コインパーキングも景品表示法の対象? ~勘違いしやすい価格表示~

 

前回、コインパーキングの料金体系が分かりにくいことを紹介しました。

ただ、これは以前から指摘されていたことでもあります。

そして、2017年12月15日には消費者庁が「景品表示法」の考え方も明らかにしています。

今回は、「コインパーキングと景品表示法」についてご紹介します。

 

そもそも「景品表示法」ってなに?

以前、景品表示法については「ステマ」の記事でも紹介しています。

 

「ステマと優良誤認」については、こちらの記事で紹介しています。

「ステマ」で優良誤認? 景品表示法で違法になる場合とは!?

 

さて、そもそも景品表示法の目的は『合理的な選択を阻害する恐れがある行為を「制限」・「禁止」することで、消費者の利益を守ること』が目的です。

単純に、「缶ジュースを1本買ったら新品のプレステ5が付いてくる!」なんて商品があったとします。

仮にジュース1本が1万円や2万円だったとしても、消費者はプレステ5というおまけがあるため、消費者は得することになるでしょう。

ですが、これは違法です。

 

なぜなら、そもそも景品類の最高額は決められているためです。

上記の例のように、商品やサービスを購入した場合だけでなく、来店した人などにもれなく提供される景品類のことを「総付景品(そうづけけいひん)」と呼びますが、最高額は以下のようになっています。

  • 1000未満の取引き:最高額200円
  • 1,000円以上の取引き:取引き価額の10分の2

例えば、3万円の化粧品に付属できる景品の最高額は・・・

→30,000✕20%(0.2)=6,000円

ちなみに、これが「くじなどの懸賞」だった場合は5,000円未満でも取引き価額の20倍が最高額になります。


さて、そもそも「景品」といえば粗品・オマケ・賞品などのことをいいますよね。

景品表示では、「景品」として以下の4つが明記されています。

①顧客を誘引するための手段として
②事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
③取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益
④内閣総理大臣が指定するもの

さて、この4つ全てが当てはまれば「景品表示法の対象になる景品」となります。

とはいえ、対象にならない例外があります。

それが、「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益は含まないことです。


つまり、「値引き」や「アフターサービス」は経済上の利益にならなければ景品表示法の対象外ということです。

→「経済上の利益」というのは、一部のマニアには喜ばれるものは含まれず、一般的にお金を払ってでも手に入れたい物のこと。

冒頭で例にだしたプレステ5は、「皆が欲しがる」と考えられるため「経済上の利益」。言うなれば、現実的にお金に換算できる物に当てはまるでしょう。

それでは、「内閣総理大臣が指定している景品」とはなんなのでしょうか?

 

内閣総理大臣が指定している「景品」とは?

  • 物品及び土地、建物その他の工作物
  • 金銭、金券、預金証書、当選金付き証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
  • きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
  • 便益、労務その他の役務

つまり、「物品及び土地、建物その他の工作物」が景品表示法の景品に含まれていることになることから、コインパーキングに表示されている看板も、景品表示法の規制対象になることが十分に考えられます。

後述しますが、事実として消費者庁だけでなく千葉県など自治体も、コインパーキングの料金看板の表示の適正化について市民に対して注意喚起をおこなっています。

そして、景品表示法では不当な表示を禁止させています。

 

不当な表示の禁止!

品質や価格などは、私やあなたが商品やサービスを選ぶ重要な基準になりますよね。消費者なら、同じサービスなら少しでも安い方を選択するのではないでしょうか?

ただ、それを判断するためにはその表示が正しく、分かりやすいことが大前提です。

ですが、現実問題として実際よりも「優良」・「有利」と見せかける表示があれば消費者は誤解したり、ひどいときには騙されたりすることになります。

 

こういった表示を、景品表示法では「優良誤認表示」・「有利誤認表示」として禁止しています。

  • 優良誤認表示:商品の品質や規格などについての不当表示を禁止。
  • 有利誤認表示:商品の価格や取引条件に関する不当表示を禁止。

→さらに不当表示には、「内閣総理大臣が指定するもの(告示):6つの特定の商品やサービスについて、紛らわしい表示や正しい判断を困難にさせる表示を内閣総理大臣が特に指定して禁止」この3つがあります。

それでは、コインパーキングの不当表示として注意喚起がなされている表示には、どういったものがあるのでしょうか?

 

消費者庁による注意喚起とは?

大前提として消費者庁も、「時間貸し駐車場の料金表示と景品表示法上のトラブル」があることを認識しています。

というのも、「特にトラブルが多い表示」として以下の2つまで指摘されているためです。

  • 最大料金表示
  • 最大料金表示の適用条件

つまり、「駐車場料金」という取引条件に関する有意誤認表示がないかがポイントになります。

そもそも、コインパーキングの料金設定は多種多様です。

 

コインパーキングの料金設定例

  • 1時間や30分など、駐車時間当たりの単価料金が設定されている。
  • 駐車24時間の最大料金
  • 夜間に駐車したときの最大料金
  • 平日や昼間の最大料金

など、条件は様々です。

さらに、例えば「24時間最大料金800円!」とあったとしても、適応されるのは1日だけで、2日目からは30分/200円などが加算される場合があります。

→これがいわゆる、「最大料金が繰り返し適用されない状態」(駐車場使用者に誤認させる表示)です。

コインパーキングに書かれている適応条件に自分が当てはまるかは、確認が必要になります。

 

それぞれの取組み

消費者庁では、「時間貸し駐車場の料金表示について」でこのように示されています。

時間貸し駐車場の料金の適用は複雑な場合があり、利用する際は料金表示をよく確認しましょう。特に、最大料金が設定されている場合、その繰り返しがあるかを確認し、よく分からないときには、看板等に記載されている駐車場の連絡先に問い合わせてみるようにしましょう。

とあります。

つまり、「駐車場利用者自身が料金をしっかり確認して、その表示に対して誤解しないようにしましょう!」とあります・・・

消費者に対して間違えないように呼びかけている状態。

ですが、千葉県のホームページでは2018年にコインパーキングの料金看板の表示のて適正化についてが発表されています。

 千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県及び静岡県の五都県は、コインパーキングに設置されている料金看板の表示について合同で調査したところ、一見しただけでは実際の利用条件を把握することが難しい表示が多数見受けられました。

 このような表示は、利用者の受け止め方によっては予想よりも高額な請求がされることとなり、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)で禁止する誤認を招く表示に該当するおそれがあります。

 このため、関係業界団体に対して、本日、コインパーキングの料金看板の表示の適正化に向けて取り組むよう要望しました。


このような取組が県のホームページに掲載されています。

つまり、自治体がすでに動いている案件です。

というのも、「景品表示法違反被疑事件の調査の手順」は、以下のような仕組みになっているためです。

景品表示法違反被疑事件の調査の手順

参考:消費者庁

 

このように、「公正取引員会」・「消費者庁」・「都道府県県知事」が、外部からの情報提供などにより調査を実施することができます。

ただし、「指導」や「措置命令」ができるのは「消費者庁」「都道府県知事」ということになります。

結果だけをいうなら、「国民生活センター」や「都道府県」などでは、すでにさまざまな外部からの情報提供があることになります。

消費者庁としても、この問題について把握しているからこそ、「時間貸し駐車場の料金表示について」を公表したのでしょう。

ただ、コインパーキングでのややこしい表示があることは認めているものの、「あくまでも消費者が気をつけるべきこと」として、消費者庁としては認識されているようです。

それでは、最後に罰則について見ていきましょう。

 

景品表示法による罰則は?

景品表示法

1. 第七条第一項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2. 前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。

そもそも、調査の結果、違反行為が認められた場合、消費者庁は当該行為を行っている事業者に対して・・・

  • 不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除
  • 再発防止策の実施
  • 今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」

こういったことが行なわれます。

さらに、違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られることになっています。

ちなみに、事業者が不当表示をする行為をした場合は、景品表示法第5条第3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付が命じられます(課徴金納付命令)。

ただ、現状では表示をしっかり確認してから駐車するしかないようです。

 

最後に

景品表示法の罰則は確かに重たいことに加え、事例から分かるように情報提供はたくさんされています。

ですが、現状では「料金を勘違いした駐車上利用者の自己責任」になりそうです。

ただ、困った時は国民生活センター(188)や、駐車場に書かれている連絡先に連絡することが勧められています。

そもそも運転中に、コインパーキングの料金設定を全て瞬時に確認してから入庫することはほぼ不可能でしょう。

できれば、到着予定周辺のコインパーキングをあらかじめ調べてから外出することをお勧めします。

特に、長時間駐車する場合はご注意下さい。


参考

消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/premium/#q1

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/

 

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