その服薬ちょっと待って! PTP包装の誤飲とは!?

 

今回は、「PTP包装の誤飲」の話しをしたいと思います。

新型コロナウイルスがまだまだ余談を許さない状態ですが、体調を崩して薬を服用するときに注意しないといけないことがあります。

それが、PTP包装の誤飲です。

今回は、「高齢者に多いPTP包装の誤飲」についてご紹介します。

 

「PTP包装」ってなに?

PTP包装というのは、PTP(press through pack:プレススルーパック)のことで、錠剤の包装形態の一つです。

1960年代から広く使用されるようになり、私が子どもの頃は1錠ずつ切り離して服薬していました。

                                         https://pixabay.com/ja/users/pexels-2286921/

基本的には、上の写真のように上面のカバーは透明になっていることから、未開封の状態でも錠剤本体を直視できるようになっています。

→ちなみに、吸湿性を持つ錠剤は不透明な防湿シートで包装されているため、直視はできない使用になっています。

さて、このPTP包装ですが以前から誤飲が問題になっています。

 

PTP包装を誤飲?

「誤飲」というのは、食べ物以外の物を誤って口から摂取することを言います。誤飲の多くは3歳未満の乳幼児に見られますが、認知症のある高齢者や精神疾患のある成人にも見られます。

さて、それではそもそも高齢者にどれだけの誤飲事故が発生していると思いますか?

消費者庁によると、医療機関ネットワーク事業を通じて65歳以上の高齢者が食品以外のものを誤飲・誤食したという事故情報は、2010年12月~2019年6月までの約10年間で318件寄せられています。

年齢が上がるにつれて、女性の割合が増えているようです。


さて、「医薬品の包装」による誤飲は116件で、その内PTPシートが原因だった事故は83件でした。つまり、PTP包装以外の医薬品の包装による誤飲は33件だったことになります。

→「医薬品の包装」だけで見ると、PTP包装が「その他の医薬品の包装」の誤飲よりも約2.5倍多かったことになります。

さらに、誤飲全体(318件)でみるとその約4割がPTP包装による誤飲だったことになります。こういったことから、高齢者の誤飲で最も多い製品はPTP包装であることが分かります。

*平均すると毎年8件発生していることになるが、報告がない物も含めればもっと多い可能性が高い。

それでは、PTP包装を誤飲してしまうと何が問題なのでしょうか?

 

PTP包装で出血!?

基本的には、PTP包装を飲み込んだとしてもそのまま便と一緒に排出されていきます。

ただ、そもそもPTP包装は角が尖っているため、誤飲すると胃まで到達せずに食道に引っかかることや、胃腸に穴が開いてしうといった場合があります。

そのため、誤飲した場合はすぐに取り除く必要があります。取り除かないと、例えば以下の事例のようなことが発生してしまいます。

【事例1】
夕食後、内服薬を包装のまま誤飲した。これまで包装のままを誤飲したことはなかった。普段は薬ケースに朝・昼・夕と薬剤包装(PTP シート)のまま分割して整理しており、いつもケースから取り出した後で包装を開いて内服している。本日は既に包装を開けたと誤解してしまった。食道と胃の接合部付近に PTP シートを発見し、回収した。下部食道から裂けた傷があり、出血していた。
(平成 26 年7月、70 歳代女性、要入院、中等症)

【事例2】
薬を内服した後に包装を洋服のポケットに入れていた。少し経って、薬を飲んでいないと勘違いし、薬の包装を誤飲した。前胸部にチカチカとする痛みがあり、受診。
内視鏡にて、食道にあった薬の包装を2個除去した。食道に軽度の切り傷あり。
(平成 25 年1月、70 歳代女性、要通院、軽症)

→「誤飲時」や「摘出時」に、傷つけてしまう可能性があります。

ただ、認知症の高齢者の場合は誤飲しても気付けないことがほとんどのため、多くの場合は腹痛等の症状が出てから病院へいくことになります。

 

 

PTP包装の誤飲を放置してしまうことによる危険

  1. 腸などの消化管を突き破った場合(穿孔:せんこう→穴が開くこと)は、腹膜炎を引き起こす。
  2. 大腸が穿孔すれば、腹腔内に便汁が流れだし敗血症などの合併症を引き起こす。

逆に言えば、PTP包装を仮に誤飲したとしても食道を無事に通過し、その先の器官にも引っかかることなく通過すれば便として排出されることになります。

ちなみに、誤飲して放置したとしてもPTP包装の成分は特に害はありません。あくまでもポイントは、「どこにも引っかからずに便と一緒に排出されるかどうか?」です。

当然、PTP包装を自力で取り出すことは難しいですし、仮に検査のためにX線写真を撮ったとしても、PTP包装は写りにくいため、見過ごされてしまう可能性もあります。

それでは、PTP包装に対してこれまで何の対処もしてこなかったのでしょうか?

 

PTP包装対策とは?

そもそも、1996年3月には日本製薬団体連合会から加盟団体への自主申し合わせがなされ・・・

  1. PTP包装にミシン目を入れる場合は横または縦の一方向のみにする
  2. PTP包装の裏面には薬の出し方を画像付きで説明する
  3. 適用上の注意にPTP誤飲の危険性を記載する

こういったことが、決められました。

ただ、服用する側からすれば切り離した方が使いやすいため、ハサミで1錠ずつ切り離してしまい、結局PTP包装の誤飲が今も後を絶ちません。

そのため、その時(朝・昼・夕など)に服薬する薬をそれぞれひとまめにする「一包化」による処方もされています。

ただし、「吸湿性がある薬」や「光に弱い薬」は、PTPから出して保存することができないため、そもそも一包化することができません。

PTP包装には、「薬が大気に触れることを防ぐ効果(吸湿予防)」や「紫外線などによる変質を防ぐ効果」、「清潔な状態に保つ効果」そして、「破損を防ぐ効果」があります。

 

これからのPTP包装とは?

PTPの誤飲対策として、PTP用樹脂シートメーカーでは様々な研究が進められています。その中でも、トップシェアのメーカーの一つに「住友ベークライト株式会社」があります。

住友ベークライト株式会社は、苦みや辛みを付与したフィルムの開発だけでなく、それでも誤飲した場合の対策として、内臓が傷付きにくい柔らかいシートをすでに開発しています。

ただし、商品化するにはGMP(医薬品の製造・品質管理基準)に適合する必要があります。

→GMPは、薬機法の中で「医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理に関する基準」として定められています。

*厚生労働大臣の許可・認可を得る必要がある。

このように、少しずつ技術革新が進んでいます。

 

最後に

PTP包装は、約60年前から使われており少しずつ工夫されながら現在に至ります。ただ、未だに誤飲事故はなくなっていません。

技術革新により新しい物が開発されていますが、市場に出回るにはもうしばらく時間がかかりそうです。そして、誤飲は高齢者だけでなく3歳未満の子ども達にも注意が必要です。

PTP包装は、1つずつにバラさないように厚生労働省でも注意喚起がなされています。PTP包装の誤飲はくれぐれもご注意下さい。

 

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