義務教育の新しい学校「義務教育学校」 小中一貫ってなに?

 

これまで、「中高一貫教育」などでエスカレーター式なんていわれる学校は聞いたことがあるのではないでしょうか?

ですが、実は義務教育の学校として小中一貫教育を目的とした「義務教育学校」と呼ばれる学校が、2016年から学校教育法第1条で新しい学校種として規定されました。

つまり、これまであった学校種である義務教育(小学校や中学校・特別支援学校など)に新しい学校として「義務教育学校」が法律で規定されました。

今回は、義務教育学校についてご紹介します。

 

義務教育学校ってなに?

小中一貫教育とはいえ、「小学校・中学校」という枠組みではなく9年間の教育目標が設定されています。つまり、「義務教育学校」という区分の1つの学校ということになります。

ただし、学校名に「義務教育学校」という名前が使われるわけではなく、あくまでも法律上の学校を表わす名称です。

*設置条例で、法律上の正式名称(義務教育学校)が明らかにされているのですぐに分かります。

 

特徴

1つの学校であるため・・・

  • 校長は1人。
  • 1つの教職員組織。
  • 教員は、小・中免許を併有。

 

既存の小・中学校と同様

  • 市町村教委による就学指定の対象校。
  • 入学者選別は実施しない。
  • 都道府県知事の認可。
  • 授業料を徴収することができない。
  • 小学校・中学校と異なる内容・水準の教育を施す学校ではない。

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修業内容は何が違うの?

修業期間は、先程書いたように9年間です。ただし、期間の定めをある程度自由に設定することもできます。

例えば、小学校・中学校なら6年間と3年間(6-3)ですよね。「義務教育学校」も、9年の課程を前期6年・後期3年に区分することとしています、

ですが、義務教育学校は1年生~9年生までの児童生徒が1つの学校に通っています。そのため、「4-3-2」「5-4」など柔軟な学年段階の区切りを設定することも可能です。

つまり、これまでの小・中学校とはまったく別の新しい学校にすることもできます。まさしく一貫教育ですね。

*義務教育学校は9年間と長いので前期課程・後期課程が設定されています。

  • 前期課程・・・小学校設置基準
  • 後期課程・・・中学校設置基準

 

特殊なカリキュラムなどが組める

先程の「学年段階の区切り」は、前期課程・後期課程の目標達成のためではなくカリキュラム編成上の工夫や指導上の重点を設けるための便宜的な区切りとして設定されることを想定して設けられています。

  • 教育課程の特例を活用して小学校高学年段階から独自の強化を設け、当該強化が導入される学年を区切りとすること。
  • 従来であれば中学校段階の教育の特徴とされてきた「教科担任制、定期考査、生徒会活動、校則に基づく生徒指導、制服・部活動等」を、小学校高学年から導入して、この学年を区切りとすること。

といったさまざまなカリキュラムや指導内容を組むことが想定されています。

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施設形態

小中一貫教育とはいえ、必ずしも同じ施設内とは限りません。

  • 施設一体型・・・小学校・中学校の校舎の全部または一部が一体的に設置されている校舎。
  • 施設隣接型・・・小学校・中学校の校舎が同一敷地または隣接する敷地に別々に設置されている。
  • 施設分離型・・・小学校・中学校の校舎が隣接していない異なる敷地に別々に設置されている。

それでは、義務教育学校のメリット・デメリットにはなにがあるのでしょうか?

 

メリット

実は、さまざまな効果がすでに現れています。

学習指導面

  • 各種学力調査の結果の向上
  • 学習意欲の向上
  • 学習習慣の定着
  • 授業の理解度の向上
  • 学習に悩みを抱える児童生徒の減少

など。

 

生徒指導上の成果

  • 「中1ギャップ」の緩和(不登校・いじめ・暴力行為等の減少・中学校進学に不安を覚える生徒の減少)
  • 学習規律・生活基準の定着
  • 生活リズムの改善
  • 自己肯定感の向上
  • 思いやりや助け合いの気持ちの育成
  • コミュケーション能力の向上

など。

 

教職員に与えた効果

  • 指導方法への改善意欲の向上
  • 教科指導力・生徒指導力の向上
  • 小・中学校間における授業観や評価観の差の縮小
  • 小学校における基礎学力保障の必要性に対する意識の高まり

など。

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デメリット

「一貫教育の実施」に伴う・・・

  • 準備に関わる課題・・・9年間の系統性に配慮した指導計画・行事・時間割など。
  • 時間の確保等に関わる課題・・・小・中学校間の打ち合わせ・研修・交流の移動といったことにかかる時間など。
  • 児童生徒に与える影響に関する課題・・・転出入者への学習指導・生徒指導上の対応。生徒間の人間関係が固定化しないように配慮するなど。
  • 教職員の意識改革等に関わる課題・・・管理職・教職員間の共通認識の醸成。小・中学校が持続する学年等以外を担当する教職員の意識向上など。
  • 人事・予算等に関わる課題・・・必要な予算の確保、小学校費・中学校費の一体的な運用など。

このように、新たな課題もうまれています。

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最後に

さて、平成30年5月1日の義務教育学校数は82校。小学校は19,635校・中学校は10,151校あります。数としてはまだまだ少ないですが、国の政策として推し進められているため今後も確実に増えていくでしょう。

子どもの教育環境はどんどん変わっています。さらに2020年からは、推薦も含めて全ての学生が大学受験を受ける必要がある(大学入学共通テスト)など私達が学生だった頃と大きく変わります。

子ども達の進路を考えるためには、今のそして今後の教育改革を知らなければ子どもと相談することもできません。

最低限の知識として、まずは今の学校について知るところから学んではみてはいかがでしょうか。


参考

小中連携、小中一貫教育とは何か
https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/textbook/shou/shakai/docs/syochu_kaisetsu_151113.pdf

学校教育法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322M40000080011_20170401_999M40000080011&openerCode=1

旺文社 教育情報センター
http://eic.obunsha.co.jp/viewpoint/201502viewpoint/

 

 

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