カビは死滅できても「カビ毒」は難しい! カビ毒の耐熱性とは?

 

皆さんは、「カビ」と言われてどのようなイメージがあるでしょうか。

カビと言えば、例えばお餅がカビにより緑色になったことはありませんか?

今回は、「想像以上に恐ろしいカビ毒の危険性」についてご紹介します。

 

「カビ毒」ってそもそもなに?

農林水産省より

『植物病原菌である「かび」や貯蔵穀物などを汚染する「かび」が産生する化学物質で、人や家畜の健康に悪影響を及ぼすもの。』とあります。

→カビ毒のことを「マイコトキシン」と呼ぶこともある。

そんなカビ毒は、100種類以上(東京都保健福祉局では、「300種類以上」となっている)が知られています。

さて、そんなカビですが食品に生えているかどうかは肉眼で確認できますよね。ところが、カビ毒が含まれているかどうかは肉眼では確認のしようがありません。

また、カビそのものなら加熱などに死滅させることができますが、カビ毒は熱に強く、通常の加工・調理で取り除くことは期待できません。

東京都保健福祉局が、カビ毒が家庭の調理で分解できるかこんな結果を報告しています。

 

「家庭の調理」と「カビ毒」

食品 調理法 カビ毒 カビ毒量(ppb)
調理前 調理後
そば 茹でる アフラトキシンB1 8.1 6.8(84.0%)
ポップコーン 炒める デオキシニバレノール 223 184(79.0%)
ハト麦 ゼアラレノン 840 740(88.1%)
押し麦 炒飯 デオキシニバレノール 264 235(89.0%)

調理後のカビ毒の残存率を見れば明らかですが、約80~90%残っています。

 

さらに、例えば茹でた場合についてこのように記載されています。

ゆでた場合では、食品に50から80%のカビ毒が残り、ゆで水には10から15%ほどが検出されます。

そして、油で炒めたり米を炊飯しても、カビ毒はほとんど減らないことが指摘されています。

このことからも、カビ毒が熱に強く一般家庭ではどうにもならないことが分かるのではないでしょうか?

それでは、カビ毒はどれだけ危険な「毒」なのでしょうか?

 

カビ毒の摂取は直接食べるだけ?

そもそも、日本でカビ毒研究が盛んになったのは黄変米事件がきっかけでした。

この事件は、第二次世界大戦後に輸入(東南ナジア・エジプト・スペインなど)した米から強い肝臓障害を引き起こすカビ毒生産菌が見つかった事件です。

さらに、1960年代には、イギリスで1ヶ月の間に10万羽以上の七面鳥が肝臓機能障害で死ぬ事故が発生し、その原因が飼料に含まれていたカビ毒だったことが明らかにされています。

ただ、「カビ毒の摂取」について考えると、カビに汚染された飼料が原因で家畜が死んでしまうことは私達にとっても無関係ではありません。

 

カビの摂取は、直接食べるだけとは限らない!?

農林水産省では、カビ毒を摂取する可能性として以下の2点が挙げられています。

  1. カビ毒に汚染された農産物や食品を食べることによる直接摂取。
  2. カビ毒に汚染された飼料を食べた家畜を経由して、カビ毒が乳や肉などの畜産物に移行した物を摂取。

つまり、カビ毒はカビの生えたお餅やパンなどから直接接種するだけではなく、カビ毒に汚染された飼料を食べた家畜を経由して私達が摂取する可能性もあります。

→家畜だけでなく、人間にもカビ毒の影響がある。

*農林水産省では、飼料に含まれるカビ毒に関して「指導基準」や「管理基準」が設定されており、カビ毒汚染の防止が進められている。

それでは、具体的にカビ毒にはどういった危険があるのでしょうか?

 

カビ毒は危険?

カビは食品に付着し、増殖する過程で様々な化学物質(代謝産物)を作り出していきます。

そして、この代謝産物のうち「ヒト」や「動物」に毒性を示すものが「カビ毒(マイコトキシン)」と呼ばれています。

 

カビ毒によって症状は様々!?

  • 肝臓・腎臓・脾臓などへの「障害」や「ガン」
  • 子宮・卵巣の障害
  • 食中毒症状(嘔吐・吐き気・下痢など)

他にも、「麦各アルカロイド」と呼ばれるカビ毒(ライ麦・大麦)の場合は、四肢の壊死や中枢神経に障害を及ぼすものまであります。

*ちなみに、汚染頻度や健康被害の点から重要なカビ毒としては、「アフラトキシン」・「Fusarium属の産生するマイコトキシン」・「パツリン」・「オクラトキシン」が国際的には認識されています。


→それぞれ、「発がん性」や「障害」が懸念されています。

「アフラトキシン」は、天然物質の中で最も発がん性が強く、また世界的に農産物への汚染が広く発生しているため、最も注意が必要なカビ毒。(ピーナッツ・トウモロコシ・唐辛子など)

→日本では、食品全般に対して例えば「アフラトキシンB1、B2、G1、G2の合計で10ppb以下」という規制値が設定されている。(「パツリン」などにも規制値は設定されている)

規定値が設定されていることからも分かるように、カビ毒は摂取すればすぐに症状が出るわけではありません。

例えば、東京保険局のQ&Aでも、こんな相談が掲載されています。

 

2014年の相談より

カビの生えた饅頭を3日前に食べましたが、カビには毒があると聞いて心配になりました。大丈夫でしょうか?

 

なぜ、カビの生えた饅頭を食べたのか分かりませんが、このように回答されています。

現在、体調を崩してなければ、今後の体調の変化について心配は要りません。ただし、カビが生えた食品は、味や食感が変わっていることがありますので、食べる前にカビに気づいた場合は、食べないことをおすすめします。

基本的には、毒性が強いアフラトキシンは熱帯や亜熱帯地方に多いカビが原因のため、日本の農産物を汚染している可能性はほとんどありません。

また、汚染された食品が国内で流通しないように検疫所では検査が行なわれています。

どちらにしても、相談にあるように「食品にカビが生えた!」ということは・・・

  • カビが付着するような衛生状況だった
  • カビが生息する湿度や温度で保存されていた

ということになります。

つまり、同じ場所に他にも食品を置いていればカビが発生している可能性があり、保管場所には向きません。

それでは最後に、そもそもカビにはどういった対策をすればいいのでしょうか?

 

カビの好む環境を作らない!

文部科学省が発表している「カビ対策マニュアル実践編」では、カビの発生しやすい環境についてこのように書かれています。

温度25度のとき、相対湿度が70パーセントだとカビは数か月で繁殖し、75パーセントを越すとその速度は急激に早まり、90パーセントではわずか2日で目に見える程度まで繁殖するといわれている

カビが、最も繁殖しやすい環境は、温度25℃以上で湿度80%以上と言われています。そのため、梅雨時は冬の5~6倍に増えることが知られています。

逆に、湿度が65%以下の場合はカビは発育できません。(発育できないだけで存在している)

先程もお伝えしたようにカビは、耐熱性があるため死滅させるさせるためには120℃以上で60~120分程度の加熱時間が必要とするため、私達ができることは湿度を調整することになります。

 

最後に

カビが原因で引き起こされる病気は様々な物があります。

  • 白癬
  • アレルギー性鼻炎、気管支喘息
  • 食中毒
  • がん

など、他にも様々な病気が引き起こされる可能性があります。

ただ、その一方で「発酵食品」や「抗生物質・酵素製剤など医療の発展」に貢献してきたカビもたくさんあります。

まさにカビは、薬にもなれば毒にもなります。


熱に強いカビ毒ですが、例えばトウモロコシの脱酸工程と呼ばれる工程で、食品添加物のアルカリ材が使用されると、大半のカビ毒が分解されることになります。

また、ナッツ類や穀類へのカビ毒の汚染は、「虫食い」や「変色」している物の汚染率が高いことがすでに分かっています。

ナッツ類が好きな人は、カビが生えている物はもちろんですが、「虫食い・苦い・未熟」な物は避けた方が無難です。

そして、カビが生えている物は絶対に食べないで下さい。

普段から私達にできることは、カビが生えないように部屋の湿度を調整して、保存場所に気をつけることです。


参考

一般財団法人 東京顕微鏡院:カビが作る毒素の話
https://www.kenko-kenbi.or.jp/science-center/foods/topics-foods/13622.html

伊藤内科・血液内科:カビは万病の元?
https://itonaika-ketsuekinaika.jp/

神奈川県衛生研究所:カビが作る毒の話
→http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/071225_news123.htm

 

 

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