抗生物質が悪影響!? ~腸内フローラと小児アレルギー~

 

先日、「腸内フローラ」についてご紹介しました。というのも、実は小児アレルギーと腸内細菌の関係性が分かってきたことをお伝えしよう」と考えたためです。

今回は、「小児アレルギーと腸内細菌」についてご紹介します。

腸内フローラについては、こちらの記事で紹介しています。

腸内フローラ「善玉・悪玉・日和見菌」の常識がかわってきた!?

 

「小児アレルギー」ってそもそもなに?

小児アレルギーは、外からきた異物に対して体が過剰反応して、皮膚や呼吸器、目のほか全身に症状を引き起こし命に関わる場合まであるとても怖い病気です。

そして、アレルギーにかかりやすい体質というものがあります。

乳幼児早期から・・・

  1. 乳幼児湿疹・アトピー性皮膚炎
  2. 食べ物アレルギー
  3. 気管支喘息
  4. アレルギー性鼻炎
  5. 花粉症

など、次々とアレルギーを発症する「アレルギーマーチ」と呼ばれる症状を発症する子ども達が増加しています。

この小児アレルギーが、腸内細菌と関係していることが少しずつ分かってきました。

 

腸内細菌と赤ちゃんとの関係?

人間の腸内には、腸内細菌(善玉・悪玉・日和見菌)と呼ばれる細菌が、電子顕微鏡で見ると花畑(フローラ)のように群生しています。

このことから、群生している腸内細菌のことを「腸内フローラ」と呼びます。

 

赤ちゃんは、いつから腸内細菌をもつの?

そもそもの話しですが・・・

①母親の子宮の中にいる胎児の腸内は、実は「無菌状態」

②出産時、母親の体に付着した菌などが赤ちゃんの「口・鼻」から腸内へ入り込む

つまり、産道を通って産まれてくる際に母親の腸内細菌を赤ちゃんは体内に取り込むことになります。ここから、独自の腸内フローラへと成長と共に仕上げられていきます。

腸内細菌の始まりは、あなたの年と同じと言うことになります。

 

善玉菌と悪玉菌

産後直後の赤ちゃんは、いわゆる「悪玉菌」が増えることが分かっています。ですが、大腸菌のような悪玉菌に腸がやられないように、ビフィズス菌のような善玉菌が悪玉菌を退治していきます。

このように、産まれたときから腸内細菌の攻防が繰り広げられていきます。

 

自然のバランスが壊れてきている!?

「腸内フローラ」が母から子へと受け継がれていくことは、このように自然のプロセスとして受け継がれてきていました。

ですが、この自然のプロセスが壊れてきていることが世界中の研究で分かってきました。

 

◎順天堂大学大学院医学研究科マイクロバイオーム研究講座の研究グループ◎

  • 分娩直前の母体への抗菌薬投与が早期乳児腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)に及ぼす初の研究。
  • 抗菌薬投与群で乳児の腸内細菌叢に占めるビフィズス菌の割合が低下
  • 乳児腸管内へのビフィズス菌の定着は、分娩直前の抗菌投与により大きな影響を受けていた。

 

◎イギリスの研究◎

4952名の乳幼児を対象にした研究

→2歳までに抗生物質を与えられると、7歳半の時点でぜん息の発症率が高くなる。
→ぜん息が発症する確率は、抗生物質の使用回数が多いほど高くなる。

ことが示されました。


もちろん細菌感染症にかかれば、抗生物質の使用は必要になるかもしれません。

ただ、腸内フローラを形成している腸内細菌まで大量に死んでしまうため、健全な腸内フローラを育てることができなくなる恐れがあることから、小児アレルギーにも影響していると考えられています。

どちらにしても、基本的にほとんどの小児科では、薬の処方は最小限にとどめいているでしょう・・・

 

最後に

以前から、小さいうちからの抗生物質の使用は制限されてきました。実際、子ども達が通っている小児科の先生も、基本的には抗生物質だけでなく、そもそも薬に頼る治療は最低限です。

「子どもと薬との付き合い方は、特に気をつけなくてはいけない」ということでしょう・・・

抗生物質は私達の命を救ってきましたが、同時に必要な部分まで壊していきます。薬と毒は表裏一体と呼ばれます。

特に、出産時の抗生物質には注意が必要です。ただ、「母子垂直感染」の危険性も指摘されています。母子垂直感染の危険性があるなら、抗生物質の点滴が必要になる場合もあります。

「なにがなんでも抗生物質はダメ!」ということではなく、最後は医師との相談により決めるしかありません。抗生物質を拒否したために、取り返しが就かない状態になっては本末転倒です。

ただ、「予防のため」とか「念のため」で使いすぎるのは危険だということです。

 

抗生物質については、こちらの記事で紹介しています。

抗生物質が効かない薬剤耐性菌が世界的に増加中!~時代は繰り返す~


参考

社会福祉法人 恩賜財団済生会
https://kinkishiga.com/kosodatetyuuihou/byoukikanren/enteric-flora.html

CAPS CLINIC
https://www.caps-clinic.jp/allergy

NHK健康ch
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_550.html

順天堂NEWS
https://www.juntendo.ac.jp/news/20180821-01.html

 

 

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