普段生活をしていると、例えば道ばたにお金が落ちていたことはありませんか?
2020年2月に1,100万円以上紙幣が家具など粗大ゴミなどの中から見つかりました。発見したのは、愛知県のゴミ処理施設で、市は警察に「拾得物」として警察へ届けました。
今でも、こんなことがあるんですね・・・
今回は、「個人が落とし物を拾ったら?」についてご紹介します。
そもそも「落とし物」はどうすればいいの?
まず、落とし物を拾った人は「拾得者」となります。そして、実は落とし物には届ける期限があります。
《一般的な場所(路上など)で拾得した場合》
- 警察署・交番・駐在所等に差し出す
→拾得してから7日以内に差し出さないと、報労金を受ける権利がなくなります。
→遺失者などが判明しなかった場合の拾得物の所有権についてもなくなります。
《特定の場所(駅・デパートなど)で拾得した場合》
- 駅員など施設の管理者に差し出す。
→拾った時から24時間以内に、差し出さないと「報労金」や「所有権」がなくなります。
このように、拾った場所が特定の場所であるかどうかで届出る期限が変わります。
拾得者の権利
報労金ってなに?
「報労金」というのは、いわゆる「お礼」がもらえる権利です。つまり、落とし主に法律で規定された範囲で報労金が請求できる権利のことです。
- 落とし物価格の100分の5~100分の20以下に相当する額となります。(10万円を拾ったら5千円~2万円)
- 施設内で拾った場合には、拾得者と施設占有者が、それぞれ報労金の額の2分の1までとなります。
*落とし主に落とし物が返還された後、1ヶ月を経過するとこの請求ができなくなります。
落とし物の提出などに要した費用を請求する権利
落とし物を届出たときなどに要した費用がある場合、その費用を落とし主に請求することができます。
→落とし主に落とし物が返還されてから1ヶ月経つと、請求できなくなります。
落とし物の所有権を取得する権利
「落とし主が見つからなかったら、あなたの物になる!」ということは誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか?
これは、保管期間が3ヶ月(埋蔵物は6ヶ月)と決まっているため、この期間に落とし主が現れない場合は落とし物の所有権は拾得者になります。
つまり、先程説明した、「道路等では1週間以内・施設内などでは24時間以内」に届けなければこういった拾得者の権利がなくなると言うことです。
- 拾得者は、上記の権利について全て、または一部の権利を放棄することもできます。
- 落とし物の保管等に要した費用がある場合は、その費用を所有権を取得して引き取る方が負担することになります。→あらかじめ、一切の権利を放棄した場合は費用負担は発生しない。
とはいえ、そもそも落とし物を届出ないと犯罪になります。
遺失物横領罪
刑法第254条に「遺失物・漂流物そのほか占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料に処す」とあります。
確かに、遺失物や漂流物などはすでに持ち主が占有している状態ではありません。そのため、あなたが落とし物をネコババしたとしても、基本的には窃盗罪に問われることはありません。
ですが、少なくともあなたの所有物ではありませんよね・・・
つまり、落とし物を自由に処分する行為は「横領罪」が成立してしまうことになります。
ちなみに、刑法では「遺失物横領罪」ですが、警察から検察に送致される場合は「占有離脱物横領罪」という名前で送致されるようです。
→呼び名が違うだけで、同じ犯罪のことです。
さらに、拾得物については「遺失物法」でそもそも規定されています。
遺失物法
平成19年12月10日に遺失物法が改正されました。
改正ポイント!
- 先程紹介したように、落とし物や忘れ物の保管期間は3ヶ月ですが、改正以前は6ヶ月でした。
- 落とし物や忘れ物の情報がインターネットで公表され探しやすくなった。
- 個人情報が入った物(携帯電話・カード類など)は、落とし主の有無に関係なく所有権を取得できなくなった。
- 傘や衣類など大量・安価な物等は、2週間以内に落とし主が見つからない場合は売却できる。
- 公共交通機関や店舗など多くの落とし物・忘れ物を取り扱う事業者を対象に「特例施設占有者制度」が新設。
《特例施設占有者制度》
一定の公共交通機関及び都道府県公安委員会から指定を受けた施設の占有者(特例施設占有者)は、2週間以内に拾得物に関する事項を警察に届出たときは、その拾得物を自ら保管できるようになりました。
このように、遺失物に関する扱いが大きく変わりました!
《さまざまな罰則!》
❶6月以下の懲役または50万円以下の罰金
特例施設占有者とはいえ、遺失者(落とし主)または拾得者(拾い主)に対して利害が害されるおそれがある場合は、公安委員会がその利益を保護するために必要な指示を行いますが、その指示に違反した場合。
➋30万円以下の罰金
- 売却または廃棄の届出をせず、または虚偽の届出をして売却または処分をした者。
- 帳簿を備えず、帳簿を記載せず、もしくは虚偽の記載をし、または帳簿を保存しなかった者。
- 公安委員会の求めに応じ、保管物件に関し報告もしくは資料の提出をせずまたは虚偽の報告もしくは虚偽の資料の提出をした者。
- 帰属した個人情報関連物件の速やかな廃棄を怠った者。
このように、届けられた遺失物を適切に扱わない場合も罰則があります。
《インターネットで検索できるのは26種類!?》
- 現金
- 有価証券類
- 鞄類
- 著作品類(書籍やディスクなど)
- 袋・封筒類
- 手帳。文具類
- 財布類
- 書類・紙類
- カードケース類
- 小包・箱類
- カメラ類
- 衣類・履物類
- 時計類
- 傘類
- 眼鏡類
- 鍵類
- 電気製品類
- 生活用品類
- 携帯電話類
- 医療・化粧品類
- 貴金属類
- 食料品類
- 趣味・娯楽用品類
- 動植物類
- 証明書類
- その他
早い話し、「落とし物を拾えば基本的に届出る!」ということです。どんな物であってもネコババしてはいけません・・・
それでは、最後に警察に届けられた場合の落とし物の流れを見ていきましょう!
警察に落とし物を届けたら?
①警察に届けられた落とし物は、警察署で遺失物を探すために広告・関係機関・事業者等に対する紹介調査が行われる。
→届けられた日から3ヶ月間、警察署で保管
*ただし、傘・衣類・ハンカチ・マフラー・ネクタイ・ベルト・その他の衣類と共に身につける繊維製品または皮革製品・履物・自転車・動物については、広告の日から2週間以内に落とし主が判明しないときは売却または処分されることがあります。
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②落とし主が判明したときは、警察からその人に連絡をして返還されます。そして、返還された場合は拾い主にその旨が連絡されます。
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③落とし主がその所有権を放棄した場合、拾い主がその落とし物を受け取ることができます。
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④落とし主が判明しない場合、警察に届けられた日から3ヶ月の保管期間が経過した後の2ヶ月間、拾い主がその落とし物を受け取ることができます。
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⑤拾い主にも引き取られなかった落とし物は、所有権が都道府県に帰属し、売却または廃棄されることになります。
最後に
一生の間で、大金を拾うようなことはないでしょう。
ただ、どんな落とし物であれ、それはあなたの物ではありません。そのため、拾った物は基本的にすぐに届出る必要があります。
ちなみに、世界では落とし物を届けると「盗んだ!」と思われるケースや、そもそも警察が遺失物を預からないなど、国によってさまざまな事情があるようです。
世界的には、「落とし物は目立つところに置いて放置がスタンダード」なんていわれます。
そう考えると、日本に生まれてよかったと思います。なにより、警察や施設などでの遺失物の管理者には頭が下がる思いです。
というわけで、今回は「ネコババせずに届けましょう!」というお話でした。
参考
警視庁:落とし物検索
→https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/otoshimono/kensaku.html
改正遺失物法について
→https://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki2/KaiseiIsitsubutsuhouTop/slide0001.htm
ベリーベスト法律事務所:遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)の時効は何年?窃盗罪や背任罪との違いも解説
→https://keiji.vbest.jp/columns/property/col0173.html
群馬県警察:拾得者(落とし物を拾った方)の権利について
→https://www.police.pref.gunma.jp/keimubu/04kaikei/isitubutu/3syuutoku.kenri/page.html
愛知県警察:遺失物取扱いのしおり
→https://www.pref.aichi.jp/police/syokai/houritsu/kaikei/documents/ishitsubutsu_shiori.pdf
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