「駐車場内のトラブルは一切責任・・・」って効果があるの?

 

皆さんは、車を運転されますか?

スーパーなどの駐車場に車を駐車すると、駐車券や駐車場の案内などに「駐車場内での事故は一切責任を負いません」と書かれているのではないでしょうか?

ただ、こんな一文があると「駐車場で何があるの?助けてくれないの?」と不安になりませんか?

今回は、「駐車場での事故と法律・本当に駐車場の管理者に責任はないの?」についてご紹介します。

 

そもそも駐車場内での事故は多いの?

少し古いデータになりますが、「H25.5日本損害保険協会東北支部モニタリング調査結果」によると車両事故の約30%は駐車場内で発生していることになります。

ただこれは、「昔の話し」とはいいきれません。

私も、毎日のように車を運転しますが「食品スーパー」「マンションの月極駐車場」など、その時々によっていくつかの駐車場に車を駐車します。

私自身は、駐車場内で事故にあったことも、目撃したこともありません。

ただ、駐車場内で「車の隙間から子どもなど買い物客が飛び出し」てきたり、「逆送してくる車」があったりは日常茶飯時です。

また、無事に車を駐車できたとしても大きな車が駐車場内の人を避けながら、無理矢理駐車場内の通路に入ってくることもあります。

あくまでも、これらは私1人だけの経験則ではありますが、買い物に行くことがあれば駐車場内でのヒヤリハットを目撃したことがある人は、多いのではないでしょうか?

それでは、そんな駐車場内での事故はどういった法律が関係してくるのでしょうか?

 

駐車場内での事故は誰の責任?

実際、冒頭でお伝えしたように「駐車場内での事故や窃盗等は一切責任を負いません」といった書かれた駐車券や看板をよく目にします。

ただ、これが本当なら駐車場内での事故などは「全て自己責任!」ということになります。

つまり、「事故などトラブルが発生したら当事者同士で解決して!」という意味になりますよね。

さて、車に関する事故で気になる法律といえば、道路交通法ではないでしょうか?

 

道路交通法は適用されないの?

事故といえば、誰もが知っている「道路交通法」を思い浮かべると思います。

わたしの場合は、高速道路を115kmで走行中にスピード違反で捕まった苦い経験があります。

 

そもそも、道路交通法は・・・

第一条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

とあります。

つまり、「道路」に駐車場が含まれている必要があります。

ところが、ここでいう「道路」は・・・

  • 高速自動車国道
  • 国道
  • 都道府県道
  • 市町村道

のことで、一般交通の用に使われるものが「道路」とされています。


つまり、道路交通法で定められている「道路」とは、あくまでも通行を主な目的としている点です。

そのため、残念ながら「通行」ではなく「自動車を止めて人が乗降する」ことを目的とした敷地(駐車場)は、道交法の「道路」には当たりません。

ただし、例外があります。

 

道交法が適用される例外とは?

実は、道路交通法では「一般交通の用に供するその他の場所」が道路に含まれています。

さらに、最高裁でも「たとえ、私有地であつても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所は、同法上の道路であると解すべき」としています。

どういうことかというと、本来なら駐車場は「公道」ではなく「私有地」に設置されているため、そもそも道路交通法が適用されることはありません。

ですが、道路交通法や判例にもあるように「一般交通の用に共する」「不特定多数の人が自由に通行できる場所」は、道路交通法が私有地であっても適応される可能性があるということです。

ややこしい言い回しになりましたが、例えば私有地の駐車場であっても、ショッピングセンターの駐車場のように・・・

「不特定多数の人が自由に通行できる場所は、道路交通法上の道路となり、交通違反に問われる可能性が十分にある!」

ということです。これは、「合理的な解釈」といえるのではないでしょうか。

*逆に言えば、「個人用の駐車場」や「月極駐車場」などでは、道路交通法が適用されない可能性が高い。

 

道路交通法が適用されなかったら?

当然、全ての駐車場がショッピングモールのように、不特定多数の人が行き交う駐車場ばかりではありませんよね。

それでは、個人や月極駐車場のように特定の人しか利用しない駐車場でトラブルがあったときはどうすればいいのでしょうか?

 

事故を取り締まるのは、道路交通法だけではない!

 

民法

民法では、「不法行為による損害賠償」が規定されています。

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

自動車賠償保障法

自動車賠償保障法は、自動車の運行によつて人の生命・身体が害された場合、損害賠償を保障する制度を確立することで、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的としています。

具体的には、「自動車損害賠償責任」が定められています。

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。

ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

このように、そもそも事故などがあったときは道路交通法が適用されないとしても「民法」や「自動車賠償保障法」により、責任を負うことになる可能性があります。

 

さらに、私道など関係なく自動車の危険運転で怪我・死亡させた場合は、「過失運転致死傷罪」に問われることになります。

間違っても、「道路交通法が適用されないから罪は軽い」とはならないため、公道と同じように駐車場内も安全運転が必須なことは、理解していただけたのではないでしょうか?

さて、ここまでは駐車場内での事故に関連する法律についてご紹介しました。

それでは、駐車場内の事故などについては、本当に駐車場の管理者の責任にならないのでしょうか?

 

駐車場内でのトラブルは自己責任?

そもそも、駐車場内で車や歩行者と接触するなどした場合に、「店舗側の責任!」と考える人は普通はいないのではないでしょうか?

ただし、駐車場内の不備が原因で事故などが引き起こされた場合はこの限りではありません。

 

駐車場内の不備とは?

  • 見通しの悪い駐車場の入口で事故が発生。
  • 照明が少なく薄暗い。
  • 「事故が多い場所」や「車通りが頻繁で危険な場所」に交通の整備員を置かない。

 

これは、消費者契約法第8条により、「事業者が義務を果たしていなかったことによって消費者に生じた損害について、賠償責任の全てを免除する注意事項はすべて無効となる」ことが定められているためです。

また、前回コインパーキングでの料金トラブルについての記事で紹介しましたが、コインパーキングの料金表示も「景品表示法」に触れる可能性があるため消費者庁や自治体が注意喚起していることを紹介しています。

 

「景品表示法」については、こちらの記事で紹介しています。

コインパーキングも景品表示法の対象? ~勘違いしやすい価格表示~

 

さて、コインパーキングなどの駐車場設備は、内閣総理大臣が定めている「景品」の1つである「土地の工作物」に当てはまります。

そんな「土地の工作物」についは、民法でもこのように定められています。

 

民法717条

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。

ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

つまり、駐車場の占有者(管理者)は何かしらの瑕疵(不備)があった場合は、占有者に賠償を責任があることが民法でも規定されています。

 

問題は、この「瑕疵」ですが、駐車場内での瑕疵についていくつか事例があります。

  • マンホールが開いていて、後輪が挟まり車体に傷。
  • 柵やフェンスの破損により車に擦った。
  • 入口が狭く、ミラーも設置されておらず追突事故が発生。
  • 車止めの位置が極端にずれていて、駐車場後方の看板に激突。
  • 小学校と併設しているが、子どもが飛び出すなどの注意喚起が行なわれていない。

こういった場合、「駐車場の設備に問題がある!」とされ、事故が発生したとき管理会社やその所有者が被害者から賠償請求される可能性があります。


つまり、「駐車場内での事故・トラブルの責任は一切負いません」という注意書きはこういった瑕疵がないことが大前提です。

と言うより、そもそもこの文言には基本的になんの効力もありません・・・

→責任を免れるための「免責事項」にならない!

その理由は、消費者契約法の第10条に書かれています。

 

 

消費者契約法

第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

→この10条により、「土地工作物の管理者責任」を定める民法717条の内容に反する看板の内容は、そもそも無効になる。

このように、駐車場内でよく見かける「事故・トラブルには一切責任を・・・」という文言は基本的に法的な効果がないことが分かっていただけたのではないでしょうか?

 

最後に

車を運転する人にとって、駐車場はなくてはなりません。

ただ、そんな駐車場は人が乗り降りする場所であるため、非常に危険な場所でもあります。

そして、私道のため道路交通法が適応されない場合があったとしても、他の法律により罰せられたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。

誰もが、被害者にも加害者にもなりたくないですよね。


それでは最後に、駐車場での過失割合の1例を紹介します。

「進入車(駐車スペースに入ろうとしている車)」「進行車」の過失割合はこのようになっています。

そもそも、駐車場は駐車することが主たる目的ですよね。そのため、進行している車は、駐車しようとしている進入車に注意して進行しなくてはいけません。

過失割合は、「進行車:進入車=80:20」が原則となっています。(絶対ではありません)

*過失割合は、どちらにより過失(事故の原因など)があったかを示す割合。

駐車場内では、どこから人や車が飛び出してくるか分かりません。十分、注意して走行・駐車して下さいね。


参考

Bambooboy株式会社:月極駐車場における管理責任について | 看板の効力や事故発生による責任の所在は?
https://theredocs.com/pm/claim/parking_trouble

売り場の安全.net:駐車場で発生する事故の対策は?店舗側への責任問題についてご紹介
https://www.royal-co.net/column/accidents-stores/accidents-parking-responsibility-problem/

麹町の弁護士による法律相談:駐車場内の交通事故における過失割合Q&A
http://kojin-n-law.jp/traffic/qa/

 

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