抗生物質が効かない薬剤耐性菌が世界的に増加中!~時代は繰り返す~

薬剤耐性菌が増加中・・・

病院に行けば必ずといっていいほど処方される抗生物質。

それは、子どもであっても例外ではありません。

そのため、厚生労働省は抗生物質使用のための使用指針を発表しました。つまり、抗生物質を処方する症状について規定しました。

 

抗生物質は、どんな病気にも効く魔法の薬と勘違いされている方もいるかもしれません。

ですが、使い方を間違えれば自分でじぶんの首を絞めることになります。

今回は、抗生物質が効かない薬剤耐性菌について私たちが知らない怖い話しを紹介します。

 

そもそも抗生物質ってなに?

まずはじめに、抗生物質は万能薬ではありません

4330009 / Pixabay

抗生物質は、1928年にアレクサンダー・フレミングが青カビから偶然発見したペニシリンが世界初の抗生物質と言われています。実用化されるまでには、10年ほどかかりました。つまり、抗生物質の歴史はまだ100年もありません。

→「奇跡の薬」とまで呼ばれています。

 

抗生物質がなかったら

抗生物質がない時代の方が圧倒的に長いのですが・・・

抗生物質がなければこんなことが起こります。(抗生物質がなかった時代)

 

感染症を治せない

例えば、「肺炎球菌予防」という言葉を聞いたことはありませんか?

テレビのCMでよく流れていますよね。

こういった細菌による感染症での致死率が格段に上がります。

事故を起こして・かるい怪我をして感染症になんてこともあります。昔は、些細なことで人間は死んでしまいました。

*黄色ぶどう球菌のような細菌性の食中毒でもすでに耐性菌が見つかっています。

skeeze / Pixabay

 

つまり抗生物質がなければ、例えば怪我をした時に感染症にかからないために患部を清潔に保つというとても根気のいる治療を個人が毎日繰り返すことになります。

昔の不治の病といえば結核。現在も患者さんが存在しますが抗生物質により死の病ではなくなりました。ですが結核を引き起こす結核菌は細菌です。

これまで終わったと考えられていた病気が蔓延する可能性が高くなります。


これまでのように「ひどくなったら病院へ行く」では取り返しがつかなくなります。

また、性病の重篤化もこれまで以上に増えていくと考えられています。

このように抗生物質がなければ、ここまで人間が長生きすることもありませんでした。

抗生物質がなければ、平均寿命の減少・乳児死亡率の上昇など「人口の激減」という可能性が大いにあります。

へたに怪我すらできない時代がくるかもしれません。

 

薬剤耐性菌により死者数が増加している

ただの憶測ではなく、現実的に表面化しています。

薬剤耐性菌とは、抗生物質が効かない細菌。

実は、世界中で1980年から薬剤耐性菌が増加しています。

初めて抗生物質が見つかってからわずか60年程ですでに効果がでない事例がみられるようになりました。

現在の日本人死亡1位は「ガン」。

年間、ガンの死亡者数は800万人。ですが、薬剤耐性菌の死者は2050年には1000万人を超えるとイギリスの医療機関などでは予想しています。

つまり、ガンになる前に感染症で死んでしまう時代がくるかもしれません。

asmuSe / Pixabay

 

薬剤耐性菌はどうしてうまれるの?

人間の免疫力は、赤ちゃんと大人ではまったく違いますよね。成長過程で、様々な細菌やウイルスを取り込むことで学習して強い体になっていきます。

同じことが細菌にも起こりました。

 

①用法容量を守らない場合

細菌は自分たちが死なないために、生き残った普通の細菌が抗生物質を学習して耐性菌になってしまいます。

普通は、処方された薬は飲みきらなければいけません。ですが、症状がなくなったなどの理由で服薬をやめてしまうことがあります。死滅させることができないため生き残った細菌から耐性菌が出現します。

 

②抗生物質の乱用

例えば、風邪に抗生物質は効果がないと言われます。ですが、患者の要望や医師の判断で必要もない抗生剤を服用してしまうことで耐性菌が出現します。

これまでも、風邪に抗生物質は効果がないと言われていました。ただ、肺炎のおそれもあることから日常的に処方されます。しかし、肺炎は必ずしも細菌とは限りません。

geralt / Pixabay

このように、「抗生物質は予防のために使われてきた」という一面があります。

  • 抗生物質が効果があるのはあくまで細菌
  • ウイルスの場合は、安静・栄養・対処療法(解熱剤などの服薬も含む)が基本的な治療になります。

→最近では、抗ウイルス剤も開発されています。(細菌には効果がありません)


ただ、「風邪」と一言でいっても細菌が原因の場合(1割以下)もあるので絶対ではありません。

見た目でわかればいいですが、わからない場合は医師から血液検査を進めることもあるようです。

ただ、抗生物質を実際に服用させてみて効果がなければウイルスという判断をすることが多いのではないでしょうか?

風邪で受診して血液検査なんて普通しないですよね?

ですが、これからはそういう時代になるかもしれません。

個人レベルでできることは、正しい知識をもった医師の判断した用法容量を守ることが大事になります。

 

薬剤耐性菌の対処は?

現在、新たな抗菌薬の開発は減少しています。

つまり、現在の時点でできることは新たな薬剤耐性菌を増やさないことしか対処ができません。

すでに世界中で大問題になっていますが、日本ではよく知らない一般人が多いことが現状です。

そのため、厚生労働省が薬剤耐性対策プランを作成しました。

厚生労働省「薬剤耐性対策プラン」より引用

①国民の薬剤耐性の知識・理解を深める

②専門家への教育・研修の推進

③薬剤耐性及び抗微生物剤の使用量を継続的に監視

④薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握

⑤適切な感染予防・管理の実践により、薬剤耐性微生物の拡大を阻止

⑥医療、畜水産等の分野における抗微生物剤の適正な使用を推進

⑦薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・治療手段を確保するための研究開発を推進

このように、国をあげての対策が行われています。

 

まとめ

「子どもが中耳炎になって受診したら、その原因が耐性細菌のため治療が困難になる」というケースが増えています。

薬剤耐性菌は人間が作った細菌と言えるでしょう。

「人間と細菌の戦い!」なんて言われることもあるように、これまで繰り返されてきました。

人間の時代から、細菌の時代がもうそこまできています。

仮に、抗生物質に変わる薬がでてきたとしても、一過性に過ぎないでしょう。

子どもを守るために私たちができることは正しい知識を身につけて継続していくことだけなのかもしれません。


参考

政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201611/2.html

木下小児科クリニック
http://www.kinoshita-children.jp/index.php?cID=1

厚生労働省「薬剤耐性対策プラン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です