホールや管路を利用することでガス管等の移設を不要にすることができます。
既設管路に電力管などをそのまま増設すれば水道官などを移設する必要がない。
無電柱化ワンストップ相談窓口
現実問題として、全国約1,700の市区町村のうち無電柱化を実施したことがある自治体は約400しかありません。
そもそも、首長や市民が無電柱化を希望してもどこに相談していいか分からない状態でした。
そのため、地方ブロック無電柱化協議会に無電柱化ワンストップ相談窓口を設置し、事業化に向けた助言ができる体制を構築中です。
他にも、さまざまな技術革新は進められていますが、現実問題としてまだまだ時間はかかりそうです。
最後に
コストを削減するためには、技術革新や既存のものを利用したりと創意工夫が求められます。
そもそも、そういった情報を全国で共有できる状態でなければ全国的に進めていくとは難しいでしょう。
千葉の台風によりいくつもの電柱が倒壊してしまいました。
復旧作業は、無電柱化するのか。それとも電柱を立て直すのか?
どちらにしろ、地域住民の意見や電力会社・通信会社といった各種関係機関との兼ね合いも必要になるでしょう。
また、海外と日本を比べるのもまた違うのかもしれません。
私達が望むことは、少なくとも災害に負けない社会ではないでしょうか?
近い将来、電柱が珍しい存在になるのか?
それとも、災害に負けない新しい電柱が生まれるのか?
あなたはどちらだと思いますか?
参考
国土交通省
→http://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/index00000023.html
東京都無電柱化計画
→http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/content/000034971.pdf
ウェザーニュース:電柱は風速何メートルまで耐えられる?
→https://weathernews.jp/s/topics/201804/130205/
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