雨がやんでも危険はある!? 川の防災情報「指定河川洪水予報」を知っていますか?

 

ゲリラ豪雨や長雨が、やんだり・弱まったりしたら安心する人も多いのではないでしょうか?

ですが、実は雨の勢いが弱まった時も注意が必要です。

例えば、上流で増水した水が下流に達するまでには、どうしても時間差が発生します。そのため、川の下流にある地域では「雨が弱まったのに数位上がった!?」なんてことが引き起こされます。

今回は、『河川の洪水や氾濫の可能性を知ることができる「指定河川洪水予報」』についてご紹介します。

 

「洪水」の指標と言えば?

私が子どもの頃なら、「洪水注意報」や「洪水警報」が主流でした。

ですが、今では大雨警戒レベルが発表されるようになり、避難するタイミングをより細かく知ることができるようになりました。

ただ、冒頭でお伝えしたように地域によって、川の氾濫が雨がやんでから発生する可能性もあります。そこで、大雨警戒レベルをこれまで使われてきた「ある指標」と併用することになりました。

 

台風19号が契機になった

2019年10月に台風19号により、東日本を中心に記録的な大雨が発生し、河川の堤防決壊や氾濫などが発生。東北・関東・北陸地方をはじめとして各地に大きな被害をあたえました。

この時・・・

  • 川の防災情報がアクセス過多で繋がりにくくなった
  • 緊急速報メールの配信が一部実施できなかった
  • 大雨特別警報解除後の洪水への注意喚起が不十分だった

このような河川・気象情報の発信・伝達に関する課題が明らかとなり「河川・気象情報の改善に関する検証報告書」が取りまとめられました。

ただ、そもそも「指定河川洪水予報」と呼ばれる情報が以前から利用されてきました。「ある指標」とは、この指定河川洪水予報のことで、大雨警戒レベルと組み合わされることになりました。

 

「指定河川洪水予報」ってなに?

気象庁では、このように説明されています。

河川の増水や氾濫などに対する水防活動の判断や住民の避難行動の参考となるように、気象庁は国土交通省または都道府県の機関と共同して、あらかじめ指定した河川について、区間を決めて水位または流量を示した洪水の予報を行っています。

つまり、危険性が高い河川はすでに把握されており、それぞれ状況に応じて以下の4つの予報を出しています。

 

指定河川洪水予報の4つの標題

  1. 氾濫注意情報
  2. 氾濫警戒情報
  3. 氾濫危険情報
  4. 氾濫発生情報

これは、水防法により・・・

「流域面積が大きい河川で洪水により国民経済上重大な損害を生ずるおそれがある河川を洪水予報河川に指定し、水位予測の結果をもとに、洪水予報を発表すること」が規定されているためです。

さらに言えば、指定河川洪水予報の対象となる河川は、大きく分けて「国の機関」「都道府県知事」が実施する2つがあります。

 

国土交通省と気象庁が共同で行う指定河川洪水予報の場合

  1. 2つ以上の都府県にわたる河川や流域面積の大きい河川
  2. 洪水により重大な損害が生じる可能性がある

この2つに該当すれば国土交通大臣が指定することになり、全国109の水系で洪水予報が実施されています。

 

都道府県と気象庁が共同で行う指定河川洪水予報の場合

  1. 上記以外の河川で、洪水によって相当の被害が生じる可能性がある場合、気象庁と協議して都道府県知事が指定。

→都道府県と気象庁が共同で行う指定河川洪水予報は、2002年5月から始まりました。

そして、この「指定河川洪水予報」と「大雨警戒レベル」が先程の報告書の中で、今後は組み合わせて発表されることとなりました。

 

「指定河川洪水予報」と「大雨警戒レベル」を組み合わせると・・・

洪水予報の標題(種類) 発表基準 市町村・住民に求める行動の段階
⚪⚪川氾濫発生情報(洪水警報) 氾濫の発生(氾濫水の予報) 氾濫水への警戒を求める段階
(警戒レベル5相当)
⚪⚪川氾濫危険情報(洪水警報) 氾濫危険水位(レベル4水位)に到達
  • いつ氾濫してもおかしくない状態
  • 避難等の氾濫発生に対する対応を求める段階(警戒レベル4相当)
⚪⚪川氾濫警戒情報(洪水警報)
  • 一定時間後に氾濫危険水位(レベル4水位)に到達が見込まれる場合
  • 避難判断水位(レベル3水位)に到達し、さらに水位の上昇が見込まれる場合
避難準備などの氾濫発生に対する警戒を求める段階
(警戒レベル3相当)
⚪⚪川氾濫注意情報(洪水注意報) 氾濫注意水位(レベル2水位)に到達し、さらに水位の上昇が見込まれる場合 氾濫の発生に対する注意を求める段階(警戒レベル2相当)

一覧表にすると、それぞれの時点で現実にこのような危険な状態になっていることが分かります。

大雨警戒レベルでは、4以上は基本的に「危険な場所に住んでいる全ての人」が、すでに避難が終わっていないといけないタイミングです。

つまり、「氾濫発生情報」・「氾濫危険情報」がでる前の「氾濫警戒情報」が出てから、「氾濫危険情報」が出る前に避難が終了していなくてはいけません。

逆に言えば、「氾濫危険情報」以上が出た時点で、避難が難しくなってきていることを意味しています。それでは、具体的に私達はどういった行動をすればいいのでしょうか?

 

指定河川洪水予報が出たときの私達がとる行動とは?

❶氾濫注意情報(警戒レベル2相当)

  • 避難行動の確認が必要とされる警戒レベル2に相当。
  • ハザードマップ等により、災害が想定されている区域や避難先、避難経路を確認。

 

➋氾濫警戒情報(警戒レベル3相当)

  • 地元の自治体が避難準備・高齢者等避難開始を発令する目安となる情報。
  • 高齢者等の避難が必要とされる警戒レベル3に相当。
  • 災害が想定されている区域等では、自治体からの避難準備・高齢者等避難開始の発令に留意するとともに、高齢者等の方は自ら避難の判断が必要。

 

❸氾濫危険情報(警戒レベル4相当)

  • 地元の自治体が避難勧告を発令する目安となる情報。
  • 避難が必要とされる警戒レベル4に相当。
  • 災害が想定されている区域等では、自治体からの避難勧告の発令に留意するとともに、避難勧告が発令されていなくても自ら避難の判断が必要。

 

❹氾濫発生情報(警戒レベル5相当)

  • 災害がすでに発生していることを示す警戒レベル5に相当。
  • 災害がすでに発生している状況。
  • 命を守るための最善の行動をとる必要がある。

このように、雨がやんだからといって安全ではなく、その時点でどのような災害情報が発表されているかを知る必要があります。

そして、その情報には「避難のタイミング」「引き起こされるであろう危険」など、どういった意味があるのか知る必要があります。

まずは、現状を理解することに努めるようにして下さい。

 

最後に

経験の蓄積や技術の発達により、被害予想などが細かくできるようになりました。ただ、それでも今のところ地震予知などはできません。

ですが、少なくともすでにハザードマップがあり、誰もが自分の地域が災害に弱いかどうかを知ることができるようになりました。

また、避難のタイミングなど現状がどういった状況なのか、例えばスマホがあればリアルタイムで知ることができるようになりました。

最後は、「実際に私達がどのタイミングで・何を持って・どこへ避難を開始するのか?」という問題だけが残ります。

当然、情報が伝わる前に水害が発生してしまうこともあります。そういった不測の事態に陥った時には、自宅も含めて垂直避難ができる場所を把握しておく必要もあるでしょう。

最後は、自分の命を守れるのは自分だけになるため、特に雨が多くなる季節はご注意下さい。

国土交通省ハザードマップポータルを使えば、お住まいの地域のハザードマップなどを調べることができます。

 

「垂直避難」については、こちらの記事で紹介しています。

垂直避難は最後の手段! でも、準備が必須!?

 

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