「4月」といえば、入学式の季節ですよね。
ところで、「4月1日生まれの子どもと、3月生まれの子ども達が同年代になる」ということが、たびたび話題になりますよね。
それでは、なぜ同年代になってしまうのでしょうか?
今回は、「なぜ4月1日と4月2日生まれで学年が変わるのか?」についてご紹介します。
そもそも、「早生まれ」ってなに?
その年の、1月1日~4月1日生まれの人は「早生まれ」と呼ばれます。そして、4月1日生まれの子ども達は、同じ年の3月生まれの子ども達と同じ学年になります。
つまり、「入学」という点で考えると早生まれの子ども達は、最大1歳年上の子ども達と同じ学年になることになります。
→「4月1日生まれ」と「4月2日生まれ」で学年が変わってしまう。
ちなみに、4月2日~12月31日に生まれた子どもは「遅生まれ」とも呼ばれます。
ただ、子どもの1年間は大きな差があることは想像できますよね。
例えば、小学1年生の場合は4月生まれの子どもは入学してすぐに7歳になりますが、3月生まれの子どもは1年遅れでようやく7歳になります。
そして、一橋大学准教授:川口 大司氏と一橋大学大学院:森 啓明論文「誕生日と学業成績・最終学歴」でもこのようなことが指摘されています。
論文:「誕生日と学業成績・最終学歴」
❶小・中・高校生それぞれで、同じ学年最長年者(4月2日生まれ)と最年少者(4月1日生まれ)を比較すると、平均して偏差値が2~3の学力差が明らかになった。
《偏差値が2~3の差?》
「偏差値」というのは、平均点だけでは分からない「難しいテスト」・「簡単なテスト」どちらであっても、どのくらい優秀だったか分かるように、平均点を「50」として、点数のバラツキ度合いを加味して点数を付け直したものです。
つまり、平均点を取れば「偏差値50」ということになります。
テストにより偏差値は変わるめ一概には言えませんが、例えば「模試の偏差値1の差は、入試点で6~7点に相当する」と言われています。
→偏差値2~3の差があるということは、遅生まれの子ども達と比較して約12点~21点程の差がでてしまうことになります。
*ただし、こういった「差」じたいは年齢を重ねるごとに消えていくことが指摘されています。
ですが、「自分は周りよりもできない・・・」という失敗体験が積み重なると残ってしまいますよね。そのため・・・
➋幼少期の初期的体験が、その後の学習意欲などに影響を与えることで初期時点での成績差が次なる成績差を生むようなメカニズムが存在すると、成績差は中学生・高校生になっても残ることが考えられ、最終学歴にまで影響する可能性まである。
つまり、最初の段階で「周りよりも劣っている」と感じてしまい、自分に自信が持てなくなり、その後も影響してしまう可能性があるということです。
実際、生まれ月の違いに起因する小中高での成績の違い、国私立中学校への在学確立の違いは最終学歴の違いにも反映されています。
- 男性の中の4大卒業率:27%→3月生まれと4月生まれでその確立は、2%も異なる。
- 女性の中の4大卒業率:10%→ 〃 1%異なる。
この論文は2007年の報告のため、2020年現在では影響がもっと大きいかもしれません。
さて、「早生まれ」についてはこのように以前から問題が指摘されており、そもそも世界中の研究でも「早生まれの子のテストの点数が遅生まれの子に比べて低くなる」と報告されています。
ちなみに、海外では早生まれの子の入学を1年遅らせる制度もあるようです。
→例えば、アメリカでは10%の保護者がこの制度(アカデミック・レッドシャーティング)を利用し、「幼稚園や小学校の入学年齢を遅らせる」という選択をしています。
*アメリカの場合は、9月が入学になるため早生まれは8月生まれの子どもになる。
さて、ここまで早生まれの問題点と海外の制度について触れてきました。それでは、「なぜ日本では、4月1日生まれと4月2日生まれで学年が変わってしまうのか?」
法的な観点から見ていきましょう。
法律による学年の違いとは?
まず、そもそも小学校の学年は学校教育法施行規則で定められています。
❶学校教育法施行規則
第五十九条 小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
つまり、そもそも日本では法律で小学校の学年は4月1日~3月31日と決まっています。
さらに、「何歳から小学校に通うのか?」についは学校教育法で定められています。
➋学校教育法
第17条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。
つまり、学校教育法施行規則第59条により、4月1日から小学校の学年は始まるため、「6歳になった日の翌日以降で、4月1日がきたら小学校に入る」ということになります。
そのまま考えれば、4月1日生まれ以降は、同年代になると考えるかもしれませんが、実は民法で「暦の計算方法」が示されています。
❸民法
(暦による期間の計算)第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
今回は、4月1日に焦点を当てていますので、4月1日が誕生日の子どもがどうなるかと言えば、「その月の末日に満了する」ということは、満了日は「3月31日」ということになります。
つまり、前日の3月31日が終了する午後12時に年を取ることになります。例えば、2014年4月1日生まれの場合、2020年3月31日の午後12時のタイミングで満6歳ということになります。
そのため、2014年4月2日が誕生の場合は、2020年4月1日の午後12時が満6歳となるため「2021年4月1日からの学年」と言うことになります。
*4月2日生まれの子どもは、4月1日生まれの子どもよりも1年遅く入学することになる。
このように、日本では法律に基づいて定められていますが、「合法的に1年の差が生み出されている」という現状があります。
最後に
子どもの1年は、大きな差がありますよね。
運動能力や学力をはじめ、そもそも体の作りも大きく変わってしまいます。
かといって、誕生日を4月2日と偽って出生届を出そうものなら戸籍法で罰せられることになるでしょう。
第百三十四条 戸籍の記載又は記録を要しない事項について虚偽の届出をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。外国人に関する事項について虚偽の届出をした者も、同様とする。
残念ながら、海外のように特別な制度もありません。
一見すると、「3月31日午後12時」と「4月1日午前0時」は同じように見えます。ただ、民法においてはその後の子ども達の人生に、とても大きな影響を与えるかもしれないほどの差になりえます。
親にできることは、「自信を無くさせないこと」や「早生まれだからという言い訳を当たり前にしないこと」が大切だと言えるでしょう。
最後に、アメリカで気になる研究報告がありました。
「8月生まれと9月生まれの子どもを比較すると、早生まれ(8月生まれ)の子どもにADHDと診断された子どもが、34%も高かった」という研究結果です。
つまり、1年の差を考慮されずに発達障害の1つであるADHD(注意欠陥多動性障害)に誤診されていることになります。
この調査結果は、日本もひとごとではありません。学年ではなく、生年月日を意識して子ども達に接していかないと取り返しが付かなくなるかもしれません。
以上、日本では「学校教育法施行規則」・「学校教育法」・「民法」という3つの法律が組み合わさって4月1日と4月2日で入学までに1年の差が生み出されていることを紹介しました。
*誤解の無いように、当然ですがどの期間で区切ったとしても、1年の差はできてしまうためあしからず。
参考
無印良品:早生まれと遅生まれ
→https://www.muji.net/lab/living/190403.html
市進教育グループ
→https://www.ichishin.co.jp/kyoiku/kotaro/tabid/913/Default.html
コメントを残す