落書きで逮捕!? 「ストリートアート」と「落書き」は紙一重

 

やっと外出自粛が緩和されてきましたが、実は「落書き」が全国で問題になっています。

「落書き」と言えば、「商店街のシャッター」や「ガードレール」、「廃墟」など一目のつかないタイミングや場所で行われ、いつの間にか被害にあうことになります。

今回は、そんな「落書きで逮捕!?」についてご紹介します。

 

そもそも「落書き」ってなに?

例えば、ストリートアートも認められなくては「落書き」となります。

とはいえ、そんなストリートアートを描く「パンクシー」は、世界中の人々に注目され、1枚の絵が1億円以上で売れたりしています。

そんなストリートアートは、伝統的な美術館やギャラリーなどの会場の外で展示された非人可の公共芸術作品のことです。

つまり、基本的には「ストリートアート」といっても落書きやイタズラ書きとして扱われることになります。

ただ、一般的な落書きと大きく違うのは「描かれた作品は芸術家が居住している地域社会と関連のある政治的なメッセージを含んでいることが多い点」です。

日本でも、風刺画がありますがそういった社会の矛盾点をアートとして表現していることが多く、そういった絵に感銘を受けた人々に指示されると、パンクシーのように市民権を得ることになります。

このように、ストリートアートは「ゲリラ的に行われるアート」ということもできますが、あくまでも非人可で行われるため、認められなければ「落書き」と同じです。

そういう意味では、ストリートアートと落書きは「紙一重」と言えるでしょう。それでは、ここでいう「落書き」はどういったものでしょうか?

 

「落書き」は迷惑行為でしかない!

ストリートアートは、あくまでも芸術として描かれますが、「落書き」はあくまでもイタズラ書きです。

例えば、芸術作品は多くの人(特に著名人)に認められる必要があります。

一例を挙げると、都知事の小池氏が2019年1月17日に「あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました! 東京への贈り物かも? カバンを持っているようです。」ツイートしたことが、「落書きは知事公認?」など、賛否両論を呼んでいました。

こういった点から見ると、日本ではそもそもパンクシーであっても、ストリートアートは一般的には認められないのかもしれませんね・・・

そもそも落書きは、「一目を避ける」という性質から治安悪化の徴候の1つとして危険視もされています。

それでは、地方自治体は落書きに対してどういった取組をしているのでしょうか?

 

神奈川県藤沢市の対応

藤沢市では、「落書き防止3か条」が掲げられています。

  • 第一条 早期発見(落書きを早期発見し、対応。報告する!)
  • 第二条 早期消去(落書きを発見したら、早期に消去する!繰り返されても早期に消去する!)
  • 第三条 予防対策(定期パトロール、ステッカー・ポスター・看板・防犯カメラの設置等の予防対策を行う!)

→落書きを放置すると、目が行き届いていない場所として認識されてしまい、犯罪の温床になる。

 

鎌倉市の対応

鎌倉市といえば、年間1,900万人の観光客が訪れていました。

鎌倉市でも、「落書きは治安のバロメーター」と考え、市の施設に書かれた落書きは率先して消し、落書き消去活動の支援やパトロールなど、落書きされない街作りが取り組まれています。

例えば、落書きが頻発していたガード下に子ども会が絵画を書いたことで落書きがされなくなったり、施錠管理をしたりと様々な対策がなされています。

このように、落書き被害はどこにでもあり「落書きは迷惑行為」として認識されています。

それでは、そもそも落書きにより逮捕されることはあるのでしょうか?

 

落書きで逮捕!?

結論からいえば、「落書き」は逮捕される可能性があります。

  • 通行人からの通報による現行犯逮捕。
  • 同一地域などで似た手口で落書きをしており、被害届から捜査が行われ逮捕。
  • 職務質問で、所持品やカメラのデータから犯行が発覚し逮捕。

ちなみに、海外からきた観光客が落書きにより逮捕される事件も発生しています。このように、「落書き」は逮捕されるため、甘く考えている人は認識を改める必要があるでしょう。

また、すでに落書きをしてしまっている場合は、被害届が出されていればすでに捜査が始まっている可能性があります。

それでは、「落書き」によりどんな犯罪行為が適応されるのでしょうか?

 

国土交通省からの注意喚起!

落書きは、ガードレールや高架下など道路構造物の落書きが相次いでいます。

当然、こういった公共物への落書きも犯罪となります。

この場合、道路法等の法律により罰せられることになり、落書きを消すためにかかった費用も請求される場合があります。

それでは、道路構造物の「落書き」はどのような流れで対処されているのでしょうか?

 

道路構造物の落書き対処

道路交通省によると、こういった対処がなされています。

  1. 通報・パトロールによって落書きを発見
  2. 発見されると被害届を警察署に提出
  3. 現場立ち会いが実施
  4. 被害届受理されると、業者が落書きを消す

さて、最後の「落書きを消す作業」ですが、1㎡当たり約2,500円の費用がかかることになります。例えば、50㎡にわたって落書きをしたとすれば、12万円以上の費用がかさむことになります。

そして、法的には、例えばこのような罪状があります。

道路法第43条(抜粋)
何人も道路に関し、左に揚げる行為をしてはならない。
― みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。
・道路法第100条(抜粋)
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
三 第四十三条の規定に違反した者
・刑法第261条(器物損壊罪(抜粋))
~中略~、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の
罰金若しくは科料に処する。


ちなみに、もしも落書きした物が文化財なら「文化財保護法違反」となり・・・

名勝(文化財の一種)の現状を変更、保存に影響を及ぼす行為、滅失・毀損・衰亡させた場合、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金が科されます。

さらに、各自治体によって「迷惑防止条例違反」が設けられていますが、例えば5万円以下の罰金が化される可能性もあります。

他にも、「軽犯罪法違反」として扱われる場合もあります。

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者

具体的には、「1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置、または、1,000円以上9,999円以下の罰金」となります。

他にも、「器物破損罪」や懲役刑しかない「建造物損壊罪」が成立する場合もあります。

なにがいいたいかと言えば、落書きをした建造物やその被害によって罪状は変わりますが、「勝手に落書きをした時点で犯罪になる」と言うことです。

 

最後に

各自治体で様々な対応がなされ、防犯カメラが設置される場合まであります。

しかも、「落書き」は想像以上に罪が重たくなる可能性があります。当然、落書きにより前科が付くこともあります。

なぜ、落書きがここまで徹底されて排除されていくのかは、岡山県環境文化部が分かりやすく説明してくれています。

  1. どんどん拡がっていく
  2. 青少年に悪い影響
  3. 犯罪を招く
  4. まちが荒れていく

廃墟がいい例ですが、「割れ窓理論」という考え方があります。

割れた窓ガラスをそのままにしておくと、「その建物は十分に管理されていない!」と認識され、他の窓ガラスも割られ、やがて建物全体が荒廃していきます。

つまり、「落書きを放置することで最後はその地域全体が荒れていくことになる」という考え方です。

ちなみに、落書きの中には個人宅の留守状況を窃盗犯に知らせる「偵察部隊」の暗号が存在している場合もあり、例えば「R-10」という落書きは「この家は10時まで留守(R)」と示していることや、麻薬の取引き場所が示されていることなどもあります。

つまり、落書きじたいが犯罪ですがその落書きを使って更なる犯罪を行っている可能性まであります。

このように、「犯罪が犯罪を呼ぶ」と言われますがその象徴の1つが「落書き」ということになるでしょう。そのため、落書き対策は早急に対応しなくてはいけない犯罪として取組が実施されています。


参考

Artpedia アートペディア/ 近現代美術の百科事典:ストリート・アート
https://www.artpedia.asia/street-art/

刑事事件弁護士ナビ:落書きは逮捕される?|逮捕事例と落書きの罰則・対処法を解説
https://keiji-pro.com/columns/233/

 

 

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