トリアージは災害医療の第一歩! 「選別」のやり方と優先度はどうなっている?

 

皆さんは、「トリアージ」という言葉をご存じでしょうか?

トリアージは、震災時など多数の傷病者が発生したときに、傷病の緊急度や重症度に応じて治療の優先を決めるために行なわれます。

今回は、「医療の第一歩:トリアージ」についてご紹介します。

 

「トリアージ」ってそもそもなに?

トリアージ(triage)の由来は、フランス語の「trier」の名詞形です。そもそもは、「収穫されたコーヒー豆やブドウを選別する際、また商人が羊毛を品質別に選り分けるときに使った言葉」とされています。

つまり、もともと「選別する」という意味があったことが分かります。

さて、冒頭でお伝えしたように今回紹介する「トリアージ」は、治療者の優先度を決定されるために実施される「選別」のことをいいます。


例えば、多数の傷病者が発生した際に救命救急方式として使われ利用されます。

→傷病者の脈拍・自発呼吸の状況(バイタルサイン)から、救命の順序(緊急度)を定められた手順(START法)で決定され、緊急度の高い傷病者から救助が行なわれることになります。

*トリアージは、災害時だけでなく、日常の救急外来や初診受付・救急現場・電話相談など幅広く利用されています。

 

トリアージの判定分類

  • 黒色:死亡もしくは救命不可能。
  • 赤色:生命に関わる重篤な状態。
  • 黄色:生命に関わる重篤な状態ではないが、搬送の必要である。
  • 緑色:救急での搬送の必要がない。

つまり、緑:一番軽度ということになります。

それでは、トリアージ判定により優先順位はどのように判断されるのでしょうか?

 

トリアージの実施基準

第1順位(最優先治療群ー重症群):赤色

→生命を救うために、直ちに処置が必要。

*窒息・多量の出血・ショック等の危険があるもの。

 

第2順位(待機的治療群ー中等症群):黄色

→多少治療時間が遅れても、生命には危険がないもの。
→基本的に、バイタルサインが安定しているもの。

*全身症状は比較的安定しているが、脊髄損傷・脱臼・中等度熱傷など入院が必要な状態。

 

第3順位(保留群:軽症群):緑色

→上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としないもの。

*四肢骨折・脱臼・打撲・捻挫など外来処置で可能な状態。

 

第4順位(無呼吸群と死亡群):黒色

  • 無呼吸群:起動を確保しても呼吸がないもの。
  • 死亡群:既に死亡しているもの。明らかに即死状態のもの。心肺蘇生を施しても、蘇生の可能性のないもの。

→圧迫・窒息・高度脳損傷などにより心肺停止状態の傷病者。

このように、トリアージにより治療の優先度が判定され、搬送順位が決定されることになります。

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トリアージはどうやって使われるの?

治療するための優先順位を決定するトリアージは、「トリアージタッグ」と呼ばれる水に強い紙が使われています。

→「トリアージタッグ」については、こちらの東京都保険局のHPから確認することができます。

さて、このトリアージタッグは、「名前」や「住所」・「トリアージの実施月日や時刻」といった基本事項を記入し、トリアージ区分欄の「O(黒) Ⅰ(赤) Ⅱ(黄) Ⅲ(緑)」のいずれかを⚪で囲み、該当する区分が一番下になるように切り離します。

O

こういった順番でトリアージが並んでおり、対応するステージが一番下にくるように切り離していきます。つまり、状態が悪化していくことでO(黒)に近づいていくことになります。

ただし、あくまでも紙媒体であるため、何度も確認する必要があり、何度もSTART法により傷病者の状態を確認するなど、さまざまな問題が指摘されています。

 

トリアージを決める「START法」ってどうやって使われるの?

①自分で歩行できるかどうか。

→歩行できれば、「負傷があるか、具合が悪いかどうか」:なにもなければ「無傷」。

→           〃             :ある場合は「Ⅲ:緑」

 

②歩けない傷病者には呼吸を確認。

→呼吸がなければ気道確保。:呼吸がなければ「O:黒」

 

③「1.呼吸」があれば「2..脈拍数」・「3.意識状態」の順に評価し、異常があると判断した時点で「Ⅰ:赤」と評価されます。

→呼吸に異常があれば直ちに「Ⅰ:赤」と評価され、脈拍数や意識状態は確認しなくてもいいとされています。

 

④呼吸・循環(脈拍)は問題なく、意識状態にも異常がない。ただし、自力で歩行することができない傷病者が「Ⅱ:黄」と評価されます。

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トリアージを行なうたびに情報は記載されていきますが、途中で傷病者の状態が悪くなった場合はその区分までさらに切り離していきます。

逆に、状態が軽くなった場合は新しいトリアージタッグ(2枚目)をつけ、1枚目には×を付けます。

*ちなみに、トリアージタッグを付ける部位は決まっていて原則、右手首間接部につけられます。ただし、その部位が負傷している場合は、左手首間接部・右足関節部・左足関節部・首といった具合に取付ける部位は変わります。

 

最後に

トリアージによる選別は、多数の傷病者が効率的に医療を受けるための第1歩です。

運ばれる(治療を受ける)順番は、→黒の順番になります。

わりきれるものではありませんが、医療現場では1人でも多く救うために優先順位をなによりも重んじた行動が要求されます。

静岡市静岡医師会のHPに災害対策が紹介されていますが、その中で被災者が「してはいけない行動」として、5つの禁忌が示されています。

 

~5つのしては行けない行動~

1.走行中の救急車を停めるような行為。

→すでに、指令に基づいて移動中のため、止めても自分や家族の搬送は絶対しませんので、速やかに通して下さい。

 

2.歩いている医師を呼び止めて、治療を依頼する行為

→全ての医師は救護所で医療活動をすることになっています。往診のような医療行為は一切いたしません。救護所に行ってトリアージを受けて下さい。

 

3.診療所に行き、チャイムを鳴らす、ノックする等の行為

→安定期に入るまでは診療所での治療は行ないません。医師はいない可能性が高いので医師の家族がつらい思いをします。医師も被災者であることをご理解下さい。

 

4.薬局に行って薬の処方を求める行為

処方箋がないと処方できない薬剤は、医師の指示がなければ薬剤師は薬を出すことはできません。救護所で少しは対応ができますのでそこで相談しましょう。

 

5.医師会災害本部のアマチュア無線の妨害行為

災害時は医師会災害対策本部と救護所や病院との間でデジタルアマチュア無線による通信で情報交換が行なわれます。静岡医師会員のみが利用する大事な通信ですので、割り込んで妨害をしたり、医療に関する相談や治療を要求する行為はご遠慮下さい。

Maklay62 / Pixabay

このように、5つのしてはいけない行動が示されています。

つまり、私達が被災したときに医療を受けるためには、救急車を止めることでも・診療所へ行くことでもありません。

移動できるのなら、少しでも速く救護所へ行って、トリアージを受けること。そして、相談場所は救護施設になります。

どうしても気持ちが先走ることになると思いますが、知っているかどうかで被災後の行動が変わってきます。最低限の知識として、とりあえずまずは頭で理解しておく必要があるのではないでしょうか。

次回は、「トリアージの難点を改善するための取組み、自動トリアージシステム」についてご紹介します。


参考

東京都保健福祉局:トリアージ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/saigai/triage.html

看護roo!:トリアージ(START法)|知っておきたい臨床で使う指標[9]
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/3539

静岡市静岡医師会:しては行けない行動
https://shizuoka-city-med.or.jp/disaster/not/

 

 

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