キュウリパックで食物アレルギー!? 実は、食べた方がリスクが低い

 

皆さんは、「食物アレルギー」にどういったイメージがあるでしょうか?

「食物アレルギー」といえば、これまでは「原因物質(アレルゲン)が体内に入ることでアレルギー症状が出てくる」とされてきました。

ところが、アレルゲンを食べていないにも関わらず、食物アレルギーが引き起こされていることが分かってきました。

今回は、「触れただけで食物アレルギー!?」についてご紹介します。

 

「食物アレルギー」ってそもそもなに?

そもそも、食べ物に限らず私達は身体に入ってきた物質を体内に受け入れてもよいかをチェックするシステム=「免疫システム」があります。

→免疫システムは、細菌・ウイルス・アレルギー物質などを体内に受け入れないようにするための身体を守るためのシステム。

ですが、そんな免疫システムは必ずしも正確に機能するとは限りません。

免疫システムが過剰に働き、身体が過敏に反応してしまうことがあります。これが、「アレルギー」です。

さて、そんなアレルギーが食べ物によって引き起こされたものが「食物アレルギー」ですが、実は触れただけでアレルギーが発生することが分かってきました。

 

食物アレルギーといえば?

例えば、食物アレルギーといえば「卵」や「牛乳」が思い付くのではないでしょうか?

ですが、小学生になる頃にはほとんど消失していくことが知られています。

ちなみに、大人ではカニ・エビなどの甲殻類による食物アレルギーが最も多くなっています。(その次は、小麦・果物)

→食後3時間以内に急激に出現する「蕁麻疹・瞼や口唇の腫れ・咳・息苦しさ」は、食べ物アレルギーが疑われることになります。

 

このように、食物アレルギーは「卵・牛乳などアレルギーを起こしやすい物を食べることから始まる」と考えられてきました。(乳児期から食事を制限してアレルギーを防ぐ試みがおこなれてきた)

ところが、厳格に食事制限をしても食べ物アレルギー発症の予防にはなりませんでした。

そして、2000年代になると、食べることで食べ物の皮膚への接触がアレルギー獲得に大きく関わっていることが分かってきました。

 

それこそ・・・

  • ピーナツクリーム入りオイルを塗ってピーナッツアレルギーになる人
  • キュウリパックをしてキュウリアレルギーなる人
  • 魚を調理して魚アレルギーになる人

などが確認されてきました。

つまり、実は以前から食物アレルギーの原因が「食事だけではない?」ことはすでに分かっていたと考えれます。

例えば、2009年に「小児科 アレルギーすこやかクリニック」のトピックスで「食べなくても食べ物アレルギー」が紹介されています。

 

約10年前に紹介されている小児科医のトピックスとは?

事例1)

家でお子さんが泣いていて、たまたま近くを通りかかった近所のおばさんが、実は卵料理を終えたばかりの手で、お子さんの涙を拭いてあげたら、その部分が赤く張れてきた

→お子さんには強い卵アレルギーがあったため、親御さんは食べないように注意をされていた事例。

 

事例2)

お子さんが生卵を割ってみたいというので割らせたそうです。

生の白身がついたままの手で顔をこすったところ、その部分が赤く腫れてきたのだそうです。

卵焼きを食べているのにとは思いましたが、生の白身でしかも触れた所にじんましんができれば、それが原因であると考えざるを得ません。

→卵アレルギーはあったが、卵焼きにはアレルギーが発生しなかった事例。(「火」さえ通せば卵アレルギーを心配しなくてもよかった事例)

 

事例3)

卵料理を食べたばかりの口で父親が卵アレルギーのお子さんの頬にキスをしたら、その部分が腫れた

 

このように、強いアレルギーがあり、食べなくてもアレルゲンを触れた手で皮膚に接触するだけで、アレルギー反応を起こすケースが紹介されていました。

つまり、「皮膚からでも食物アレルギーが発生する」ことがすでに指摘されていました。

 

皮膚から始まる食物アレルギー?

例えば、「触れるだけでかぶれる」といえば漆(うるし)を思い浮かべるのではないでしょうか?

ですが、食べ物でも触れるだけでアレルギーがあればかぶれる可能性があります。

それでは、皮膚の状態は関係ないのでしょうか?

そもそも、皮膚はバリア機能があり雑菌などが侵入できないように保護されています。

実は、「ためしてガッテン」で食べ物の触りすぎによる影響が紹介されていました。

 

食べ物に触りすぎが危険?

一般的に、食物アレルギーは体中のリンパ節にいるT細胞と呼ばれる免疫細胞が「口から取り込んだ食べ物」を敵だと認識することがきっかけで発症すると考えられています。

ところが、最近の研究では肌荒れなど皮膚に炎症があれば表皮に存在する樹上細胞と呼ばれる細胞が活性化し「触っている食べ物」を捕まえてT細胞に敵だと報告することが分かってきました。

つまり、触っただけでアレルギーが引き起こされることが報告されています。

例えば、「湿疹などの肌荒れがひどい状態で食べ物を触り続ける」ことや、「自己流の美容法で食べ物を肌に付け続ける」といった行為がこれに当たります。

「がってん」では、3つの事例が紹介されていました。

  1. ひどい手荒れの状態で10年以上料理をしていたことでにんじんアレルギーになった主婦
  2. ひどい手荒れの状態で1年以上、レストランで働いていて魚アレルギーになった料理人
  3. 美容目的でシャンプーや洗顔フォームなどにはちみつを混ぜて3年以上使用し、はちみつアレルギーになった女性

このように、皮膚からアレルギーが引き起こされています。

ちなみに、アレルギーの意外な発生源も紹介されています。

例えば、「医療従事者などが着用している手袋」「子どものおもちゃ」などに使われている天然ゴム(ラテックス)と共通成分が含まれている果物があります。

この成分により、ラテックスアレルギーの人が「栗・バナナ・アボカド」などの果物アレルギーになる可能性が指摘されています。

このように、皮膚から食物アレルギーが引き起こされることが分かってきました。

 

最後に

触れることで食物アレルギーが引き起こされるということは、これからは食べ物だけでなく、おもちゃなどのように共通の成分があるものも気をつけなくてはいけないことになります。

ただ、必ずしも避けることが正解とは限らないようです。

ある学者が、ピーナッツアレルギーに関する実験をおこないました。

(A)離乳期からピーナツが含まれているおやつをよく食べるイスラエルの子どもたち

(B)離乳期からピーナッツを含む食品を避ける傾向にあるイギリスの子どもたち

 

上記の(A)と(B)それぞれにピーナッツアレルギー検査をしたところ、ピーナッツを避ける傾向にある(B)の子どものほうが、ピーナッツをよく食べていた(A)の子どもよりも、ピーナッツアレルギーを持つ割合が高いという結果が出たのです。

結論を言えば・・・

1、アレルギーの原因となる食べ物を完全除去するのではなく、アレルゲンの元となる食べ物を少量ずつ食べたほうがアレルギーは起きにくい

2、口ではなく最初に皮膚にアレルゲン物質が触れることで、アレルギーが発症するリスクがある

という報告がなされています。

 

これは、食物アレルギーは直接触れるよりも「小量ずつ接種した方がアレルギーは引き起こされにくい」ことが示された実験でもあります。

ちなみに、アレルギーの数値や症状を見ながら小量ずつ食べさせて慣れさせていく治療を「経口感作療法」と呼ばれています。

今回は、「食物アレルギーについてまた1つ科学的に解明された」というお話でした。


参考

いたやどクリニック
http://kobe-iryo.jp/itayado/faq1.html

日本ハム 食の未来財団
https://www.miraizaidan.or.jp/allergy/diagnosis.html

本がすき
https://honsuki.jp/series/shohousen/23262.html

 

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