あおり運転は行政処分だけじゃない! 規制強化と危険性帯有者とは?

 

前回、あおり運転をした場合の道路交通法違反に絞って様々な行政処分が課される可能性があることをご紹介しました。

ですが、規制強化が進められている昨今、当然行政処分という「反則金」や「反則点数」だけといった、軽い処分で終わることはありません。

そこで、今回は「悪質・危険なあおり運転に適用される刑事処分」についてご紹介します。

 

あおり運転による行政処分については、こちらの記事で紹介しています。

「あおり運転」は違反のオンパレード! 行政処分が次々と・・・

 

規制強化が行われている!?

2018年に警察庁より「あおり運転の対処に厳正な捜査の徹底や積極的な対策をするように通達」がなされています。

これは、2017年6月に神奈川県内の東名高速道路であおり運転が原因で悲惨な事故が発生したことや、全国的にあおり運転の報道が大きくなり社会問題になっているためです。

この通達により、道路交通法違反のみならず危険運転致死罪(妨害目的運転)・暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜査の徹底が期待されています。

つまり、最近ではあおり運転で「暴行罪」が適応されることが話題になっていますが、場合よってはそれ以外にも様々な罰則がつくことが十分予想されます。

*「道路交通法」による罰則だけでは軽微なため、より罰則が重い刑法も適用されていくことが予想される。

 

危険運転致死傷罪(妨害目的運転)

無謀な運転で悪質・重大な死傷事犯について、故意犯の暴行に傷害・傷害致死に準じた犯罪として処罰し2009年に運転殺人など悪質で危険な行為を*特定違反行為として改正されました。

危険運転致死傷罪(刑法第208条の2)

  1. アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走向させる行為。
  2. 進行を制御することが困難な高速度で、または進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
  3. 人または車の通行を妨害する目的で、通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
  4. 赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。

この4つが適用対象になります。


上記の行為によって・・・

  • 死傷事故を起こした場合→1年以上20年以下の有期懲役
  • 負傷事故       →15年以下の懲役

 

*そもそも、特定違反行為をした場合は・・・

  • 基礎点数の大幅引き上げ
  • 欠格期間の延長(最長10年)

 

暴行罪

暴行罪は、刑法第208条において「暴行を加えた者が人を傷害に至らなかったとき」に成立する犯罪です。殴る・蹴るなどの暴力行為だけではありません。

例えば、脅す目的で相手に石がぶつからないように石を投げるなど、身体に接触していない行為でも該当する可能性があります。

  • 2年以下の懲役
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留
  • 科料

このような刑罰が科されます


ちなみに、昭和49年・50年には東京地方裁判所や東京高等裁判所で、あおり運転が「不法な有形力の行使」として、暴行罪の成立を認める判決が出ています。

つまり、1970年代にはすでに暴行罪による判例があります。

そもそも、「少なくとも50年程前から、すでにあおり運転が問題になっていた!」ということでしょう・・・

 

危険性帯有者

あおり運転を行った者に対して、「危険性帯有」による運転免許の停止等の行政処分が厳正に行われます。

→危険性帯有者とは、読んで字のごとく「危険性を帯びている者」ということです。

 

危険性帯有による処分

道路交通法第103条 第1項第8号に関係する処分のことです。

一般の違反点数の累積による行政処分とは別に、運転者としての適格性に欠けて交通の危険を生じさせると考えられる場合は、違反がゼロであっても6ヶ月以内の「免許停止処分」を即座に課すことができます。

*2017年までは、薬物使用者などが主に対象でした。

 

最後に

あおり運転をするということは、「危険性帯有者」ということになります。

そして、行政処分は危険性のある人を交通の場から排除するための処分です。

つまり、「あおり運転をする人は、そもそも車を運転する資格がない」ということになります。

ですが、外見からは判断することが難しいですよね・・・

結論からいえば、「運転する資格がないのに、運転したから行政処分や刑事処分などを課しますね」ということになります。

ちなみに、刑事処分は前科がつくため、犯罪者の仲間入りをすることになります。

 

行政処分と刑事処分の違いについてはこちらの記事で紹介しています。

道路交通法違反 「行政処分」と「刑事処分」はまったく違う!?

それだけ車の運転は、責任と義務があります。

そして、あおり運転は道路交通法だけではなく、刑法の対象にもなります。

もし、運転中に他の車にイライラすることがあるのなら、「自分の人生をかける価値があるかどうか」を一度考えて見て下さいね・・・

ちなみに、現在のあおり運転の刑罰は現実問題として軽いという印象があります。

それでは、社会的な影響(信用や信頼など)はどうでしょうか?

本当に大変なのは、刑罰を受けた後だということは、言うまでもありません。


参考

警察庁
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/shidou/aoriunntenntuutatsu.pdf

JAF:危険運転致死傷罪が適用される場合とは?
http://qa.jaf.or.jp/accident/penalty/07.htm

ベリーベスト法律事務所 金沢オフィス
https://kanazawa.vbest.jp/columns/criminal/g_violence/906/

茨城県警察
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a02_traffic/jikoboushi/aoriunten.html

 

 

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