シオノギ製薬が日本のワクチン開発中?  治験はどこまできた?

 

この記事では、シオノギ製薬が開発中の日本のコロナワクチンについてお伝えしています。

 

新型コロナウイルスのワクチン接種が2月下旬から開始されることとなり、接種者の優先順位も決まりました。

そして、日本では「ファイザー社」・「モデルナ社」・「アストラゼネカ社」の3社(米国と英国)から、ワクチン供給を受けています。

ですが、実は日本でもワクチン開発は進められています。

今回は、「シオノギ製薬の治験段階」についてご紹介します。

 

第 1/2 相臨床試験が開始されている!

シオノギ製薬では、2020年12月16日に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの第 1/2 相臨床試験開始のお知らせ」が発表されています。

いわゆる「治験」です。

治験を完了するまでには、第三相臨床試験を完了して初めて厚生労働省から認可を受けることができます。

それでは、「第1/2相試験」とはどういう意味なのでしょうか?

 

治験のおさらい

そもそも、「治験」というのは新しい薬が人の病気に効いて、安全に使えるかを確かめるために実施される試験ですよね。

例えば、治験のアルバイトとして、元気な人が薬の効果を確認するために試験される場合は、第1相臨床試験に当たります。

承認されていない薬剤等を、承認を目的としてデータを集める過程等が「治験」と呼ばれる。

 

ただ、当然ですがいきなり第1相臨床試験が開始されるわけではありません。

  1. 研究所で研究者が薬の基を「発見」!
  2. 「基礎研究」が実施(試験管や動物実験など)
  3. 「治験」(「人」に投与開始)
  4. 国から認可されて「発売」

つまり、薬の開発は「発見→研究→治験→発売」という過程を進んでいきます。そして、容認された結果、私達はその薬を利用することができるようになります。

それでは、シオノギ製薬が発表している「第1/2相試験」とは治験のどの段階に当たるのでしょうか?

 

「第1/2相試験」ってなに?

治験には、「第Ⅰ相臨床試験(フェーズ1)」・「第Ⅱ相臨床試験(フェーズ2)」・「第三相臨床試験(フェーズ3)」の三段階があります。

  • 第Ⅰ相試験・・・少数の健康な成人を対象に安全性や体内動態が検証。
  • 第Ⅱ相試験・・・少数の患者さんを対象に安全性や有効性が検証。
  • 第Ⅲ相試験・・・多数の患者さんを対象に安全性や有効性が検証。

つまり、一ずつ臨床試験をクリアしていくことでフェーズを進むことができます。

 

それでは、第1/2相試験は治験のどのフェーズのことを指しているのでしょうか?

A.第Ⅰ相試験がそのまま第Ⅱ相試験に移行する試験のこと。

*第Ⅱ相試験がそのまま第Ⅲ相試験に移行する試験は、第2/3相試験といわれる。

それでは、どうして第Ⅰ相臨床試験ではアルバイトを雇ってでも基本的に健康な成人が選ばれるのでしょうか?

mcmurryjulie / Pixabay

 

第Ⅰ相臨床試験ではなにを検証しているの?

先程もお伝えしたように、第Ⅰ相臨床試験では「安全性や体内動態が検証」されることになります。

つまり、そもそも初めて人に開発された薬を投与することになります。

→第Ⅰ相臨床試験は、「この薬を本当に人に使っても大丈夫か?」という検証が第一の目的。

このように、第Ⅰ相臨床試験で検証される「安全性」が検証されることになります。

では、「体内動態」とはなんなのでしょうか?

 

「体内動態」ってなに?

「体内動態」というのは・・・

  • 吸収(Absorption)
  • 分布(Distribution)
  • 代謝(Metabolism)
  • 排泄(Excretion

それぞれの頭文字をとって「ADME(アドメ)」と呼ばれています。

つまり、体内動態とは医薬品が服用されてから体外に排泄されるまでの経過のことです。

 

吸収~排泄までの経過が検証される?

どういうことかと言うと、服用や注射などで私達が体内に取り入れた薬が、「身体の中をどう巡って、どの部分にどれくらい存在し、どこから消えていくか?」

この時間を追って検査・解析していく必要があります。これを「薬物動態試験(ADME試験)」と呼ばれます。

 

❶例えば、口から入った薬が脳・皮膚・腸・筋肉など身体の部位に・・・

  • どの位のスピードで、
  • どのくらいの割合で散っていき、
  • どう変化して身体の外に出て行くのか?

こういったことが、ADME試験で検証されることになります。

 

➋ADMEの働きは、テーマパークなどで例えられることがあります。

  • 吸収→「入場ゲート」
  • 分布→それぞれのアトラクションへの「移動」
  • 代謝→「感動」・「恐怖」といった様々な変化
  • 排泄→「退場ゲート」

ちなみに、「第Ⅰ相臨床試験が基本的には元気な人が対象・・・」とお伝えしたのは抗がん剤の場合、元気な人出はなく、標準的な治療がなくなった患者さんに対して実施されることがあるためです。

それでは、シオノギ製薬が開発中のコロナワクチンについて見ていきましょう。

 

そもそもどんなワクチンを開発中なの?

シオノギ製薬が開発中のワクチンは、「BEVS」を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンです。

BEVSというのは、「Baculovirus Expression Vector System:昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術」のことです。

例えば、コロナワクチン接種で使われるのは「mRNAワクチン」ですが、これは遺伝子情報そのものを投与することで、体内に抗原タンパクを合成させる新規技術です。

ですが、「BEVS」はインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術です。

ただし、接種後1年間追跡評価がなされるため、まだまだ開発には時間がかかります。

そもそも、ワクチン開発は何年もかかります。

とはいえ、新しいワクチンの開発は、少なくとも今後のワクチン接種の安全性が向上する可能性を秘めているといえるでしょう。

 

最後に

日本でも、コロナワクチンの開発は進められています。

ただ、やはり「日本で新しいワクチンを開発しよう」と思えば、何年も時間がかかってしまいます。

また、そもそも薬品の承認基準は各国で違います。

例えば、アメリカの製薬会社が作った「レムデシベル」は、アメリカと中国の治験結果が真逆の発表だったことが有名です。

レムデシベルはもともと、エボラ出血熱の治療目的で作られた薬でしたが、これまでどこの国でも承認されることはなく、医療機関でも使用されてこなかった薬でした。

ですが、新型コロナウイルスによる脚光を浴びることとなりました。

 

ただ、治験の結果、米国では「効果があった」・中国では「効果がなかった」という真逆の結果が出た薬でもありました。

ちなみに、中国の治験結果というのは、「レムデシビルの有無に関わらず、改善までの日数に差はなかった。」という結果がでたためです。

というのも、治験の評価段階が各国で6段階や8段階と違いがありました。

なにが言いたいかと言えば、「そもそも効果の評価が画一的なものではない」と言うことです。

そして、どんなワクチンであっても副作用があります。

そのため、すこしでも副作用の少ないワクチンを接種することも考えなくてはいけません。つまり、同じ効果がある複数の別のワクチンがあるに越したことはありません。

ワクチン開発は、「1つのワクチンができて終了」ではなくそれが始まりだと言えるでしょう。


シオノギ製薬
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2020/12/201216.html

ITmediaビジネス:新型コロナ薬のレムデシビルは、なぜ米中で治験の結果が正反対だったのか?
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2005/19/news031_2.html

recruit agent:ADME (アドメ、Absorption Distribution Metabolism Excretion)
https://www.r-agent.com/medical/glossary/glossaryList/glo_adme.html

 

 

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