消毒で常在細菌が「焼け野原」に?手荒れ予防は必須!

 

新型コロナウイルスにより、消毒液が棚から消えてしばらく経ちます。

さて、そんな消毒液ですが手が荒れてしまうことをご存じでしょうか?

これまでは、「職業病」として言われてきましたが、今の状況を考えるとそうとは言い切れないかもしれません。

→医療機関や福祉業界などで働いている人は、感染症対策として毎日何度も何度も手指を消毒しながら働いています。

今回は、そんな「消毒で手が荒れる?原因を知らないと悪化する!」その原因についてご紹介します。

 

手荒れの原因は1つじゃない!?

まず最初に、「アルコール消毒で皮膚が赤くなる」からと言って、必ずしもアルコール過敏ではありません。

そして、手が荒れるということは、皮膚が炎症を起こしている状態です。

そもそもの話しですが、人には常在菌が存在しています。

「常在菌」というと腸内細菌のバランスを整える「腸内フローラ」を想像する人もいるかもしれませんが、そもそも皮膚にも常在細菌が存在しています。

→皮膚は、「人体で最大の臓器」といわれますが、代表的な常在細菌は以下の3種類があります。

 

表皮ブドウ球菌

表面ブドウ球菌は、汗(アルカリ性)や皮脂を餌に「グリセリン」「脂肪酸」を作り出しています。

  • 脂肪酸:肌を弱酸性に保ち抗菌ペプチドを作り出すことで、黄色ブドウ球菌の増殖を防ぐ。
  • グリセリン:皮膚のバリア機能を保つ。

 

アクネ桿菌(かんきん)

アクネ桿菌は、嫌気性菌(けんきせいきん)で酸素がある環境では、ほとんど増殖することができず、死滅していまいます。

→「嫌気性菌」というのは、生育に酸素を必要としない細菌のこと。

つまり、酸素を嫌い毛穴や皮脂腺に存在し、皮脂を餌にプロピオン酸や脂肪酸を作り出すことで皮膚表面を弱酸性に保っています。

なにより、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑える役割を担っています。

*アクネ桿菌は、ニキビの原因とも言われるが、増殖しなければニキビの原因にはならない。(皮脂の分泌量が増えたり、なにかの異常で毛穴を塞がれたりすると過剰に増殖し炎症を引き起こしニキビの原因になる)

 

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌と言えば、食中毒の原因菌の1つとしても有名ですよね。

ですが、そもそも「手指・鼻・喉・耳・皮膚などに広く生息しており、健康な人の20~30%が保菌している」といわれるほど、身近な常在細菌でもあります。

つまり、皮膚表面や毛穴に存在しています。とはいえ、そもそも存在しているだけでは特に問題ありません。

ただし、ブドウ球菌の中では病原性が高いため、皮膚がアルカリ性に傾くと増殖して皮膚炎などを引き起こす原因になります。

例えば、傷を受けた皮膚をそのままにしていると化膿して悪化させてしまう原因でもあります。

さて、このように常在細菌と私達は共生することで健康な皮膚の状態を保つことができます。それでは、なぜ皮膚トラブルが引き起こされるのでしょうか?

 

皮膚トラブルの原因とは?

「皮膚のトラブルが引き起こされている!?」と言うことは、常在細菌のバランスが崩れていることになります。

特に、「表皮ブドウ球菌」を減らさないようにすることが重要です。

 

表皮ブドウ球菌が減る原因

そもそも、表皮ブドウ球菌は角質層に存在しているため無理に角質を落とすようなことをしてしまうと、当然表皮ブドウ球菌は減少することになります。

 

皆さんは、こんなことしていませんか?

  • 長時間の入浴
  • 頻回の洗浄・洗顔
  • 洗顔料・洗浄料の過剰使用

など。


そもそも、秋冬など乾燥するだけでも表皮ブドウ球菌が棲みにくい環境になってしまうため、皮膚はアルカリ性に傾いてしまいます。

そして、『皮膚がアルカリ性に傾くことで、アルカリを好む病原性の強い「黄色ブドウ球菌」や「真菌」が増殖する』という悪循環に陥ります。

このように、常在細菌のバランスを保つことが重要になります。

と、ここで終わってしまっては消毒の話しが関係なくなってしまうため、さらに掘り下げていきます。

 

消毒と常在細菌

さて、なんとなく予想がついている人もいるかと思いますが、常在細菌と「細菌」や「ウイルス」を判断して消毒することができるでしょうか?

例えば、代表的な消毒と言えばアルコール消毒ですよね。

残念ながら、アルコール消毒を手にシュッと吹きかけると、バランスのとれていた常在細菌に覆われていた手のひらは、さしづめ「焼け野原」のようになってしまいます。

もちろん、部分的とはいえアルコール消毒した部分は、菌がいない状態にすることができます。

ところが、その焼け野原に悪い菌が最初に付着してしまうと皮膚を保護してくれるはずの常在細菌もいないため、一気に増殖してしまう危険性があります。

つまり、基本的な考え方としては消毒により皮膚を焼け野原にした後は、「常在細菌を最初に付着させる必要がある」と言うことになります。

それでは本題の、「手荒れ」についご紹介します。

 

「手荒れ」を引き起こす原因は?

冒頭でお伝えしたように、「常在細菌のバランスが崩れたから。」

確かにそうなんですが、原因は1つではありません。

  • 流水と石鹸で頻回に手を洗うと、それだけ皮脂も失われるため手荒れがひどくなる。
  • 皮脂は「お湯」に溶けやすい。さらに、お湯を使うと毛穴が開くため、毛穴の皮脂まで流れてしまう。

など、「手洗い」や「お湯を使う」だけでもバランスが崩れる原因になります。

 

「手荒れ」を防ぐには?

  1. 石鹸を付ける前に水でよく濡らす
  2. 石鹸を流水でよく洗い流す
  3. ペーパータオルは、擦らず押し当てるように拭く
  4. 水分をしっかり拭き取り乾燥させる

こういった対策をする必要があります。


ただし、「手袋・アルコール・ハンドクリーム」など様々な原因でアレルギーを引き起こすことが知られています。

実際、私も尿素が含まれているハンドクリームはひどい痒みが生じるため、介護現場で働いていた10年間は、手荒れがひどくなる前に「ニュートロジーナ」というハンドクリームを使っていました。

また、手袋1つとっても「天然ゴム・ポリ塩化ビニル・ニトリル」など、様々な種類があります。

つまり、「なぜ、手荒れが引き起こされているのか?」

その原因を探らないと、いつまでも痛みや痒みなどに耐えることになります。

私がそうでしたが、最初の頃は予防の仕方が分からず、手荒れがひどくなると指が割れて血だらけになり手を洗えなくなりました。

それでは最後に、「医療者として知っておくべき手荒れ予防の知識」についてご紹介します。

(1)手荒れの原因を認識し、発生原因と取り除く。
(2)皮膚炎を増強させる因子がないか確認する。皮膚科診療も検討する。
(採用している擦式アルコール製剤やハンドソープ、ペーパータオル、手袋の材質やパウダー等)
(3)皮膚炎を増強させる生活環境がないか振り返る(家業でハードな水仕事、趣味)
(4)手指衛生の手技について
①流水と石鹸での手洗いよりも速乾性手指消毒薬での手指消毒が手荒れ予防になる。
②温水で手洗いは行わない。
③皮膚に残存した石鹸成分は化学的刺激となるため十分洗い流す。
④ペーパータオルの摩擦は皮膚への機械刺激となるため、優しく抑えるようにふき取る。
⑤手指衛生の後は十分に乾燥させる。湿った皮膚は脆弱となり手袋などにかぶれやすくなる。
⑥手指の保湿に努める。ハンドクリームをこまめに使用する。

ちなみに、速乾性手指消毒薬には皮膚保護剤が配合されているため、手荒れは少なくなります。以上、手荒れで困っている場合は、原因を探るところから初めてみてはいかがでしょうか?

 

最後に

「消毒したくても商品が売られていない!」なんてこともあるかもしれません。

ただ、まともに感染症対策として「手洗い」や「消毒」を頻回に繰り返した場合、手荒れの原因となります。実践すれば、おそらく、ほとんどの人が経験するのではないでしょうか?

そもそも、毎日の食器洗いを繰り返すだけでも手はガサガサになりますよね・・・

そこに、「普段以上の手洗い」や「普段はそこまで意識しない消毒」などを徹底するとなれば、常在細菌や皮脂などによって保護されている私達の手は、どんどん無防備な状態にさらされることになります。

手が荒れてしまっては意味がありません。

また、「アルコール」だけが消毒ではありません。

イソジンに使われる茶褐色の「ポビドンヨード」や、殺菌力はエタノールよりも劣りますが「クロルヘキシジン」「ベンザルコニウム塩化物」といった消毒もあります。

*ちなみに、アルコール消毒のエタノールがアレルギーでダメな場合は、エタノールと同等の殺菌力がある「イソプロパノール」がありますが、刺激がやや強いため手荒れがしやすい。

「自分にあった手荒れ対策」を、見つけていく必要があります。


参考

東京医療保健大学:皮膚の常在細菌について
https://www.thcu.ac.jp/research/column/detail.html?id=110

ECナビ:過敏症? 「アルコール消毒液」で手にかゆみや発疹、原因や対処法は?
https://ecnavi.jp/mainichi_news/article/6ec738b5c8197f73d560a41a0672224c/

 

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