地理表示(GIマーク)保護制度はメリットがいっぱい!と思いきや欠陥が・・・

 

日本の農産物が、海外に流出し盗作される事件が多発しています。

記憶が新しいところでいえば、2018年に開催された平昌五輪でカーリング女子日本代表で話題になった「韓国のイチゴ」が、実は「以前に日本から流出した品種を基に、韓国で交配されたものが主だ」と齋藤農林水産大臣が記者会見で発言されていました。

他にも、中国で高級ブドウの「シャインマスカット」が中国で無断増殖が確認されています。

つまり、日本の農産物が海外に流出し続けています。

今回は、「地域ブランドを守る? 地理的表示保護制度」についてご紹介します。

 

「地理的表示保護制度」ってなに?

地理的表示保護制度は、2015(平成27年)6月1日にスタートした制度です。

日本では、「⚪⚪牛」「⚪⚪りんご」など全国各地には様々な地域で育まれている「名産・名物・特産」などと言われる農林水産物や食品がたくさんありますよね。

「地理的表示」というのは、農林水産物・食品の名称で例えば、「有田みかん」ならその名称から産地が分かります。

なにより、品質や社会的評価などがその産地と結びついてることが特定できるようになります。

 

なぜ、ブランドを守ることが大切なの?

もしも、こういったことがなければ、例えばお寿司が世界中で有名になりましたが、「なんちゃってお寿司」が世界中に溢れていますよね・・・

そのなんちゃってお寿司(偽物?)を食べて「日本のお寿司はこんな物!」という間違った認識が生まれてしまいます。

これが、ブランドで引き起こされてしまうと言われもないレッテルが貼られたり、勝手に世界中で育てられたり品種改良されることで「日本独自のブランド(価値)が死ぬ」ことになります。

他にも、鯉や金魚、メダカですら数百万円で売られる物がありますよね。そうやって、試行錯誤の上で育てた、その「育成方法」「種」などを勝手に持ち出すことが犯罪になることは、簡単に想像できるのではないでしょうか?

→あなたのアイデアが盗まれるだけでなく、その完成品をそのまま持って行かれてしまうわけですからそんなことが横行してしまえば、そもそも品種改良なんてバカバカしくて誰もやらなくなるでしょう。

そういったことを防ぐために、地理的表示保護制度に限らずさまざまな商標マークが存在しています。

それでは、地理的表示保護制度に登録することで、どういったメリットがあるのでしょうか?

 

登録するとどんなメリットがあるの?

そもそも、地理的表示の登録を申請し審査通過後に登録されると、基準を満たしている産品・生産者のみ「GIマーク」を使うことができます。

つまり、地名を冠したブランド名を類似品に使ったり誰もが乱用しないように、農林水産省のお墨付きがもらえることになります。

GIというのは、「Geographical Indication(地理的表示)」という意味です。

さて、ここで気になるのは「お墨付きの効果」ではないでしょうか?

 

行政が取締を行う!?

普通なら、不正使用された場合は生産者自身が相手を訴えることになるんですが・・・。

GIマークを取得できれば、生産者が訴訟などを起こす必要はなく、なんと農林水産省に通知するだけで国が対応してくれます。

もちろん、海外輸出される場合もGIマークを貼付することで日本の地域ブランド産品であることが明示されるため差別化が可能になり、地域の特産品の海外展開にも役立ちます。

ただし、今のところGIマークの効力は日本国内のみとなっています。

*今後は、各国と協定を結び海外でも日本の地名ブランドが保護される仕組みづくりが進められる方針。

 

GIマークは永久に使用できる!

産品(特定農林水産物等)をその生産地や品質の基準等と共に登録すれば、登録税9万円を支払うことで更新不要で、明細書通りに作っている限り「GIマークは永久に使用可能」になります。

「登録マーク」といえば、他にもたくさんありますよね。

  • 商標権の維持費用(登録料)・・・10年間で37,600円×商品・役務の区分数
  • グッドデザインマーク・・・毎年更新で使用料は販売価格・総事業によって変わりますが最も安いプランで2019年では22万円が毎年必要。

このように、GIマークには更新の必要がなく登録料が破格なためこれだけでもかなりのメリットがあることが分かります。

 

《制度のポイント》

  1. 産品(特定農林水産物)をその生産地や品質の基準等とともに登録できる。
  2. 登録内容を満たす産品には、「地理的表示」が使用可能。(「地理的表示」と併せて「登録標章:GIマーク」の使用が可能)
  3. 地理的表示の不正使用は行政が取りしまる。
  4. 地域の生産者は、既登録団体への加入や、新たに登録を受けた生産者団体の構成員となることで地理的表示を使用可能。

ただし、デメリットもあります。

 

デメリットとは?

❶変わらない品質保証

先程、「明細書通りに作っている限り」と簡単に書きましたが、逆に言えば産品の品質管理をしていくことが大前提です。

適切に使用していることを証明するために、年に1回以上国に報告する義務があります。当然、適切な品質管理ができていなければ地理的表示の登録が取り消されることもあります。

 

➋不正使用者に対して自力で対処できない

確かに、国が対応してくれますが、極端な話し目の前で不正使用者が販売していたとしても、なにもしてはいけません。

国が対応してくれるのを待つしかありません。

 

❸申請書が必要

どんなものにでも申請書が必要ですが、GIマークを申請するための書類はかなりハードルが高いものになります。

そもそも、GIマークを登録するためには様々な規定があります。

 

《確立した2つの特性》

  1. 同種の産品と比べて差別化された特徴があること。
  2. 一定期間継続(概ね25年間)して生産されていること。

 

《産品の「特性と結びつき」》

産地と生産の方法が産品の特性と結び付いていることを矛盾なく合理的に説明できる

  1. 特性が、産地の自然的条件により付与されている。
  2. 特性が、生産地に由来する生産の方法に由来する。
  3. 他の産品で採用されている生産方法でも複数組み合わせることで差別化できる。

こういった特徴を申請書に記入する必要があります。

また、生産者や加工業者自らが申請できるものではなく、あくまでも団体で申請しなくてはいけません。(認められた団体の加入者しかGIマークを付けることができない)

つまり、こういったことも実際に起こっています。

 

❹老舗であっても、GIマークが利用できない!

これが、最大の問題でもありこの制度の根幹を揺るがす事態と言えるでしょう。

例えば、昔からある八丁味噌は当然、GIマークとして登録が認められています。ただし、八丁味噌の地理的表示を登録した生産者団体には、なぜか「八丁味噌の老舗(400年以上の歴史がある)が加入していない」という本末転倒な出来事がすでに起こっています。

団体に加入していないため、老舗であってもGIマークを付与することができません。


*老舗が加入していない理由は、「行政が認めなかったから」という理由があるようですが、少し補足します。

実は、「八丁味噌」という名称で先に登録申請したのはこの除外された老舗(「カクキュー」と「まるや」で組織する八丁味噌共同組合)が先だったようです。

そして、申請書の生産地には「岡崎市八帖町」と記載し申請したところ、農林水産省は「生産地を愛知県に広げるように」と要請。

とはいえ、そもそも八町味噌は愛知県全体ではなくこの地域でこそ作られる味噌であるため、本来なら「地理的表示としては申し分ない!」と誰もが思いますよね・・・

ところが、産地を愛知県の表示に変えなかったことが原因で、後から「愛知県全体」で申請してきた団体が登録されてしまい老舗が除外されたという経緯があるようです。

 

最後に

日本のブランドを守る地理的保護表示(GIマーク)制度は、確かに申請も厳しく素晴らしい制度かもしれません。

ただ、八丁味噌のように産地の特産品を逆に破壊していく危険性があります。

そもそも、「その産地だからこそ伝統的に続いてきた特産品や名物などをしっかり守っていこう!」という制度なのにも関わらず、何百年も続いている老舗を除外している(追い出している)時点で、この制度は破綻してしまっています。

普通なら、ブランドに箔が付くためなんとしても団体に加入させたいと思いますよね。また、そもそも「なぜ老舗が加わっていないのか?」と、農林水産省がチェックしないといけない立場ではないでしょうか。

こういったことが現実的に起こっているため最悪、新参者が老舗を追い出して徒党を組んで登録してしまうこともできてしまうことになります。(今回の八丁味噌の件を見る限り、本当の産地を無視して永久的に合法的に国に守ってもらいながら特産品などの乗っ取りができてしまう。)

この制度の本質を、今一度見直す必要があるのではないでしょうか?


参考

農林水産省:地理的表示(GI)保護制度
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/

政府広報オンライン:地理的表示保護制度とは?
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201508/2.html#anc01

KOKOCARA:このままでは「八丁味噌」を名乗れなくなる!? 地理的表示(GI)は、地域の伝統食を守れるのか?
https://kokocara.pal-system.co.jp/2018/09/03/geographical-indications-hacho-miso/

 

 

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