2020年4月:民法大改正! 連帯保証人制度も変わる!? 

 

皆さんは、「連帯保証人」という言葉をご存じでしょうか?

私自身は、親から「何があっても保証人にはなるな!」なんて言われながら育ちましたが・・・

そうはいっても、入院時や賃貸を借りるとき・携帯電話の契約など意外と保証人になるタイミングはたくさんあります。

今回は、「新しく変わる保証契約」についてご紹介します。

 

「連帯保証人」と「保証人」は強制力がまったく違う!

新しくなる保証契約の話しをする前に、そもそも「連帯保証人」と「保証人」は意味合いが違うことをご存じでしょうか?

一般的に、連帯保証人のことを「保証人」と呼ぶことが多いと思いますが、実はまったく意味合いが異なります。

 

◎賃貸契約の場合◎

「賃貸契約」と言えば、保証人が必要になりますよね。

保証人の役割としては「滞納分の支払い」「退去時の原状回復」など、いわば「借主の代わりに責任をとってもらうために必要な人」ということは皆さんもご存じかと思います。

それでは家賃を滞納した場合、「保証人」「連帯保証人」とではどういった違いがあるのでしょうか?


借主(住む人)が家賃を滞納したとします。すると、貸主(大家さん)が滞納している家賃を代わりに払ってもらうために・・・

 

《貸主が借主の「保証人」に滞納分を請求!》

  1. 貸主の請求を「まずは主債務者に請求して下さい」と拒否することができる。(催告の抗弁)
  2. 借主が財産を持っていることを証明できれば、支払いを回避できる。(検索の抗弁)
  3. 保証人が2人いる場合、債務額(滞納)が50万円だっとして2人で折半することができる。

→貸主はすんなりと滞納分を回収できないこともあり、貸主としては負担が大きい。

 

《貸主が借主の「連帯保証人」に滞納分を請求!》

「保証人」のような権利が「連帯保証人」にはないため、滞納分を全て1人で肩代わりしてくれるので、合法的にすんなりと借主の滞納分を回収できる。

→つまり、貸主は「保証人」ではなく借主本人と同じ責任がある「連帯保証人」を付けることになります。

賃貸保証会社に契約しないといけませんが、「保証人不要」の賃貸も増えています。

 

このように、「連帯保証人」には大きな責任(主債務者と同じ責任)が生じます。

それでは、「連帯保証契約」がどんなふうに変わるのでしょうか?

 

連帯保証契約が変わる!?

「保証」に関することは、民法で定められています。

ですが、2020年4月1日から「民法の一部を改正する法律」が施工され「保証」について新しいルールが導入されます。

 

先程の事例がもっと大変なことに!

先程の事例は、あくまで滞納分ですので大金とはいえ、100万円以下の立替えですみました。

では、例えば借主の落ち度で賃貸マンションを全焼して、多額の負債(借金)を貸主から、連帯保証人であるあなたに請求された場合はどうでしょうか?


マンションの全焼ともなれば、数千万円の借金を一瞬で連帯保証人であるあなたが肩代わりしなくてはいけなくなります。

ですが当然、払えないため完済できるまで「あなた」の毎月の給料が差し押さえられることになります。(自宅などがあれば、不動産の差し押さえなどもあります)

これは、連帯保証人になったが最後、負債額に上限がないつまり青天井のため借金の返済が終わるまで続く悲劇といえるでしょう。

そこで、「根保証契約」が見直されました。

 

「根保証契約」が見直された!?

1.極度額(上限額)の定めのない「個人」の根保証契約は無効!

根保証契約(ねほしょうけいやく)とは、「一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約」

つまり、連帯保証人になったときに実際に肩代わりする金額が青天井になっている契約のことです。

 

◎「個人」が保証人になる根保証契約の場合◎

保証人が支払う(肩代わりする)極度額(上限)を書面等により「○○円」といった具合に明確に定め、当事者間の合意を定めなければいけません。

つまり、これまでのような、保証人が肩代わりする上限額が決まっていない契約は、そもそも無効になります。

*逆に言えば、債権者(賃貸の例でいう所の「大家さん」)は、上限額を決めずに根保証契約を締結してしまうと、その契約が無効になってしまいます。

→つまり、債権者は保証人に対して、支払いを求めることができなくなります。

 

2.特別の事情による保証の終了◎

個人が保証人になる根保証契約の場合は保証人が・・・

  • 破産
  • 主債務者(借主本人)または保証人が死亡

こういった場合は、その後に発生する主債務(借主が貸主に負っている債務)は保証の対象外になります。

 

3.個人が事業用の融資の保証人になる場合

「法人」や「個人事業主」が事業用の融資を受ける場合、事業に関与していない親戚や友人に保証人を依頼したとします。

これは、先程の「個人に対する連帯保証人」ではなく事業に対する連帯保証人の場合です。

事業による連帯保証人ということは、ズバリ「事業が失敗したときに、本人に成り代わって借金の肩代わりをしてくれる人」ということになります。

個人の保証人になったときとは違い、比べものにならないほど債務(返済義務)が膨大になることは明らかですよね。


そのため、個人が事業用の融資の保証になる場合は「公証人」による保証意思の確認を経なければなりません。

事業に深い関係がある連帯保証人を除いて、意思確認の手続きを経ずに保証契約を締結しても、その契約は無効になります。

 

ここでいう、「事業に深い関係がある連帯保証人」とは・・・

  1. 主債務者が法人の場合→その法人の「理事・取締役・執行役・議決権の過半数を有する株主」等。
  2. 主債務者が個人の場合→「主債務者と共同して事業を行っている共同事業者」・「主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者。

といった場合です。

*公証人は、「公証人法」という法律の規定に基づいて、判事(裁判官)・検事・法務事務官などを長く務めた法律事務の経験豊かな者から法務大臣が任命します。

→手続きは、公証役場へ!

 

保証人への情報提供

今回の改正で、これまで紹介したように「保証人を守るための改正」ということができます。そして、さらに情報提供義務が新設されました。

 

1.保証人になることを主債務者が依頼する際の情報提供義務

事業のために負担する債務について保証人になることを他人に依頼する場合・・・

主債務者の保証人になるかどうかの判断材料として

  • 主債務者の財産や収支の状況
  • 主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報

を提供しなければなりません。つまり、保証人は主債務者の返済能力を確認することができます。

*事業用融資に限らず、売買代金・テナント料など融資以外債務の保証をする場合にも適用される。

 

2.主債務の履行状況に関する情報提供義務

主債務者委託を受けて保証人になった場合、保証人は債権者に対して、主債務についての支払いの状況に関する情報の提供を求めることができます。

つまり、主債務者の支払い状況を確認することができます。

*法人である保証人も求めることができる。

 

3.主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

保証人が個人である場合、債権者は主債務者が「期限の利益を喪失」したこと知った時から2ヶ月以内にその旨を保証人に通知しなければいけません。

つまり、サスペンスドラマにあるような「気付いた時には友人の保証人になった借金の利息が膨らんでいた・・・」なんてことがなくなります。

これまで、保証人に対して1~3の情報提供がなかったことには恐怖を感じますが、今回の改正で最低限の保護にはなるでしょう。

それでは、今回の改正はいいことばかりなのでしょうか?

 

今後の課題

例えば、私もそうですが「賃貸契約に、保証人が肩代わりする上限額」なんて書いてもらってませんよね・・・

❶つまり、契約書を書き直さないといけないかもしれません。(契約後に改正された法律になるため、大丈夫かもしれませんが判例がない以上、どうなるか分かりません)

「書類の書き直しをどうするのか?」「保証人と連絡が付かない場合は?」など混乱が起きる可能性があります。

 

➋また、連帯保証人を「保証」するということは、大家さんや銀行などの債権者(貸す側)はこれまで以上に、シビアに債務者(借りる側)の経済力を知る必要があります。

→自転車操業ではもちろん貸せないし、連帯保証人が肩代わりできない程の債務が発生する可能性があるなら、債権者がそもそも「貸す」ことははないでしょう。

このように、連帯保証人を守ろうとすれば、今度は債権者からそもそも借りれなくなる自体に発展する可能性もあります。

 

最後に

「連帯保証人」という制度自体に、そもそも問題が指摘されています。

というのも、そもそも「連帯保証人としてお願いできる人がいるか・いないか」。この時点で、大きな差ができてしまうためです。

ちなみに、今回の民法改正は1898年(明治31)という120年以上前に現行民法が施行されて依頼、初めての財産法の全面的な改正で、この中に今回紹介した保証人制度の改正も含まれています。

つまり、今回の記事は、民法改正のほんの一部分を紹介したに過ぎません。


今後、連帯保証人制度がどのように変わるかはわかりませんが、連帯保証人に全ての責任を負わせるのは、今の時代に合っていないのではないでしょうか・・・

それこそ、保険で賄う仕組みにするなど、新しい制度が必要な時代にきているのかもしれません。

10年後・20年後、子ども達が大きくなり、携帯購入や賃貸を借りるときなどには、保証人以外の別の方法が主流になっているかもしれません。

ひょっとしたら、「連帯保証人」という制度じたいがもう残っていないかもしれませんね。


参考

法務省:保証に関する民法のルール
http://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf

法務省:民法(債権法)改正
http://www.moj.go.jp/content/001254263.pdf

 

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