皆さんは、「間伐」という言葉をご存じでしょうか?
登山などに行くと、木がたくさん生えていて自然を感じますよね。ですが、実は不健康な山の状態かもしれません。
今回は、そんな「世代を超える間伐」についてご紹介します。
そもそも日本にはどれだけの森林があるの?
そもそもの話しですが、日本は国土の2/3(約25,000ha)が森林になっています。
開発が進められているとはいえ、まだまだ「森林が多い!?」と感じた人もいるのではないでしょうか?
ただ、これは一概に「自然が豊富!」という意味にはなりません。なぜなら日本の森林の40%以上が人工林だからです。
それでは、まずは「人工林」と「天然林」についてご紹介します。
「人工林」と「天然林」
人工林には必須な「間伐」とは?
まず、「間伐」というのは成長に伴って込みすぎた林の立木を一部、抜き伐りすることを言います。
抜き伐り(ぬききり)とは、まさに「木を間引く」ことです。
そもそも、日本では昭和30~40年を中心に植林が実施され、人工林は約1,000万ヘクタールにもなりました。
そして、人工林は「森林の更生を人の手で行なっている森林」のことです。つまり、人が管理しないと維持できません。
「天然林」の2つの意味とは?
人工林の対になす言葉として、「天然林」が使われています。
天然林という言うのは、「人の手が一切入ってない原生林」と「伐採などにより人の手が入ったが100年~200年程、人が管理せずに天然更新のみで遷移(せんい)した状態の森林」こういった森林のことを天然林と呼びます。
そして、本当に人の手が入ったことがない原生林は日本に4%もないとされています。つまり、そもそも日本の森林のほとんどは一度は手を加えられた森林ということになります。
それでは、人工林の間伐が遅れるとどうなってしまうのでしょうか?
人工林の間伐が遅れると大変なことに・・・
「世代を超える」というリスク
現実問題として、日本の森林の所有形態は小規模・分散的な状態になっています。
さらに、長期的な林業の低迷や森林所有者の世代交代などにより、森林所有者の森林への関心が薄れてしまっています。そして、伐採した後に植林されないことも珍しくないようです。
単純な話し、突然「森林を任せる!」なんて言われたらあなたならどうしますか?
田舎から都会へ働きに出ている子どもが、「山の管理をしてくれるのか?」といえばかなり難しいのではないでしょうか・・・
それこそ、人工林に対する知識や経験どころか、生まれ育った森林に対して強い思い入れもないかもしれません。
つまり、「世代をまたぐ必要がある」と言うことは、今の時代それだけでかなりのリスクがあります。「墓じまい」が社会現象になっているように、世代間の感覚には大きな隔たりがあります。
とはいえ、自然は生き物ですから待ってはくれません。
それでは、間伐が遅れると人工林はどうなってしまうのでしょうか?
間伐が遅れると何が起こるの?
- 林内が暗くなる。
- 下層植生(かそうしょくせい)の消失。
- 表土の流出が著しい。
- 森林の水源かん養機能が低くなる。
- 幹が細長い。(もやし状の森林)
- 風雪に弱くなる。
つまり、森林として成り立たなくなります。
*栄養が足りない→地盤が形成できない→崩れやすくなる→森林崩壊。
間伐の問題点は?
経済的な問題!
日本には、たくさんの木がすでにありますが、その木を放置して海外から木を輸入している現状があります。
その理由は、ズバリ「お金」の問題なんですが・・・
日本人は、お金の話を嫌がる傾向がありますが、考えなくてはならない重要な問題です。
例えば、1本の木を育てるためには30年~50年かかります。
質問!
「木材の価格の相場は、1m²あたりいくらになるでしょうか?」
100万円?10万円?
違います。
答え.4,000円~7,000円(それ以下の場合もある)
1ヶ月の子どものお小遣いよりも、少ないかもしれません。
せっかく、木を育ててもほとんどお金にならないため、日本の木は使えない現状にあります。さらに、金銭問題の原因は他にもあります。
森林所有者がバラバラ!
冒頭でお伝えしたように、森林は小規模化しています。
日本の森林所有者の所有林の面積は、5ha以下のものが約75%も占めています。つまり、小規模の森林所有者がたくさんいるため、それぞれがバラバラに行動してしまい、想像以上に非効率な状態になっています。
→お金と労働力が分散し、結果、間伐がおろそかになっている。
それでは、国はなにも対策をしていないのでしょうか?
行政からの補助は、実はある!?
実は、間伐を行なう際は国・県・市町村など行政からの補助金が出ることもあります。
その間伐に対する補助金は、なんと70~80%にもなります。このように、かなりの金額が、補助金(税金)から拠出されています。
ですが、それでも間伐をすると赤字になってしまいます。
以前、「もやし」の製造元のこんな話しがありました。
「もやし」を丹精込めて作っても、採算がとれず廃業していく・・・
あるスーパーでは、現在(2019年12月時点)でももやしは4円で売られています。消費者は安いので迷わず購入します。ですが、価値に見合った価格ではないため供給がいつまで続くか分かりません。
つまり、どんなに需要があっても採算がとれなくてはなにもできません。
間伐された木にも同じことが言えます。例えば、間伐した木が放置される場合もあります。ただ、放置するだけでも問題が発生します。
間伐した木を放置すると虫の温床に!?
私は、山登りが好きなので本当にたまにですが、すぐに登れる山へ写真を撮りがてら山登りへ行きます。(PIXTAで写真販売をしています)
さてそんなおり、山積みにされた材木を見ることが何度かあります。
おそらく、国内では採算がとれなくなってしまった「放置された間伐材(林地残材:りんちざんざい)」だと思われます。
→林地残材にすることで、長い時間をかけて土に返すことができると言われています。
とはいえ、林地残材には穿孔虫(きくいむし)が増殖し、健康な樹木にまで害をもたらすことがあります。
また、立っている木の樹皮と形成層の部分を輪状にそぎ落として枯らせる「巻き枯らし」という方法もありますが、薬剤や処理時期を考えないと穿孔虫が発生してしまいます。
ですが、薬剤を使うにしろさらにお金がかかります。その結果、日本の林業は儲からないために衰退しています。
現在は、「木製ストロー」や「住宅」に使われるなど、少しずつ利用がされるようになっていますが、先行きはまだまだ不透明な状態です。
せっかくの資源を腐らせるだけの現状が、本当の環境問題ではないでしょうか?
最後に
最近、環境問題が叫ばれるようになりました。
それも、16歳の少女に感化されたことが一因です。
今回、私が環境問題を取り上げたのは16歳の少女に感化されたからではなく、「そもそもなぜそれができない状態にあるのか?」
それを考えるきっかけを作りたかったからです。
そもそも、地球温暖化は人間の忖度で解決できるようなことなのか?それ以前に、本当に二酸化炭素が温暖化の原因になっているのか?
そしてなぜ、研究者ではなく16歳の少女が先頭に立っているのか?
追い立てられるようにして、日本には「化石賞」なんていうレッテルが貼られてしまいました。ですが、日本の石炭火力発電は本当に環境を汚しているのでしょうか?
実は、日本の石炭火力発電は90%以上の大気汚染物質を除去している、世界トップクラスの環境技術を要しています。
そういったことを世界に知らせないまま、「石炭火力発電をしているから・・・」という1点のみをみるのはおかしな話しになります。
大切なのは、「問題の本質はなにで、どうやって科学の進歩で解決していくのか!?」です。実際、車は危険だからと無くなるどころか、もっと安全な車が作られています。近い将来、完全自動運転の車も市場に出回るようになるでしょう。
→昔は、車=「環境に悪い」というイメージがありましたが、今は「クリーン」なイメージに変わりつつあります。
つまり、イメージは技術革新により180度変わってしまうため、環境問題もイメージだけで取り組むと大惨事になりかねません。「環境ビジネス」にはせずに、科学的な根拠に基づいて一歩ずつ前進して欲しいですね。
次回は、そんな森林を守るための制度「ついに始まった森林管理制度」についてご紹介します。
参考
林野庁:間伐等の推進について
→https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/
Silba:人工林とは
→https://www.silva.or.jp/
生活110番
→https://www.seikatsu110.jp/garden/gd_felling/38909/
J power:日本の石炭発電所はクリーン
→http://www.jpower.co.jp/bs/karyoku/sekitan/sekitan_q02.html
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