農林水産省が緊急スタート! 「生乳」を守るためにできること

 

皆さんは、テレビで「牛乳をもう一杯!」なんてフレーズを聞いたことがありますか?

実は、この取組は農林水産省が新型コロナウイルスにより消費されにくくなった牛乳を緊急対策として実施されている本当に真面目な取組です。

今回は、『農林水産省が緊急に実施している「プラスワンプロジェクト」について』ご紹介します。

 

「プラスワンプロジェクト」ってなに?

農林水産省によると

「毎日牛乳もう(モ~)1杯、育ち盛りはもう(モ~)1パック」をキャッチフレーズに18歳未満の若者、子どもたちがコップ1杯分(200ml)牛乳を飲む量を増やすことで生乳廃棄を避けられると理解を求めている。

とあります。

そもそも、新型コロナウイルスにより、学校が休校していますよね。

さらに、飲食店などお店も閉まってしまっているため、牛乳の多くを消費をしているのは家庭で利用する私達消費者が牛乳消費量の大部分を占めるようになってしまいました。

農林水産省によれば、例えば乳業メーカーの生産は通常の5~7割も減っていることが報告されています。

こういったことから、本来なら「買いだめを控えて!」と呼びかけるところが「もう1本買って!」と呼びかける緊急事態となっています。

さて、このプラスワンプロジェクトは2020年4月21日に日本の牛乳を守ることに目的にスタートされました。それでは、どれだけ消費量が減っているのでしょうか?

 

消費量はどれだけ減っている?

❶3月:全国一斉休校

→日量2万tの生乳受給量の約1割を占める1日1900tの学校給食用牛乳がキャンセル。

➋4月:緊急事態宣言

→店舗の臨時休業やそれに伴い、業務用需要も減少。

❸4月16日:緊急事態宣言が全国に拡大

→全国規模で店舗での需要が減少。

 

この結果・・・

  • 業務用需要ー3月の対前年比2割減
  •   〃  ー4月の対前年比5~7割減

つまり、このままいくと酪農家が生産している生乳の行き場が失うことになりかねません。

そのため、長期保存ができるバターやチーズの生産に仕向けるために農林産業振興機構(ALIC)の事業費19億円を活用して需給調整に協力する乳業メーカーを支援する対策が打ち出されています。

ちなみに、すでに学校給食用牛乳の供給停止に伴う需給緩和対策事業が実施されています。

 

需給緩和対策事業における2つの役割

❶学校給⾷⽤⽜乳向けから脱脂粉乳等向けへの仕向け変更に伴う⽣産者対策

  • 学校給食用牛乳に仕向けるはずだった生乳の一部が、脱脂粉乳等に用途変更された場合の価格差への支援。
  • 脱脂粉乳等に処理する工場への出荷先変更に伴う広域輸送に要する掛け増し軽費を補助。

脱脂粉乳というのは、「生乳」「牛乳」または「特別牛乳」の乳脂肪分を除去した物からほとんど全ての水分を除去したのもです。

つまり、脱粉のことです。商品名としては、スキムミルクとも呼ばれています。

→栄養価が高く、保存に向きますが価格としては、「学乳向け乳価」よりも、「脱脂粉乳向け乳価」の方が値段が安くなってしまうため、この補助がなければ成り立たなくなります。

 

*「特別牛乳」というのは、特に優れた飼育環境や特別な牛乳処理施設が必要とされ日本全国に4ヶ所(令和元年時点)しかないまさに特別な施設で作られている牛乳のことです。

  1. 農事組合法人 白木牧場
  2. 雪印こどもの国牧場
  3. 思いやりファーム
  4. クローバー牧場

 

➋脱脂粉乳等の⽤途変更や学校給⾷⽤⽜乳の処理に伴う乳業者対策

  • 業務用に製造した脱脂粉乳等を飼料用に販売した際の価格差への支援。

当然ですが、業務用よりも飼育用に使われる脱脂粉乳等の方が安くなってしまいます。

このように、脱脂粉乳は確かに長期保存に向いていますが、価格帯でみると安くなってしまうためその差額の補助が必要となります。

とはいえ、脱脂粉乳等に切り替えても消費量が激減しているため、このままでは必要以上に脱脂粉乳の製造が増加していくことになります。

そもそも、ホテルや大手コーヒーチェーン店などで利用される業務用脱脂粉乳も需要が激減しているため、いつまでもこの対策でまかなうことができません。

そのため、前述したように次はバターやチーズといった生産に仕向ける対策が検討されています。とはいえ、バターやチーズの製造能力にも限界があるため根本的な対策にはなりません。

 

ワンポイントアドバイス!

  • 生乳:乳牛から絞ったままの何も手を加えていない乳。

「生乳」は、食品衛生法によりそのまま販売することが禁止されています。

そのため、許可を受けた工場で、細菌や抗生物質の検査を受け、加熱殺菌したものを瓶や容器にパックされて初めて「牛乳」として私達消費者の手に届くことになります。

  • 牛乳:成分無調整で、生乳以外のものを混ぜることを一切禁止されています。それこそ、水1滴加えることもできません。

ただし、これは「種類別」の場合です。


そもそも、一般的に牛乳と呼ばれる物は、「牛乳」「成分無調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」の6種類に分類されています。

→種類は、容器に記入することが義務づけられているため、一目で分かります。

例えば、乳固形分3.0%以上であれば、種類別「乳飲料」となります。

ちなみに、商品名で「牛乳」と名乗れるのは、乳脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分8.0%以上の種類別「牛乳」「加工乳」「乳飲料」に限られています。

このように、成分規格により厳しく分類されています。

 

生乳の生産を止める?

このように、酪農家が生産した生乳のいき場所がなくなってしまうことで、廃棄処分することがないように様々な取組が行われています。

とはいえ、中には「そもそも生乳の生産を少なくすればいいじゃないか!」と考える人もいるかもしれません。

ですが、そもそも「生乳」は牛のおっぱいです。

つまり、本来は自分の子ども(子牛)のために与えるものであり、それを人間が分けてもらっています。

これは自然の摂理ですので、例えば薬で乳量をおさえるわけにもいきませんし、抑えることができたとしても、そんな薬漬けの牛乳を誰も飲みたいとは思わないでしょう。

さて、そんな生乳生産は4月が出産のピークとなっています。ただ、出産後約1~2ヶ月程度の乳量が最も多くなっているため、生乳生産のピークは6月頃まで続くことになります。

*ちなみに、暑くなるとストレスで乳量が減少するため、涼しくなるまでしばらく時間的余裕が生まれることになります。

→このように、急場をしのぐために「プラスワンプロジェクト」が緊急対策としてスタートしました。

 

最後に

実は、外出規制などにより牛乳乳製品の家庭内の消費量は大幅に増加しています。

例えば、4月6~12日では家庭用1L牛乳が対前年比117%:3,790tも増加しています。ただ、それでも消費量が少ないことが実状です。

18歳未満は約2,000万人います。

週に1回、コップ1杯分(200ml)を牛乳を飲む量を増やすと学校給食牛乳1週間分(9,500t)の約4割相当の量が消費されることになります。

さて、牛乳に関する様々なウワサがありますがそういったウワサに関しては、株式会社Jミルクが丁寧に解説してくれています。

どちらにしても飲み過ぎはよくないため、できる範囲でプラスワンプロジェクトに挑戦してもいいかもしれません。


参考

農事組合法人 白木牧場:特別牛乳について
https://sirakibokujo.com/certified-milk.html

JAcom:2020.04.21 家庭で牛乳乳製品「プラスワン」を 生乳廃棄防げ-農水省が緊急プロジェクト
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2020/04/200421-41336.php

関東生乳販売農業協同組合連合会:生乳と牛乳
https://www.dairy.co.jp/kanto/knowledge/91ra2s0000003l97.html

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です