皆さんは、殺虫剤についてどんなイメージをお持ちでしょうか?
「人体に悪影響がある」「小さい子どもがいると特に不安。」「虫ならなんにでも効く。」など、イメージは人それぞれでしょう。
今回は、そんな「殺虫剤の危険性」についてご紹介します。
そもそも殺虫剤ってなに?
殺虫剤は、「人や農作物にとって有害な害虫を駆除する」ために昔からありました。
*1600年に現在の島根件に住んでいた松田内記という人物が「家伝殺虫散」というものを発明し、文書に残しています。→記録に残っている日本最古の農薬。
さて、そんな殺虫剤は、害虫を駆除するために作られていますが、「害虫」とひと言でいっても分類があります。
害虫の分類
《衛生害虫》
感染症の原因である病原体を運んだり、アレルギー疾患を引き起こすことにより、私達の健康を脅かす害虫として薬機法で定められた害虫です。
→「ハエ・蚊・ゴキブリ・ノミ・イエダニ」など、多くのご家庭で殺虫剤といえばこちらの殺虫剤を購入されるのではないでしょうか・・・
《園芸害虫》
農業害虫の一部に含まれる害虫で、家庭園芸で栽培されるお花や植木、野菜などに害を与える害虫。
→「アブラムシ・毛虫」など。ガーデニングなど植物を育てているひとは特に注意が必要。
《不快害虫》
「衛生害虫」「園芸害虫」以外の害虫。多くの人が、不快感を持つ害虫や人を咬んだり、刺したりする害を与える。
→「アリ・ハチ・クモ・ムカデ」など。
*このように、「害虫」とひと言でいっても種類があります。つまり、それぞれに適した殺虫剤を使う必要があります。
それでは、殺虫剤はそもそも人体には危険がないのでしょうか?
殺虫剤の危険性は?
誰もが一度は、ゴキブリを退治するために使ったことがあるであろう家庭用殺虫剤は、「衛生害虫」を駆除するために作られています。
衛生害虫を駆除するために作られている殺虫剤は、そもそも「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」に基づいて、医薬品や防御用医薬部外品の承認を受けなければ製造販売が出来ません。
つまり、安全性試験結果により厚生労働省が厳しく審査し、一般の人が使用しても安全であることが確認された上で、製造販売できるようになります。
とはいえ、「殺虫剤は虫を殺すことができる」ということは、人体にも影響を与えることは誰もが考えることだと思います。
殺虫剤が人体に与える影響は?
殺虫剤を製造する基本的な考え方として、そもそも殺虫剤の目的は「対象の害虫を駆除すること」です。つまり、殺虫剤により人・農作物・家畜などに悪影響があれば本末転倒です。
そのため、殺虫剤には「選択性」という性質があります。
例えば、犬にとってのチョコレートは猛毒です。しかし、人間にとってはおいしいおやつですよね。ただ、もちろん食べ過ぎれば人間にとっても毒になります。
*選択性:「防除(害虫)の対象となる生物」と「それ以外の生物」のさまざまな差によって、効力や影響に違いが産まれることをいいます。
殺虫剤には、この選択性が利用されています。それでは、どういった違いがあるのでしょうか?
「人体や家畜」と「虫や菌」との大きな違い!
人と虫の大きな違いを確認!
- 解毒作用が違う
- 脱皮の有無
- 植物は光合成を行なう
このように、そもそも成長過程や体内環境などさまざまな違いがあります。
それでは、どういった効果があるのか、殺虫剤の種類について見ていきましょう。
殺虫剤の作用
①昆虫の神経機能に作用
(有機リン剤・カーバメート剤・合成ピレスロイド剤など)
●有機リン剤●
実は、人と虫は基本的に神経系の構造や機能は同じです。ただ、解毒や分解能力には違いがあるため、虫には少量でも効果を発揮します。
●合成ピレストロイド剤●
低温で効果を発揮します。
例えば、人は体温を一定に保つ恒温動物ですが、虫は変温動物のため効果が強く現れます。
2.昆虫の体内に毒素を生じさせる作用
(BT剤)
青虫などのアルカリ性の消化液をもつ害虫が、BT剤が付着した葉を食べると体内に毒素が生じ駆除することが出来ます。
*酸性の消化液をもつミツバチや哺乳類では毒性は表れません。
3.昆虫の脱皮・変態を妨げる作用
(昆虫成長制御材ーIGR剤)
昆虫の変態や脱皮をコントロールしているホルモンのバランスを狂わせ、脱皮や羽化を阻害し(「脱皮制御材」や「昆虫ホルモン制御材」)、死にいたらしめます。
*人は脱皮も変態もしないので、人にはどちらも毒性がありません。
→他にも、「摂食行動を停止」させたり・「消化管に作用」したりと、様々なタイプの殺虫剤があります。
このように、殺虫剤は虫の構造から「選択性」をもとに作られています。ただし、必ずしも無毒とは限りません。
殺虫剤の危険性
例えば、殺虫剤によく使われる「ピレスロイド系」の殺虫成分は、少量であっても虫には猛毒になりますが・・・
- 人体は分解酵素により速やかに代謝され尿などから排出される。
- そもそも人と虫との体重差は数万・数十万倍もある。
このような理由から、この殺虫剤の安全性は高いとされています。
注意喚起
ただし、日本中毒センターが「ピレスロイド系殺虫スプレー」に関して、こんな注意喚起を行なっています。
基本的に、大量に摂取しない限り中毒症状は起こさないが・・・
- 量にかかわらず、気管へ誤嚥すれば石油系溶剤により化学性肺炎を発症する可能性がある。
- 大量摂取 :嘔気・嘔吐・下痢・口唇・下のしびれ感・めまい・顔面蒼白・痙攣
- 大量の吸入 :くしゃみ・鼻炎・咳嗽(がいそう)・悪心・頭痛・耳鳴り・昏睡
- 過敏症者 :皮膚炎・アナフィラキシーショック
- 長時間多量の皮膚付着 :石油系溶剤によるかぶれ
つまり、確率が低いとはいえ、場合によっては人であっても殺虫剤で死にいたる場合があるということが示されています。
→アナフィラキシーショックについてはこちらの記事で紹介しています。
最後に
用法・用量を守れば、確かに殺虫剤は安全に使えるかもしれません。
ただ、「敏感な人」・「説明書を読まない人」・「子ども」などはその例外といえるでしょう。(殺虫剤の使い方や人により中毒症状が発生する場合がある)
冒頭でお伝えしたように、どんな物でも摂取しすぎれば毒になります。よく例に出される「塩」がその代表です。(60kgの人なら約180gが致死量)
このように、絶対に安全なものはありません。
くれぐれも用法・用量は守って正しくお使い下さい。
参考
飯南町の歴史と文化
→http://www.iinan.jp/history/tayori/2012_10_29.html
アース製薬
→https://www.earth.jp/gaichu/anzensei/
農薬工業会
→https://www.jcpa.or.jp/qa/a4_07.html
日本中毒情報センター
→https://www.j-poison-ic.jp/
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