皆さんは、「火災」と聞くとどんな原因を思い浮かべますか?
総務省消防庁によれば、平成30年(1月~12月)に発生した総出火件数は、37,981件もありましたがそれでも前年(平成29年)と比較すると、1,392件も減少しているようです・・・
出火原因別では、このようになっています。
- たばこ(3,414件)
- たき火(3,095件)
- こんろ(2,852件)
- 放火(2,784件)
- 放火の疑い(1,977件)
未だに、「たばこ」による火災が多いことも驚きですが、農作業の時期は「たき火」による火災が増えています。
最も衝撃的な火災の原因は、「放火の疑い」も合わせれば「放火」が一番多いことではないでしょうか・・・
さて、そんな火災ですが、まるで理科の実験のような火災まで引き起こされることがあります。
今回は、珍しい火災「収れん火災」についてご紹介します。
「収れん火災」は珍しい?
そもそも、「収れん」というのは一つにまとめるという意味です。weblioで翻訳してみると、「Burning glass」。
→直訳すると、「燃えるガラス」となります。
さて、ここで集めているものは「太陽光」です。
つまり、太陽光が身近な日用品などに反射・屈折し、一点に集中した太陽光が、可燃物を発火させることで発生する火災です。
よく例として使われますが、小学校の理科の実験で、虫眼鏡で光りを集めて紙を焦がす実験をしたことはありませんか?
私の友人は、アリなどの虫を焦がしていましたが・・・
ですが、収れん火災の原因はなにも虫眼鏡だけではありません。
収れん火災の原因になる日用品とは?
- 水を入れたペットボトルやガラスの花瓶
- ステンレス製のボウル
- 金魚鉢
- ガラスに貼り付けるタイプの透明な吸盤(役所など、ガラス板にポスターなどを貼るときに便利)
- 眼鏡・凸面鏡・ルーペ
- 水晶玉
→車やバイクのアルミホイールが原因になることもあります。
つまり、誰もが「収れん火災」を引き起こすかもしれない、日用品を持っていることになります。
ですが、冒頭でお伝えしたように火災原因は、放火・タバコ・たき火が多くなっています。
実際、全国的にも収れん火災の発生件数は少なく、例えば神戸市内では数年間で1件、発生する程度です。
ただし、地域によって状況は異なります。
東京都の収れん火災
東京消防庁の報告より
- 2006年~2015年までの10年間で、東京で発生した「収れん火災」は44件。
- 1月と11月がそれぞれ8件と最も多かった。
- 出火時間:10時台~15時台が多い。(日射しが強く日の傾いている10時台と13時台が最も多かった)
つまり、東京都では平均すると年間約4件「収れん火災」が発生していたことになります。それでも少ないとは思いますが・・・
また、季節を見ると冬場に多いことが分かります。(通年を通して注意は必要)
これは、冬場の方が乾燥しやすく、また冬場は太陽の高度が低く部屋の奥まで光が差し込むためです。
それでは、なぜ収れん火災は少ないのでしょうか?
収れん火災の条件とは?
- 太陽の位置
- 気象条件
- 収れん火災を引き起こす物体の向き
- 可燃物の位置
など、全ての条件がそろう必要があります。
つまり、偶発的に引き起こされる特異な火災といえます。
収れん火災は防げるが・・・
収れん火災は、太陽光が集束することで発生するため、例えば屋内なら外出時はカーテンをしっかり閉めれば防ぐことができます。
ですが、特に一人暮らしの人は、ベランダのカーテンの隙間から日が差して鏡に反射して・・・なんてこともありえます。
平成28年11月、和歌山市内の民家で、座布団が焼損する事例がありました。
焼損した座布団の近くには卓上鏡が置いてあり、カーテンの隙間から入ってきた太陽光をこの鏡が反射させ、座布団に照射。
その結果、火災が発生しました。
つまり、特に外出時は窓を閉めてカーテンもしっかり閉めないと、収れん火災が発生する可能性があります。
この事例では、在宅していた家人がすぐに発見して初期消火をしたことから、火災にはなりませんでした。
「光を集束する物」と言われると、以外にたくさんあります。
そもそも、車などのホイールなどまで入れられたら、想定外の出火原因はいくらでも引き起こされそうですよね。
例えば、梅酒用のガラス瓶が発生原因になったこともあります・・・
出火原因としては確かに少ないですが、実際に毎年どこかで発生しているため無視できない火災原因の1つでもあります。
最後に
収れん火災は、確かに細かい条件を揃える必要があります。
ただ、例えば水の入ったペットボトルをベランドなどに置いていれば、いつかは火災が発生するかもしれません。
実際、共同住宅の7階ベランダに置いていたダンボールが焼損した事例がありました。
原因は、ダンボールの上に置かれていたウォーターサーバー用ボトルに太陽光が差し込み、収れんによりダンボールで焦点を結び出火したことが原因でした。
焦げくさい臭いで近隣住居者が気付いたため事なきをえましたが、一人暮らしの室内なら気付くのがもっと遅れていたでしょう。
収れん火災は、いつ起こるかわかりません。
もしも、仕事から帰って家の中が焦げくさかったら、太陽光の収れんにより、なにかが焦げたのかもしれません。その場合、収れん火災の条件はそろっていることになります。
危険な物は、窓辺に近づけないようにして下さい。
ちなみに、収れん火災の対策は、事例を知らないと想定外の出来事が多すぎて対策のとりようがありません。
今回、紹介している事例はごく一部です。まずは、事例を知る所から初めて見てはいかがでしょうか?
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