●この記事では、「新しい雪情報と顕著な大雪」についてお伝えしています。
2021年は、年始から厳しい寒さに見舞われました。
ところで、気象庁が発表するそんな冬の「雪情報」が新しくなったことをご存じでしょうか?
実は、この新しい雪情報が知らないことが原因と考えられる被害がすでに発生しています。
今回は、「新しく始まった雪情報」についてご紹介します。
「新しい雪情報」ってなに?
実は、2019年11月13日の16時から「現在の積雪・降雪の分布を推定する新しい雪の情報の提供」が開始されています。
さらに、「3日先までの降雪量予測」・「短期的な記録的な大雪があった際には一層の警戒を呼びかける」という3つの新しい雪情報が提供されることになりました。
3つの新しい雪情報?
❶解析積雪深・解析降雪量の提供
これまでは、アメダスの積雪計による観測値が提供されていました。
ですが、新しい雪情報では「解析積雪深・解析降雪量」という情報も提供されることになりました、
この新しい雪情報により、雪の観測がおこなわれていない地域も含めて、積雪・降雪の分布が一目で分かるようになりました。
さらに、この情報を見れば積雪の深さだけでなく、「3時間・6時間・12時間・24時間・48時間・72時間」それぞれの降雪量が分かるため、外出予定や迂回路などに利用することもできます。
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*例えば、海寄りの地域の降雪量が多いことが分かっていれば、遠回りになったとしても内陸の道路を選択できる。
➋3日先までの降雪量予測の提供
これまでの気象情報では、「24時間予想降雪量」・「24時間先からの24時間予想降雪量」が記述されてきました。
ですが、冬型の気圧配置により日本海側で数日間降雪が持続するときなど、降雪量について精度良く予測が可能な場合は、府県気象情報等で「48時間先からの24時間予想降雪量」が記述されます。
❸短時間の大雪に対する一層の警戒を呼びかけ
そもそも気象庁では、2018年12月から「大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」を発表。そして、都道府県や市町村等への支援を強化をしてきました。
それが、2019年の冬からは山形県、福島県(会津地方)、新潟県、富山県、石川県、福井県において、顕著な降雪が観測され、今後も継続すると見込まれる場合、「短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」が提供されています。
それでは、この「大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」と「短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」は、どういった情報なのでしょうか?
大雪の警戒を呼びかける情報?
「大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」とは?
社会的に大きな影響を及ぼした大雪事例等をもとに設定した基準を用いて、今後の大雪が見込まれる場合に発表されます。
気象庁では、以下のような例が示されています。
(例)大雪警報基準(23区で12時間10cm)を超える降雪量の予想があり、基準を超えた後も更に降り続く場合(東京都)
(例)地域防災計画で定められている警戒積雪深(福井で90cm)を超過する予想があり、その後大雪警報基準(福井で12時間30cm)を超える予想の場合(北陸地方)
このように、すでに「大雪警報基準」や「警戒積雪深」が定められているため、これを越える予想が出れば当然、危険な状況となるため発表されます。
ただ、これだけでは結局どれくらいの時間で降雪が危険な状態になるか分からないですよね?
そこで、「短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」が役に立ちます。
「短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」とは?
この情報は、「顕著な降雪が観測され今後も継続する見込み」の場合に発表されることになります。
府県気象情報の記述例はこのようになっています。
顕著な大雪に関する××県気象情報 第○号
令和元年××月××日△△時△△分 ○○地方気象台発表○○市○○で○日○時までの○時間で○○センチの顕著な降雪を観測しました。
この強い雪は○日昼過ぎにかけて続く見込みです。○○の平地では、大規模な交通障害の発生するおそれが高まっています。
ただし、この「短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」は、「山形県、福島県(会津地方)、新潟県、富山県、石川県、福井県」で実施されています。
そして、「顕著な大雪」という報道があれば、短時間で一気に大雪が降ることが予想されているということになります。
それでは、この「顕著な大雪」とはどれほどの大雪なのでしょうか?
実際の事例は?
実は、「令和3年1月7日から11日にかけての大雪に関する富山県気象速報」において、富山県で2020年1月7日の22時14分発表が初めて「顕著な大雪」の発表となりました。
その後、1月8日には富山県・福井県・新潟県・石川県でも発表されました。
内閣府の防災情報「1 月 7 日からの大雪等による被害状況等について」では、当時のさまざまな被害がまとめられています。
7 日以降 11 日にかけて、北日本から西日本にかけての日本海側を中心に断続的に強い雪が降り、普段雪の少ない九州や四国などでも積雪となったところがあった。北陸地方を中心に 7 日から 9 日にかけて発達した雪雲が流れ込み続けたため、3 時間に 20センチを超える顕著な降雪量を観測し、新潟県高田では 9 日に 24 時間降雪量 103 センチを観測し、観測史上 1 位の記録を更新した。
つまり、「新しい雪情報」は正しく運用されたことが分かります。
ところが、例えば富山県では東海北陸自動車道にて車の立ち往生が発生し、2020年1月10日に自衛隊の災害派遣が要請されました。
福井県でも2020年1月10日に同様の理由で、北陸自動車道に自衛隊に対して災害派遣が要請されるなど多大な被害が発生しました。
このことから、せっかくの予報もうまく伝わっていなかったことが考えられます。
それでは、「顕著な大雪」は結局どれくらいの大雪なのでしょうか?
「顕著な大雪」はそんなに危険なの?
例えば、「ゲリラ豪雨が降る!」と言われれば用心するのではないでしょうか?
ただ、この「ゲリラ豪雨」は正式な用語ではないため、気象庁では例えば「記録的短時間大雨情報」として発表されます。
この記録的短時間大雨情報とは、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨が観測(解析)された際に、全国の気象台から「○○時△△県で記録的短時間大雨」という形で発表される情報のことです。
ちなみに、「避難勧告」や「避難指示」が発令される基準にも利用されることがある重要な情報でもあります。
それでは、「顕著な大雪」はどれくらいの危険があると思いますか?
→「記録的短時間大雨情報」の大雪バージョンが「顕著な大雪」
つまり、「顕著な大雪」と発表があれば、災害レベルの可能性が高いということです。
実際、今冬では自衛隊の災害派遣がなされる程だったことは先程お伝えした通りです。
そもそも、自衛隊の災害派遣は「緊急を要し、県の災害対応能力を超える事態が見込まれた場合に初めて行われるもの」と、平成26年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文 (新井 豪議員)で知事が発言されているように、安易に要請できるものではありません。
このように、「顕著な大雪」はゲリラ豪雨と同じように注意をしなくてはいけない気象情報ということになります。
→顕著な大雪は、「ゲリラ豪雪」と呼んだ方が分かりやすいかもしれません。
最後に
新しい雪情報は、まだ始まったばかりです。
そもそも、「顕著な大雪」については2021年1月7日に初めて使用されました。
そのため、そもそもそれがどういう意味か知らない人が多かったのではないでしょうか?
しかも、地域限定の気象情報であるため、特に地域外から来た人は本当に知らなかったのではないでしょうか?
ただ、知らなかったではすまされないような重要な情報です。気象情報は今後も見直されていくため、情報を適切に受け取って生活に生かせるようにしていけるといいですね。
参考
「事件・事故・災害アーカイブ」:「顕著な大雪情報」が全国で運用開始
→https://www.teguchi.info/weather/winter/heavy-snow/
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