新型コロナウイルスとパンデミック 知っていますか?「致死率」と「死亡率」の違い

 

前回、「新型コロナウイルスと学校の対策」についてご紹介しました。

ただ、世界中で新型コロナウイルスが流行していますが、WHOは「まだパンデミックではない」と発表しています。

それでは、そもそもパンデミックについてどこまでご存じでしょうか?

今回は、「新型コロナウイルスとパンデミック」についてご紹介します。

 

→「新型コロナウイルスと学校対策」についてはこちらの記事で紹介しています。

新型コロナウイルスは学校にどう影響? ~「第一種感染症」ってなに?~

 

そもそも「パンデミック」って珍しいの?

実は、パンデミックはこれまで何度も引き起こされています。

  • 14世紀:ヨーロッパ→ペスト(黒死病)
  • 19世紀~20世紀:地域を変えながら流行→コレラ
  • 1918年~1919年:第一次世界大戦中→スペインかぜ(インフルエンザ)
  • 1968年:香港かぜ

例えば、スペイン風邪は世界人口の約50%が感染し、死者が2000万人以上(4~5千万人と言われることもある)とされています。

そう考えると、なぜまだ新型コロナウイルスがまだパンデミックに指定されていないのか見えてくるのではないではないでしょうか?

 

あらためて「パンデミック」ってなに?

パンデミック(pandemic)は、日本語では「感染爆発」「世界的流行」などと訳されます。

豆知識として、語源はギリシャ語の「パンデミア」からきています。

さて、そんなパンデミックは・・・

  • Pan(全世界的に)
  • Demic(広がる)

「病気が全世界的に広がること」=パンデミック

WHO(世界保健機構)は、流行の規模に応じて「特定の地域的な感染=エンデミック(endemic)」特定の国内や数カ国に広がった感染症=エピデミック(epidemic)と呼ばれます。

*ちなみに、エピデミックの中でも特に突発的に規模が拡大し集団で発生することをアウトブレイクと呼びます。

 

新型コロナウイルスに当てはめると?

  1. 特定の地域(中国武漢市)で感染が拡大→エンデミックが発生。
  2. 中国全土に広がり、その後中国からの観光客などが各国に滞在したことで日本を含む数カ国が危険地域に指定。→エピデミック
  3. 武漢市を含む中国全土で感染者数の増大→アウトブレイク
  4. 世界各国で感染者数が増大。死者も増加している。→パンデミックに近い状態。

しかも、現状の状態になるまで約2ヶ月程しか経過していません。今までの流れを考えると、こういった流れで感染が拡大していったことは、ほぼ間違いないでしょう。

さて、新型コロナウイルスは世界中ですでに感染が認められていますが、なぜWHOはまだパンデミックを宣言しないのでしょうか?

それには、パンデミックのフェーズが関係しています。

 

パンデミックのフェーズとは?

パンデミックフェーズの6段階

2005年のWHOにおけるインフルエンザパンデミックフェーズではこのようになっています。

パンデミックフェーズ 各フェーズの目標 追加小項目
フェーズ1(前パンデミック期)
ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、ヒトへ感染する可能性を持つ型のウイルスを動物に検出。
世界・国家・都道府県・市区町村のそれぞれのレベルで、パンデミック対策を強化する。 なし
フェーズ2(前パンデミック期)
ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、動物からヒトへ感染するリスクが高いウイルスが検出。
ヒトの感染拡大のリスクを減少させ、仮にヒト感染が起きたとしたら、迅速な検知、報告が行われる体制を整備する。 感染が見られている地域であるか、そような地域との人的交流、貿易があるか否か、まったく影響がないかに基づき、対策の細部を適宜改良する。
フェーズ3(パンデミックアラート期)
ヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、ヒトからヒトへの感染は基本的にない。
新型ウイルスを迅速に検査診断し、報告し、次の患者発生に備える。
フェーズ4(パンデミックアラート期)
ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、感染集団は小さく限られている。
隔離をはじめとした物理的な封じ込め対策を積極的に導入し、ワクチンの開発と接種などの、事前に計画し準備した感染症対策の実施に必要な時間的余裕を確保するために、最大限務める。
フェーズ5(パンデミックアラート期)
ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認され、パンデミック発生のリスクが大きな、より大きな集団発生が見られる。
フェーズ6(パンデミック期)
パンデミックが発生し、一般社会で急速に拡大している。
パンデミックの影響を最小限にとどめるためのあらゆる対策をとる。 上記以外に、パンデミックの小康状態と第2波への対策
後パンデミック期
パンデミックが発生する前の状態へ、急速に回復している。
パンデミックによる多方面への影響を評価し、計画的復興と対策の改善を実施する。 なし

さて、新型インフルエンザに対するフェーズですので、これを「新しいコロナウイルス感染」に言い換えれば分かりやすいと思います。

 

上記を簡略化

パンデミックになるまでの段階 フェーズ 発生状況
パンデミック間期 1 ヒトの感染リスクは低い
動物に新しい亜型ウイルスが存在するがヒト感染はない 2 ヒトの感染リスクはより高い
パンデミックアラート期 3 ヒトーヒト感染は無いか、または極めて限定されている。
4 ヒトーヒト感染が増加していることの証拠がある
5 かなりの数のヒトーヒトがあることの証拠がある
パンデミック期 6 効率よく持続したヒトーヒト感染が確立

それでは、上記の表に今回発生している新型コロナウイルスを当てはめて見ましょう。

 

新型コロナウイルスとパンデミック段階

1.最初に問題になった、2019年12月末の段階で新型コロナウイルスは、この時点ですでにヒトに感染しているためフェーズ3ですが、動物が特定されていなかった(今もまだ不明)

つまり、少なくとも報道で私達に知らされたのはすでにフェーズ3になってからでした。

ちなみに、厚生労働省のHPに新型コロナウイルスについて更新情報が出されるようになったのは1月20日からで、まだヒトーヒト感染は確認されていませんでした。

このように、情報が伝わるまでに約1ヶ月かかり、その間に世界中に感染を拡大していきました。

 

2.ヒトからヒトへの感染が確認されフェーズ4となり、日本でも2020年2月1日から新型コロナウイルスは「指定感染症」や「指定検疫症」に指定され、隔離政策などが始まりました。(当初は、2月7日から指定される予定でしたが前倒しされました。)

 

3.新型コロナウイルスは、「潜伏期でも感染する」という衝撃的な事実が明らかとなりました。

さらに、感染経路が分からない感染が各国で広がり、ヒトーヒト感染の拡大が深刻に。2020年2月24日WHOは、「パンデミックではない」と宣言しフェーズ5

つまり、WHOの見解では2020年2月26日時点でフェーズ6のパンデミック期である「一般社会に急速に拡大している」とはいえない状態だとしています。

*このように、新型コロナウイルスのように感染拡大が早い感染症の場合、水際対策がどんどん意味をなさなくなっていきます。

 

《日本では新型コロナウイルスの影響はどうなっているの?》

例えば、日本をみると確かに「スポーツなどの大勢の人が集まる大会」や「イベント」などは無観客試合や中止などが取り沙汰されるようになってきました。

また、テレワークを取り入れた会社の話しもありますが、まだまだ普通に通勤していますよね。

また、先程紹介したスペイン風邪は世界人口の50%が感染したことを考えると、確かにWHOが宣言したように「まだ時期尚早だ!」といえるのかもしれません。

geralt / Pixabay

 

最後に

新型コロナウイルスの致死率は、約2%であることから「致死率は低い!」と日本の報道ではなされています。

さて、それでは今回の記事でも紹介した1918年にパンデミックとなったスペイン風邪の致死率をご存じでしょうか?

実は、欧米や日本では1~2%でした。

スペイン風邪と言えば、日本では当時の人口5,400万人の約半数が罹患した感染症です。実際、内務省の1917年~1919年までの報告では、2380万人が罹患して報告では、38万9,000人が亡くなられました。

致死率:約1.6%でした。

 

《新型コロナウイルスの致死率》

一方新型コロナウイルスは、中国全体では2.2%とされていますがこの数値の信憑性は不明です。ただ、各国の死者数を鑑みると各国で比較すると、1%にも満たない国が多いのではないでしょうか?

そして、日本の報道では「約2%~3%の致死率だ!だから低い」と伝えていますよね。

ところが、致死率だけでいうなら当時日本で少なくとも報告のあった38万9,000人の死者を出したスペイン風邪よりも、致死率が高いことになります。

つまり、もしも正確に報道するなら「約100年前よりも医療が格段に医療が進歩している現代ですら、当時流行ったスペインかぜよりも高い致死率がある感染症。それが新型コロナウルスです。」と報道してもよさそうですが、そんなことをすれば本当に大変なことになるかもしれませんね・・・

勘違いしてはいけないことは、先程もお伝えしたように各国で致死率を出せばもっと低い数値になるということです。そういう意味では、中国も含めた全体の数値ではなく、自国の致死率を各国が正確に報道した方が混乱がなくいいのかもしれません。


繰り返しますが、致死率2%は低くない数値です。

さらに付け加えると、「死亡率」「致死率(致命率)」は違います。

例えば、「エボラ出血熱の致死率(致命率)は50~90%と高い」ことは、多くの方がご存じではないでしょうか?

さて、「死亡率」の場合は総人口で割りますが、「致死率(致命率)」の場合はあくまでもエボラ出血熱に感染した人の中での死者数を割っていきます。

つまり、「エボラ出血熱の死亡率が50%」と書かれていた場合、「その国の半数の人がエボラ出血熱で亡くなった」と言うことになってしまいます。

もしも、新型コロナウイルスの致死率ではなく「死亡率が上がった」という報道があれば、報道の間違いかもしくは、それだけ感染拡大や死亡者が爆発的に拡大していることになります。(もしそんな報道があれば、間違えであって欲しいですね・・・)

今後も報道には注視していきます。


参考

ニュートン・コンサルティング:パンデミック
https://www.newton-consulting.co.jp/bcmnavi/glossary/pandemic.html

総合南東北病院:パンデミック
http://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/201203/pandemic.htm

厚生労働省:新型インフルエンザ対策行動計画
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/03-03-01.pdf

東京都健康安全研究センター:日本におけるスペインかぜの精密分析
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/

横浜市:死亡率・致死率(致命率)・死亡割合について
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/hokenjoho/wadai/deathrate.html

 

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