新型コロナウイルスのの影響で外出自粛となり、虐待の増加が懸念されています。
それでは、皆さんは「ヤングケアラー」という言葉をご存じでしょうか?
「ヤングケアラー」というのは、家族にケアを要する人がいることで、家事や家族の世話などを行う子ども達のことです。
今回は、「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」についてご紹介します。
どういった報告書だったの?
この報告書は、厚生労働省が実施している「平成 30 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 」として報告されたものです。
全国の市町村要保護児童対策地域協議会が、ヤングケアラーについてどのように認識し、対応しているのかをアンケートを通じて確認する目的で実施されました。
ヤングケアラーに対する・・・
- 認識
- 対応
- 課題
- 協議会の登録ケースの中でヤングケアラーと思われる個別の事例について確認
こういったことがまとめられました。
さらに、今回の調査対象者は市町村要保護児童対策地域協議会での要保護児童の登録ケースが対象だったため、かなり限られた子どもが対象になっています。
つまり、専門職が関わっているケースでよりリアルな実情を知ることができる調査だったと言うことができます。
地域協議会の対象児童は、児福法第6条の3に規定する「要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)」であり、虐待を受けた子どもに限られず、非行児童なども含まれる。
それでは、そもそもヤングケアラーとは具体的にどういった場合を言うのでしょうか?
「ヤングケアラー」となる場合は?
ヤングケアラー(「子どもケアラー」と呼ばれることもある)は、18歳未満の子どもを指します。
家族にケアを要する人がいる場合、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている子ども達です。
理由はさまざま
- 親の障害や病気
- 高齢の祖父母の介護
他にも、兄妹や他の親族を子ども達が看護しているケースなど、家族によって理由も看護の対象者もさまざまです。
*ちなみに、18歳~30歳代までを対象とした「若者ケアラー」という言葉もあります。
《ヤングケアラーの仕事例》
- 家事:料理や洗濯、掃除など
- 一般的なケア:投薬管理・着替えや移動の介助
- 情緒面のサポート:見守り・声かけ・励ましなど
- 身辺ケア:入浴やトイレの介助
- 兄妹の世話:世話・見守り
- その他:金銭管理・通院の付き添い・家系を支えるための労働・家族のための通訳など
さて、例えば家事なら「私もやっていた!」という方は意外に多いかもしれません。
ただ「お手伝い」ではなく、本当の意味で担っています。つまり、限られた時間だったとしても基本的にその子がやらないと誰もする人がいないという部分に問題が生じてきます。
それでは、調査結果について見ていきましょう。
ヤングケアラーの概念を認識している協議会の割合は?
そもそも、「ヤングケアラーという概念」を認識しているのか?
全体でみると、ヤングケアラーという概念を認識している協議会は回答のあった849件中、27.6%しかありませんでした。
つまり、専門職の中であっても、子どもが家族のために何かしらの仕事を担っていたとしても問題として捉えられにくい状態が考えられます。
つまり、日本の社会ではある意味、ヤングケアラーは当たり前だと言えるのではないでしょうか。
私の場合は、「ヤングケアラー」・「若者ケアラー」?
かくいう私も、「ヤングケアラー」・「若者ケアラー」みたいなことは経験していました。ただ、厳密にはお手伝いの範囲だったようにも思うので判断は難しいですが・・・
例えば、私の家は自営業(表具店:襖や障子の張り替えなど)ですので、簡単な仕事の手伝いをすることは当たり前でした。
また、高校3年生の時には同居した祖母が自宅内で転倒してしまい、右大腿骨の頸部骨折により車イス生活になってしまいました。
そのため、大学を卒業するまでの約5年間、家族と協力しながら祖母が亡くなるまで夜間のトイレ介助のために交代で同じ部屋で寝るなど、その他身体介護などを協力していました。
それぞれ家庭の事情もありますし、そもそも高齢出産が増えている現在では高校生や大学生の子どもが親の介護をする場面も珍しくはないのかもしれません。
それでは、ここからはヤングケアラーを認識している約3割の協議会の調査結果について見ていきましょう。
ヤングケアラーを認識している協議会の実態把握は?
- ヤングケアラーと思われる子どもの実態を把握している:34.2%
- 〃 子どもはいるが、実態は把握していない:35.0%
- 〃 子どもはいない:30.3%
つまり、ヤングケアラーの視点をもっている約3割の協議会の中でも、その子どもの実態を把握できているのはさらにその約3割しかないことが分かりました。
それでは、どういった実態を把握しているのでしょうか?
ヤングケアラーとして把握している内容とは?
- きょうだいのケア:83.8%
- 食事の世話(買い物・食事を作る・食べる介助・後片付けなど):66.3%
- 家の中の家事(掃除・洗濯・アイロンがけ等の他、細々とした家事を含む):58.8%
- 見守り(直接的な介助ではないが、要ケア者の心身の状態を見守り):42.5%
- 身の回りの世話(衣服の着脱介助、移動介助、服薬管理など):31.3%
- 通院の付き添い:26.3%
- 感情面のケア:23.8%
など、このような結果になっています。
→ヤングケアラーもしくは、同様のものとして捉えている件数は80自治体→合計377件(平均4.83件)
さて、気になるのはヤングケアラーと思われる子どもがいるにも関わらず、その実態把握ができていない35%の子ども達ではないでしょうか?
それでは、なぜ実態把握ができていないのでしょうか?
専門職が関わっているにも関わらず、実態が把握できていない理由とは?
- 家族内のことで問題が表に出にくい:76.8%
- 要介護児童の家族がヤングケアラーという概念を認識していない:56.1%
- ヤングケアラーはそもそも子どもなため、本人が問題を認識しておらず相談(悩み事)にもならない:56.1%
- ケアマネやCW、学校の先生などがヤングケアラーという考え方を知らず、そのような子がいても対応すべき対象と認識していない:25.6%
- 介護や障害等課題が多岐にわたっており、情報の集約が共有されにくい:25.6%
「表に出にくい」という理由はありますが、そもそも子どもに役割を与えていることに、当事者達が疑問に思っていないことが見てとれます。
ヤングケアラーの属性は?
《男女別》
- 女性:61.0%
- 男性:38.7%
これは、どの学年を見ても女性が男性よりも高くなっています。
《学年別》
- 中学生:43.2%
- 小学生:33.2%
- 高校生:15.6%
《家族構成》
- 1人親と子ども:48.6%
- 夫婦・パートナーと子ども:36.8%
さらに、「きょうだいの有無」については大半がきょうだいがおり、その平均は2.8人となっています。
さて、日本では昔から家族で助け合うことは美徳とされ、親を手伝っている子どもをみると「お母さんのお手伝いをしてえらいわね~」なんて言われたことがある人も多いのではないでしょうか?
そういう意味では、ヤングケアラーは日本の文化ということもできるでしょう。
ただし、学校生活への影響が物理的にでてしまっている子ども達がいます。
《学校生活への影響》
- 学校等にもあまり行けていない(休みがちなど):31.2%
- 学校に行っており、学校生活に支障はみられない:28.7%
- 学校等には行ってるが、授業に集中できない、学力が振るわない:12.3%
- 学校等には行っているが、遅刻が多い:11.9%
- 学校等には行っているが、忘れ物が多かったり宿題をしてこないことが多い:10.0%
など、学校生活にさまざまな影響がでています。
*学校に行けているが、なんらかの影響がある子ども達は、27.4%。これに、学校にあまり行けていない子どもを合せると、半数を超えてしまっています。
このように、「日本の文化」という面もありますが、実際に義務教育を受ける子どもの権利が侵害されていることも指摘されています。
最後に
経験者としては、ヤングケアラーが必ずしも悪いことだとは思いません。
もちろん、すぐに帰らないといけないため友達と遊ぶ時間がとれないこともありました。ただ、家族の仕事を担うことは自信にもつながります。
問題となるのは、そのバランスです。
「ヤングケアラー」という概念があまりに徹底されてしまうと、家のお手伝いさえ虐待と言われかねません。そういった危険性もあります。
ヤングケアラーはなにが問題なのか?
子どもへの影響はどういったものがあるのか?
これは親や専門職が認識することであり、社会がそれぞれの家庭に強制させるようなことではないでしょう。
また、今回の調査はごく一部の調査であるため、もっとたくさんのヤングケアラーがいることが予想できます。
そのため、支援するにしても画一的な支援ではなく、必要に応じた支援が期待されています。
参考
ヤングケアラープロジェクト
→https://youngcarerpj.jimdofree.com/
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