梅雨の季節に入りましたが、蒸し暑い日が続いています。
さて、梅雨が終わればいよいよ夏本番となりますが、「熱さまシート」を利用される方も多いのではないでしょうか?
夜間に、おデコに貼り付けて寝ると気持ちいいですよね。
ただ、そんな熱さまシートにはさまざまな誤解があります。
今回は、「熱さまシートに体温を下げる効果はない!?」についてご紹介します。
「熱さまシート」ってそもそもなに?
小林製薬のHPを確認すると・・・
熱さまシートは小林製薬が開発した「急な発熱にもそのまますぐに使える」そんな、画期的な商品として25周年を迎えるロングセラー商品です。
これまでに、世界で約4億枚も売れているようです。
私も、使ったことがあるのでお勧めしたい商品の1つでもあります。
ただ、どんな商品も万能ではありません。どんなにいい商品も使い手次第で変わってしまうため、今回はその注意点について見ていきましょう。
どんな商品なの?
- 急な発熱にすぐ使える
- 冷却力が約8時間
- 寝返りを打っても剥がれにくい
- 肌に優しい弱酸性シート
こういった特徴があります。
熱さまシートの仕組みは、シートに含まれているたっぷりの水分が熱を吸って蒸発する「気化熱」を利用して貼付している皮膚の温度を-2℃冷でやし続けることができます。この持続時間が約8時間ということです。
これまでは、冷やしたタオルなどをデコに置いていたと思いますが、寝返りをうてば簡単に落ちてしまいますし、体温ですぐに温かくなってしまい何度も冷やす必要がありました。
まさに、「看病」というイメージですよね。
こういったことからも、熱さまシートが画期的な商品だと分かるのではないでしょうか?
それでは、次に基本的な発熱時の対策を見ていきましょう。
一般的な発熱時の対策は?
子どもの手足が冷たいとき
熱が上がる途中で、39℃でもまだ手足が冷たいときは、もう少し熱が上がる可能性があるため、体と手足を温める。
→解熱剤も使ってはいけない。
子どもの手足が温かいとき
熱が上がりきっているため、「脇の下」や「足の付け根」を冷やします。
そして、水分補給が重要です。
さて、人間は汗をかくことで体温調整をしているため、水分不足になると汗をかくことができず熱が体内にこもることになってしまいます。
それでは、熱さまシートの役割は何だと思いますか?
熱さまシートの役割は?
そもそも、「冷却」と「解熱」は違います。
熱さまシートの効果は、貼付している場所の皮膚温度を-2℃に下げる効果はありますが、体温を下げる(解熱)効果はありません。
→熱さまシートで、異常な高体温が正常体温に改善することはない。
私達が誤解する可能性があるのは、実際には「局所的な部分の温度が2℃下がる」という効果しかないにも関わらず、正常体温に改善する解熱効果があると勘違いしてしまう点ではないでしょうか?
例えば、熱さまシートを貼っているのに先程紹介したような「脇の下」や「足の付け根」を冷やしていいのか不安になる人もいるのではないでしょうか?
熱さまシートの効果は、あくまでも「局所的な冷感の気持ちよさ」を付与してくれる物
です。つまり、直接的な解熱効果はありませんが、苦痛緩和には効果的です。
結論から言えば、通常の発熱対策は必要であくまでもリラックス効果がある1つの方法として使用する必要があります。
こんな実験があります。
熱さまシートを使った実験
辻本奈美 小児用冷却貼付剤の効用について チャイルドヘルスVol3.No5.39-40
東京女子医大小児科の社本先生の報告では、4~15才の入院中の患児15名について熱さまし用冷却 シートの解熱効果とリラックス効果について検討しています。結果、熱さまし用冷却シート使用前後で全例に解熱効果を認めないという結果でした。それに反してリラックス効果(副交感神経優位状態)は15名中8例(53%)に認められたという結果でした。
つまり、15人の子ども達の内、1人も解熱効果を認める結果をえることができませんでした。ただ、約半数の子ども達にはリラックス効果が認められています。
注意する点としては、「熱さまシートを利用したとしても、リラックス効果をえられない場合がある」ことです。
以上の理由から、これまで通り小児科医が指導されていることを実践していくことになります。
- 水分補給
- 薄着
- 体の中心部の冷却→首周り、腋裔(脇の下)、ソケイ部(足の付け根)など
- 悪寒(寒気で体がブルブルする状態)があるときは冷却を控える
- 体力が著しく消耗した場合は「解熱剤」の使用
こういった対策が必要となります。
暑さ対策と使用する場合も、熱さまシートは睡眠導入の手助けにはなるかもしれませんが、「水分補給」や「エアコンの利用」などはこれまで通り必要です。
決して熱さまシートを過信せずに、あくまでもリラックス効果を与えてくれる物として使用する必要があります。
熱さまシートによる事故
2004年4月には、北海道で発熱した生後4ヶ月の男児の額に熱さま用冷却シートを貼り看護していた母親が、夕食の後片付けのために目を離した隙に、熱さまし用冷却シートが男児の口と鼻を塞ぎ窒息状態になりました。
→救急搬送されましたが、重い障害が残ってしまいました。
また、ICU入院中だった認知症の高齢者が「冷えピタを誤飲して心肺停止で見つかる」という事故もありました。
取扱いとしては・・・
- 口や鼻に張り付かないように注意する
- 観察が十分できない場合は貼ったままにしない
- できるだけ張り直しをしない
このように、どんな物にも使い方があります。用法用量を守って正しくお使い下さい。
最後に
熱さまシートは、おでこ以外にも首筋・脇の下・内股など皮膚温の高いところに貼る方法も示されています。
ただ、商品の性質上水分が蒸発してしまえば使えません。そのため、開封すれば基本的に使いきる必要があります。
ちなみに、大人用の場合はサイズが子ども用よりも大きいだけではなく、メントールの量が多く配合されているため、冷感が高められています。
熱さまシートは、正しくお使い下さい。暑くなる夏を少しでも快適に過ごしましょう。
参考
小児科診察室:冷えピタ・熱さまシート
→https://sites.google.com/site/oogucci/lengepita-resamashito
医会マガジン/子育てに役立つ情報/熱さまし用冷却シートの使用について
→http://www.npa-niigata.jp/t-kosodate/kosodate-hashikin01.htm
日本医事新報社:冷却ジェルシートにはクーリング効果があるのか?
→https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11987
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