皆さんは、「ブラックアウト」という言葉をご存じでしょうか?
ゲームの名前ではなく・・・
大規模停電のことです。
今回は、「2018年の9月6日に発生した北海道地震で実際に起こったブラックアウト」についてご紹介します。
そもそもどんな地震だったの?
北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)
北海道で統計上初めて最大震度である震度7を観測した地震です。
マグニチュードは6.7でした。
地震の震度は震度7までしかないため、どんなに強い地震がきても震度7で統一されます。そのため、次にマグニチュードをみることで地震の大きさを知ることができます。
ちなみに、阪神淡路大震災はマグニチュード7.3だったため、今回の地震はマグニチュードだけをみると、阪神淡路大震災よりも小さい地震でした。
にもかかわらず、日本で初めてとなるエリア全域におよぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生しました。
→マグニチュードについては、こちらの記事で紹介しています。
ブラックアウトは簡単に起こるの?
需要と供給
電気は、需要(電気の消費量)と供給(電気を作る量)のバランスを常に一致させる必要があります。
これを、「同時同量」といいますが、電力会社の大切な役割の一つです。
電力会社では、予測される需要(電気の消費量)に応じて発電計画を決め、発電所の稼働や出力を調整して需給バランスを保っています。
例えば、「計画停電」という言葉を聞いたことがありませんか?
関西電力のHPを確認すると、計画停電についてこのように説明されています。
「計画停電は不実施が原則」でありますが、大規模地震等による電力供給網の損壊などにより、電力需要に対して供給力が下回ることが予想されるような極めて厳しい需給状況になった際、予見できない大規模停電の発生を防ぐため、電気の使用を計画的に停止することです。
とあります。
つまり、突発的なブラックアウトを防ぐために計画的に電気を止めてしまうことです。
本来なら、ブラックアウトは起こらずにあくまでも、電力会社が電気の需要と供給をコントロールすることができるはずでした・・・
チェックポイント!
電気は、需要と供給が常に一致していないと周波数(電気の品質)が乱れます。
- 供給が需要を上回る・・・周波数が上がる。
- 供給が需要を下回る・・・周波数が下がる。
そして、電気の品質が保てなくなると安全装置が作動し発電所が停止。場合によっては、大停電に陥ります。
北海道胆振東部地震では、この場合によっては起こるかもしれない大停電(ブラックアウト)が本当に発生してしまいました。
→地震大国と呼ばれる日本では、「初めてのブラックアウトだった・・・」ということから分かるように、ありえない事態だったということができるでしょう。
想定外のブラックアウトはなぜ起きたの?
そもそも北海道では、通常は50㎐の周波数の水準が維持されてきました。
→周波数は決まっていて・・・
- 東日本:50㎐
- 西日本:60㎐
これを維持しています。
ところが地震の後、需要に対する「供給バランス」が崩れ電気が足りなくなり周波数が下がり、ブラックアウトが発生しました。
つまり、供給が需要を下回ったことが原因で、ブラックアウトが発生してしまいました。
それでは、なぜ供給できなくなってしまったのでしょうか?
供給設備に何があったの?
ブラックアウトが発生したのは、北海道胆振東部地震発生直後から約17分後でした。
逆に言えば、「約17分間はブラックアウトが発生しなかった」ということになります。
電力を供給してくれる場所といえば発電所ですよね・・・
ブラックアウトが発生したメカニズムを解明するために国の関連機関に第三者委員会が設置されました。その検証委員会によると徐々に電力の供給力が失われていったことが指摘されています。
- 苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所停止(2号機・4号機)→116万KW
- 風力発電所停止→1万KW
- 水力発電所停止→43万KW
- 苫東厚真火力発電所停止(1号機)→30万KW
- ブラックアウト発生
約17分間に発電所がこのように一つずつ停止していったことで、供給が需要に追い付かなくブラックアウトが発生したようです。
さらに、それぞの発電所が停止した理由は不運(想定外)が重なったことが原因だと分かりました。
- 北海道で最も大きい発電所である苫東厚真発電所は、震源地に近かったため危機の一部が故障し停止。
- 水力発電所は、発電所とつながる複数の送電線がすべて切断され停止。
- 風力発電は、周波数が低下してしまったために停止。
つまり、「大きな発電所が止まったからブラックアウトになった」わけではなく、それぞれの発電所が異なる理由で停止したために起こったと結論付けられました。
それでは、肝心の復旧はスムーズに進んだのでしょうか?
2日で99%が復旧!?
地震発生直後は、最大約295万戸が停電。
ですが、地震発生後約2日(約50時間後)には、約99%を停電から復旧させました。
これまでの、台風などの自然災害からの復旧にかかった時間を考えてもかなり早く復旧作業が進んだことが分かります。
- 西日本豪雨・・・最大約8万戸(約4日→約100時間後に99%解消)
- 台風21号 ・・・最大約240万戸(約5日→約120時間後に99%解消)
- 台風24号 ・・・最大約180万戸(約3日→約70時間後に99%解消)
このように、復旧するまでの時間をみるとかなり短いことが分かります。
最後に
今回は、日本で初めて発生したブラックアウトの原因と復旧するまでにかかった時間について取り上げました。
少なくとも、今回の地震ではたとえブラックアウトが発生したとしても、「何日も停電が続く・・・」ということはありませんでした。
ですが、地震の規模が大きくなればなるほど、破壊される範囲が大きくなるため次に発生する地震は約17分という時間もなくブラックアウトが地震直後に発生するかもしれません。
そして、「復旧までにどれだけの時間が必要になるのか?」についても、予想が付かないことは言うまでもないでしょう。
次回は、「ブラックアウトが発生すると何が起こるのか?」についてご紹介します。
参考
経済産業省 資源エネルギー庁
→https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html
関西電力
→https://www.kepco.co.jp/energy_supply/supply/denkiyoho/keikakuteiden.html
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