動物が「天然記念物」や「特別天然記念物」に指定されると・・・

 

皆さんは、「天然記念物」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

天然記念物は、文化財の1つとして貴重な国民的財産として守られています。ただ、場合によってはその天然記念物により被害が発生してしまうことがあるようです。

今回は、「天然記念物に指定された動物の保護と生活」についてご紹介します。

 

そもそも「天然記念物」ってなに?

天然記念物は、文化財保護法によりこのように示されています。

第二条

四 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁りよう、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)

つまり、天然記念物は現存する動植物だけでなく、「史跡」や「自然」など多くのものが含まれることから、文化財の分類では「史跡名勝天然記念物」と呼ばれます。

こういった理由から、天然記念物には2つの意義が示されています。

 

「自然史」

  • 地質現象:日本列島の成り立ちを示す
  • 化石:過去の生物を知る
  • 固有種等の動植物:日本列島の生物地理学的な特性を示す

 

「文化史」

  • 人間と自然の関わり

→人が関わり、作り上げてきた自然

  1. 「巨樹」や「蛍」など、日本人の自然観の形成に寄与したもの
  2. 並木・家畜・家禽(かきん)など、人が関わって作り上げてきたもの

こういった、人間と自然と関わりの親密さを物語るもの。

こういった理由から、文化庁では天然記念物についてこのようにまとめられています。

天然記念物を守ることは,地域の自然とそれにまつわる文化を守ることであり,天然記念物の価値を明らかにして生かすことで,人々の自然観や地域とのつながりを育むことができます。

さて、そんな天然記念物には「天然記念物」と「特別天然記念物」があります。

 

「天然記念物」と「特別天然記念物」

文化庁の国指定文化財等データベースを確認すると、「史跡名勝天然記念物」に登録されている天然記念物と特別天然記念物の登録数はこのようになっています。(2020年6月確認)

  • 天然記念物:954件
  • 特別天然記念物:75件(アホウドリ・阿寒湖のマリモ・オオサンショウオなど)

どちらも、繁殖地や植物、観光地などが多く含まれています。

 

天然記念物

→学術上貴重で日本の自然を記念する動物(生息地、繁殖地、渡来地を含む)、植物(自生地を含む)、地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む)として文化財保護法(1950)に基づき指定されたもの。

 

特別天然記念物

→天然記念物のうち、特に重要なもの。

そして、国から認められれば鴨川市の「鯛の浦タイ生息地」のように、天然記念物から特別天然記念物へ昇格することもあります。

当然、指定が解除されることもあります。

*ちなみに、天然記念物に指定されれば文化庁長官の許可がなければ、採集や樹木の伐採などができないように規制がかけられることになります。

それでは、本題の「天然記念物の保護と生活」について見ていきましょう。

 

動物が天然記念物に指定されたことで、弊害が生まれることも!?

先程紹介したように、国家事業として現存する貴重な自然や動植物だけでなく、歴史やその環境そのものを守るために文化財として指定することで守ってきました。

ですが、例えば「天然記念物」や「特別天然記念物」に指定したものが生き物だった場合、様々な弊害が発生することがあります。

そもそも、文化財保護法では文化財を守るために様々な罰則があります。

「史跡名勝天然記念物」に限っても、以下は一部ですが例えばこのような罰則が適用される可能性があります。

第百九十六条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、毀損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第四十三条又は第百二十五条の規定に違反して、許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで、重要文化財若しくは史跡名勝天然記念物の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は現状変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかつた者
二 第九十六条第二項の規定に違反して、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止の命令に従わなかつた者

分かりやすく言えば、「天然記念物の現状変更や指定された天然記念物に影響を及ぼすと考えられる行為は、全て規制の対象となる。」ということです。

 

動物が「天然記念物」や「特定天然記念物」に指定されたら・・・

例えば、奈良県といえばシカが有名ですよね。私も、奈良公園でシカに餌をやったことがあります。

さて、そんな奈良公園にいるシカは「奈良のシカ」として、1957年9月18日から国の天然記念物の指定を受けています。

ですが、一般財団法人 奈良のシカ愛護団体によるとさまざなトラブルが発生しています。

 

シカに関係するトラブルとは?

2018年4月~2019年2月までで、66件の交通事故が発生し15頭が命を奪われています。ただ、交通事故の原因の1つとして、シカが臆病な性格であることが指摘されています。

例えば・・・

  • 犬に吠えられたり、追いかけられる
  • 人間によるイタズラ

こういったことが原因で、急に道路に飛び出してしまうこともあります。

そもそも奈良のシカは野生動物で、イタズラなど悪質な場合は文化財保護法違反で罰せられることになります。

このように、人と天然記念物との共生の難しさにも注意する必要があります。

「奈良のシカ」の場合は、身近すぎて日常生活で引き起こされるトラブルが問題になっています。

ですが、特別天然記念物に指定されている「アマミノクロウサギ」の場合は、少し状況が違います。

 

「アマミノクロウサギ」

アマミノクロウサギは、1921年に天然記念物に指定されていましたが、1963年からは特別天然記念物として指定されています。

環境省によれば、鹿児島県奄美大島及び徳之島の2島にのみ分布に生息していることが分かっています。

さて、そんなアマミノクロウサギですが実は、「害獣」として農家にとっては悩みの種となっているようです。

鹿児島県の特産の1つに、「タンカン」と呼ばれる柑橘類ができる木がありますが、奄美新聞によると「根元付近の樹皮がかじられることで、幼木が枯れてしまう」そんな被害報告が出されています。

ただ、生態系がまだよく分かっていないだけに有効な対策が見つからず、そもそも無許可の捕獲は原則禁じられているため、農家としてもどうにもならない状態が続いています。

読売新聞:食害犯は天然記念物、特産果樹かじる…農家や自治体「難敵」に苦慮より

→タンカンの木の被害が、2017年頃から「徳之島町と奄美大島・大和村」で確認され始め、両町村の被害面積は17年度が1・1ヘクタールで、18年度は2・2ヘクタールに広がっている。

大和村では、数百本の苗木がほぼ全滅した農家もある。

残念ながら、特別天然記念物であるはずのアマミノクロウサギは、農家にとっては死活問題となる「害獣」になってしまっています。

このように、動物に限ったことではないですが「天然記念物」や「特別天然記念物」に指定して終わりではありません。

むしろ、指定された後に「法律を遵守しながら自分たちの生活を維持していくために、どのように守っていくのか?」について、考えていかなくてはいけません。

 

最後に

自分の子どもや孫の世代、さらにもっと後の世代にも残せるようにと、様々な文化財が文化財保護法により守られています。

ただ、文化財に指定されれば、例えば観光客が増えることになります。

イタズラや落書き、ゴミのポイ捨てなど文化財に指定されるだけで問題が噴出してしまいます。

文化財として「貴重さ」や「珍しさ」を広く知らせることで、むしろそれらが破壊される構図が世界中で発生しています。文化財と観光を組み合わせている結果だといえるでしょう・・・

新型コロナウイルスの影響で、世界的にまだまだ渡航制限がなされています。人が少ない今だからこそ、文化財との共存の道を探るきっかけになるのではないでしょうか。

 

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