車中泊でのアイドリングはなぜ怖い? ~排ガスとエアコン~

 

この記事では、一酸化炭素と車中泊について説明しています。

 

すっかり冬本番となりましたが、コロナ禍とはいえ車で外出することもあるのではないでしょうか?

特に、雪が多い地域では注意が必要なことがあります。

今回は、「車と一酸化炭素中毒」についてご紹介します。

 

車内で一酸化炭素中毒?

「車内でエンジンを付けっぱなしでいたら危険!」なんて聞いたことありませんか?

これは、「エンジンを付けたまま停車すること=アイドリング」が危険なことを意味しています。

ただし、アイドリングには危険が潜んでいます。

 

「バッテリー上がり」の危険!

例えば、冬場だと車中泊をしようと思えば、アイドリングの状態でエアコンを付けることになりますよね。

本来なら、アイドリングをしているだけならバッテリーが消費されることはないため、「バッテリー上がり」の心配はありません。

ところが、エアコンやオーディオなどを付けてしまえば車に充電されたバッテリーがどんどん消費されてバッテリー上がりの症状が出てきてしまいます。

当然、夏場もアイドリング状態で車中泊をすればエアコンを付けるためバッテリー上がりが引き起こされることになります。

StockSnap / Pixabay

 

分かりやすく言えば、普通の車で車中泊ができるのは、エアコンが必要ない季節に限られます。それ以外の季節は、冬なら防寒具の徹底が必要不可欠になるでしょう。

→夏場なら暑さ対策だけでなく虫除け対策など準備が必要。

*エアコンを使わない前提の対策。

さて、このようにアイドリングを継続させることは、「バッテリー上がり」が一つ目の危険性となります。

ただし、アイドリング中にも危険があります。

それが、冬場に引き起こさやすい車内での一酸化中毒です。

 

どうして、車内で「一酸化炭素中毒」になるの?

そもそも、自動車の排ガスには「一酸化炭素」が含まれています。

「一酸化炭素」といえば・・・

  • 空気より軽い
  • 無色
  • 無臭
  • 無刺激

つまり、気付きにくい有毒ガスです。

そして、この危険な一酸化炭素を含んだ排ガスが車内に吸い込まれる場合があります。

それが、「雪で埋もれた車内」です。

 

「雪」で排ガスが車内に流入!?

そもそも一酸化炭素は、ヘモグロビンと結合して酸素の運搬を阻害してしまいますが、軽度であれば軽い頭痛や疲労感などですみます。

ただ、一酸化炭素の濃度や吸引量が増加すれば激しい頭痛・めまい・耳鳴りなどが引き起こされ、重症になれば、意識障害・痙攣・昏睡状態。

そして、最後は心配機能が停止してしまいます。

それでは、どれくらい雪が積もれば排ガスが車内に流入する危険があるのでしょうか?

ninofficialphotography / Pixabay

 

車のマフラーが1つの目安!?

JAFのユーザーテストより

このテストでは、「吹雪による停車時」「スキー場での仮眠」が想定されています。

→「雪山登山」や「災害時」など、雪が積もる可能性がある場所でしばらくアイドリングする場合は、自分と同乗者の命を守るために、全ての人が理解しておく必要がある。

 

テスト結果

テストでは、「マフラー周辺を除雪した車」「対策していない車」が使われました。

 

《車のマフラーの高さまで雪が積もっていた場合》

車のマフラー程度までしか積雪がない場合は、1時間経過しても車内の一酸化炭素濃度は上がりませんでした。

ところが・・・

 

 

《ボンネットの高さまで雪が積もった場合》

「車のマフラー部分の除雪をしていない車内」の一酸化炭素濃度が、5分経過頃に上がり始めました。

そして、16分後には一酸化炭素濃度が400PPMに上昇してしまいました。さらに、22分後には1,000PPMに達しています。(一酸化炭素濃度と中毒症状の関係については、後述します)

つまり、積雪がマフラーの高さまでなら、あとはバッテリー切れに気を付けることになります。

ですが、ボンネットの高さまでの積雪であれば、バッテリー切れだけでなく、マフラーの除雪をしなければ一酸化炭素中毒にも気を付けなくてはいけなくなります。

ところで、「それなら窓を開ければ?」と考える人もいるかもしれませんね・・・

実は、JAFのユーザーテストでは窓を5㎝開けた状態の一酸化炭素の濃度も測定されています。

 

 

《ボンネットの上までの積雪で窓を5cm開けた場合》

窓を5㎝開ける対策だけでは、危険レベルに達するまでに40分かかりましたが、危険なことに変わりありませんでした。

ただ、そもそもただでさえ寒い環境で、窓を開ける人がどれだけいるのかは未知数です。

このように、積雪によってアイドリングによる危険度が大きく変わってしまいます。


ただ、そもそも寝てしまってはどれくらいの積雪か分からないですよね・・・

しかも、いつバッテリーが上がり、エアコンが止まってしまうかも分かりません。

ということで、そもそも車中泊でアイドリング状態で寝てはいけません!(騒音もあるため、季節に関係なくアイドリング状態での仮眠は避ける)

そのため、例えば冬場なら「⚪年ぶりの大雪になるでしょう・・・」など、雪関係の気象情報は確認しておく必要があります。

他にも、車中泊は「エコノミークラス症候群」の危険などもあります。

 

「エコノミークラス症候群」については、こちらの記事で紹介しています。

さまざまな呼び名がある「エコノミー症候群」~突然死は、災害時だけじゃない!?~

それでは、先程の一酸化炭素の濃度が「400ppm」とか「1000ppm」とはどういった状態なのでしょうか?

 

一酸化炭素の濃度と中毒症状の関係は?

1時間、一酸化炭素に曝露された場合

1時間程度の一酸化炭素への暴露

  • 600~700ppm :酸素不足による症状が出はじめる。
  • 1,000ppm 以上:重篤な症状があらわれる。
  • 1,500ppm 以上:生命の危険。

 

 

1時間の目安

  • 300ppm :影響は少ない
  • 600ppm: 軽度の作用
  • 900ppm:中度ないし高度の影響
  • 1,500ppm: 致死

これらは、1時間暴露された場合の一酸化炭素濃度です。

つまり、400ppmの一酸化炭素濃度では、軽度の作用すら起きにないように考えるかもしれませんが、問題は短時間で400ppmになってしまうことです。

*最小致死濃度:650ppm→45 分となることから、個人差がある。

 

短時間である程度の一酸化炭素に曝露されると・・・

実は、短期間で高濃度の一酸化炭素に暴露されてしまうと危険はさらに高まります。

短時間暴露限度:400ppm、440 mg/㎥

つまり、先程紹介した16分で400ppmというのは「短時間暴露限度(15分間内における平均値が超えてはならない値)」のことで、これを越えると悪影響が出てしまうことになります。

そして、22分で1,000ppmに達しているため、短時間暴露限度を超えてたった6分で重篤な症状に陥ることになります。

このように、一酸化炭素中毒は「濃度」「曝露時間」・「その濃度になるまでにかかった時間」によって影響が変わってきます。

 

最後に

アイドリンをした状態で、もしもマフラーが塞がれてしまうと排ガスが車両前方に流れてきます。

そうなると、テストでは20秒ほどで「空調の吹き出し口」から排ガスが流入していました。

仮に、内気循環にしていたとしても、車体の隙間から排ガスが流入してくる危険があります。

また、車中泊の仮眠では、誤ってアクセルペダルを踏みっぱなしにしたことで、エンジン回転が高い状態が続き高温になりすぎた結果、「エンジン」や「マフラー」から引火。

その結果、「車両火災」なんて信じられないことまで引き起こされています。

アイドリングでの仮眠は、さまざまな危険が付きものです。

もしも、冬場に車内でアイドリングするときは、「マフラー周りの除雪」は基本的な安全対策の1つです。

アイドリングは、環境問題だけでなくこのように命の危険に関わる可能性があります。

「気付かないうちに・・・」なんてことにならないように、対策はしっかりするようにして下さいね。


参考

一般社団法人 大垣労働基準協会:一酸化炭素中毒の現状と予防
https://www.ogakiroukikyo.or.jp/lsc/upfile/information/05/07/507_2_file.pdf

 

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