外来種の中でも侵略的な生物? 「ハヤトゲフシアリ」の危険性とは?

 

これまで、外来種について「ヒアリ」や「セアカコケグモ」について紹介してきました。

ですが、日本の外来種はこれだけではありません。

皆さんは、別名「アリ食いアリ」とも呼ばれるアリが、日本にすでに定着してしまっていることをご存じでしょうか?

今回は、「侵略的外来種:ハヤトゲフシアリ(和名)」について紹介します。

 

外来生物については、こちらの記事で紹介しています。

特定外来生物の1つ「ヒアリ(火蟻)」 ‘’fire ant‘’と呼ばれる恐怖!

知らないでは済まされない! 特定外来生物の「危険性」と「重い罰則」!?

 

「外来種」と「在来種」の違いは?

「外来種」の定義

「侵略的外来種」なんて、物騒な名前が付いていますが、それではそもそも外来種についてどこまでご存じでしょうか?

環境省では、日本の外来種対策が紹介されています。

さて、多くの人が「外来種」と聞くとまず「海外から日本に持ち込まれた生物!」と考えるのではないでしょうか?

確かに、それも間違ってはいません。ですが、外来種の定義はこのようになっています。

もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物

つまり、理由に関係なく人為的に移動させられた場合です。それでは、「在来種」という言葉を聞いたことがありませんか?

 

「在来種」の定義

「在来種」というのは、本来の分布域に生息・生育する生物のことです。

極端な例を挙げると、もともと本州以南にしか生息していなかった生物が北海道に入ってきた場合、その生物は、日本国内の話ではありますが「外来種」ということになります。

つまり、日本国内であっても、ある地域からもともといなかった地域に持ち込まれた時点で、「外来種」となります。

→「日本由来の外来種」と呼ばれる。

*ちなみに、渡り鳥や海流にのって移動する魚や植物の種などは、自然の力で移動するため外来種に当たらない。

それでは、なぜ「侵略的」なんて呼ばれるのでしょうか?

 

「侵略的外来種」ってなに?

「侵略的外来種」というのは、結果的に「地域の自然環境に影響を与え、生物多様性を脅かす恐れのあるもの」のことです。

有名な話しとしては、「ネズミとハブを退治するためだった」といわれてますが、1910年に沖縄島に最初に導入されたマングースではないでしょうか。

本来、マングースは西アジアから東南アジアにかけて分布していますが、「沖縄島で収入源のサトウキビを食い荒らすネズミ」と「農作業をする住民の命を奪うハブを退治する」ために導入されたそうです。

ところが導入した結果、マングースは在来種(島固有の希少種)を食い荒らす、侵略的外来種となってしまいました。

ちなみに、日本のどこにでもいる魚「コイ」も、本来生息していなかったアメリカでは、「侵略的な外来種だ!」といわれているそうです・・・

それでは、本題の「ハヤトゲフシアリ」についてみていきましょう。

 

いったいどんなアリなの?

別名「ブラウジングアント」と呼ばれるハヤトゲフシアリは、本来、南ヨーロッパに生息しているアリです。

ところが、すでに人為的に分布が拡大され、地中海沿岸だけでなくインドやオーストラリア、台湾など、多くの地域で生息が確認されています。

ただ、生息が確認されたグアム島では、防除が実施され根絶されています。

さて、それでは日本の現状はどのようになっているのでしょうか?

 

日本とハヤトゲフシアリ

  • 2017年:名古屋の飛鳥埠頭(あすかふとう)と鍋田埠頭(なべふとう)・東京の青海埠頭(あおみふとう)
  • 2018年:大阪のコンテナ埠頭・博多の箱崎埠頭

これらの地域で、侵入だけでなく定着が確認されています。

→「埠頭」というのは、湾口内で船をつけ、乗客の乗降や貨物の積み下ろしをする区域のことです。

そして、2019年には志布志港で侵入が確認されていました。

こういった点から・・・

意図的な輸入はないが、その生態からコンテナ等に付着して非意図的に侵入しやすい。これまでに国内で発見された 5 地域は全て港湾地域である。

環境省の資料では結論付けられています。

そして、2020年7月20日には沖縄奄美自然環境事務所で「沖縄県内でも初めて確認された!」と環境省から発表があったところです。

それでは、なぜこんなにも危険視されているのでしょうか?

 

どうして、環境省が調べるほど危険視されているの?

海外では「ブラウジングアリ」と呼ばれていますが、ブラウジングというのは「食う」という意味があります。

例えば、自分の体よりも大きな昆虫を生きたまま巣に運ぶことができ、高い繁殖能力も持ち合わせています。

さらに言えば、日本の在来種のアリとは比較にならないほど、移動スピードが速いことも知られています。

  • 凶暴性
  • 繁殖性

この2点が、このアリが警戒されている理由です。

ただし、ヒアリのように毒をもっているわけではないため、直接的な人への被害はまだ情報がないようです。

つまり、ハヤトゲフシアリの危険性はまさに本題の「侵略的外来種」に当てはまる可能性が高いため警戒されています。

→先ほど紹介したマングースのように、「生態系を食い荒らすなどして破壊していくかもしれない」と危惧されている。

 

最後に

ハヤトゲフシアリは、アリクイアリとも呼ばれていますが、日本でも防除は進められています。

ですが、残念ながら「定着」が確認されています。

定着というのは、外来種が新しい生息地で、継続的に生存可能な子孫を作ることに成功する過程のことを言います。

→基本的には何らかの理由で自然界へ逃げ出したとしても、多くは子孫を残すことができず定着することができないと考えられています。

どちらにしても、そもそもの原因は人間です。

また、「侵略的」という名前が付いていますが、本来の生息地ではごく普通の生き物として生活していました。

つまり、「たまたま運ばれた場所で大きな影響を及ぼす原因になった」ということになります。

外来種は、長い間培われてきた食物連鎖を壊す可能性があります。

また、在来種と交配することで雑種が生まれたり(遺伝的攪乱)と生態系が大きく変わり人間の生活も変わってしまうかもしれません。

アリ一つとっても、外来種が侵入すれば生態系が大きく変わる可能性があることを知っておく必要があるでしょう。

最近は、特に環境問題がブームになっていますが何が危険なのか、「イメージ」や「○○が話していたから」ではなく、自分で調べてみてはいかがでしょうか?

*「ハヤトゲフシアリ」で動画や画像検索すると、その様子を確認することができます。(「アリクイアリ」では、検索しないことをお勧めします)


参考

生活110番:実はヒアリよりも危険?新種の外来アリ・ハヤトゲフシアリについて
https://www.seikatsu110.jp/vermin/vr_ant/43646/

 

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