以前、香川県が「ゲーム依存症対策に関する条例」を施行したことをご紹介しました。
ただ、この条例に対しては2020年5月25日に弁護士会から反対声明が出るなど混迷が続いています。
これは、そもそも「パブリックコメントの数が多すぎる点」や「公募期間の短さ」、「反対意見を無視したとしか言えない状態での可決」など、不明な点が数多くあったことなどが影響しています。
さて、そんなパブリックコメントですが、今回は「神奈川県大和市で全国初で可決された条例」についてご紹介します。
→「ゲーム依存症対策に関する条例」については、こちらの記事で紹介しています。
全国初の条例とは!?
大和市が2020年3月16~4月14日の間にパブリックコメントが募集されました。その条例とは、「大和市歩きスマホの防止に関する条例」
です。
→ただ、そもそもパブリックコメントは基本的にそれほど多く集まるわけではありません。(まったく集まらないこともあるため、今回のパブリックコメントは多い方だと思います)
10人から21件のパブリックコメント
どういった意見があり、市がどういった回答をしたのかその一部を見ていきましょう。
①大和市路上喫煙の防止に関する条例のように監視員が取り締まり、違反者に過料を科すのか?
→罰則は設けませんが既存の交通安全巡視員等が業務の範囲内で注意指導を行うことを想定しています。
②大和市での歩きスマホによる衝突などの事故はどのくらい発生しているか。また、スマートフォン普及率と衝突事故等との相関性はあるか?
→スマートフォン普及率と衝突事故との相関については把握していませんが、歩きスマホ中に車両と接触し救急搬送された事案を 1 件確認しています。
③条例制定後 1 年ぐらいしても、効果がない場合は、罰則、罰金規定を設け常習者に厳しく対応することを提案する。
→歩きスマホが危険な行為であり、防止すべきことであることを明記し、意識啓発を図ることが重要と考えているため、罰則規定を設けませんが、条例制定後の状況を注視させていただきます。
④イヤホンで耳を塞いだ状態も歩行禁止にしてほしい。
→歩きスマホの防止に関する条例のためイヤホンで耳を塞いだ状態を防止の対象とすることは考えておりません。
⑤公共の場所の定義から室内及びこれに準ずる場所を除かないでほしい。
→建物内につきましては、交通安全巡視員等が直接的に注意・指導できないこともあり、条例で一律に防止するのではなく、施設管理者が施設の目的や用途に応じて対応するものであることから、対象外としました。ただし、施設管理者に対して、本条例の周知や、注意喚起・啓発活動を行っていただくよう、協力をお願いしていきます。
~大和市の考え方~
- 罰則はないが、交通安全巡視員等の注意・指導は実施される。
- 屋外の「歩きスマホ」に限られる。
この2つが、基本にあるようです。
ワンポイントアドバイス! ~交通巡視員とは?~
歩行者や自転車の通行の安全の確保、駐車違反車両の取り締まり、交通安全指導などの職務をする警察職員をいいます。
都道府県警察の専門職の常勤職員で、職務権限は交通関係に限られ、刑事訴訟法上の司法警察職員としての犯罪捜査の権限はありません。
なぜ、「大和市歩きスマホの防止に関する条例」を制定したの?
❶大和市では、2020年1月に市内2ヶ所で通行人約6,000人の歩行状況を調査
→全体の約12%が歩きスマホをしていた:約720人
→2020年5月には、歩きスマホをしていた人が負傷し救急搬送された
こういった、調査結果がありました。(外出自粛があったにも関わらず、2020年の5月時点ですでに1名が負傷している)
➋そもそも、歩きスマホによる交通事故が発生する危険性のある路上等については、注意喚起をするための根拠となる、法律等がない。
❸この条例を作るきっかけは、本来なら2020年7月に開催される予定だった東京オリンピックの開催に合せて、7月1日の制定を目指していましたが、今度は来年の開催に向けて備えて周知を図る。
こういった理由から、条例が制定されることとなりました。それでは、そもそも「歩きスマホ」とはどういった行為を言うのでしょうか?
「歩きスマホ」の定義は?
「大和市歩きスマホの防止に関する条例」では、歩きスマホの定義をこのように定めています。
スマホ等の画面を注視しながら歩行すること
そのままですね・・・
「スマホ等」ですので、つまり「画面を注視して歩くこと」が対象となります。
- 市内の道路
- 駅内広場・公園などの公共の場所
こういった場所での「歩きスマホの防止」に努める条例となります。
つまり、「画面を見るときは通行の妨げにならい場所で立ち止まってから見ましょう!」ということになるため、勘違してはいけないことは「屋外でスマホを見る行為自体を禁止しているわけではありません」。
→屋外であっても、安全な場所に立ち止まればスマホなどを使用しても問題ない。
具体的に、どういった取組がなされるの?
- 「交通安全巡視員」や「路上喫煙防止指導員」などの職員:道路や駅前広場などを日常的にパトロールをしている
- 交通指導員:公園や駐車場を使用するイベント会場など
こういった指導員が、業務に支障のない範囲で注意喚起を行うことになり、2020年7月1日から当初の予定通り施行されます。
最後に
「罰則の規定がないのなら意味がない!」という人もいるかもしれませんね。
ですが、少なくとも大和市では歩きスマホをしている人に対して、直接注意することができるようになりました。
→昔は、こんな条例がなくても当たり前に、お互いに気をつけていたと思いますがこれも時代の流れでしょう・・・
なにより、そもそも社会問題にまでなっている「歩きスマホ」に関する規定がなに一つないことは、法律が間に合っていない典型例だと言えるでしょう。
個人的な経験(事例)を言えば、車を運転していると「歩きスマホ」+「イヤホン」で視覚と聴覚を塞いでいる人が、突然狭い道路を横切ることが1回・2回・3回・・・何度も経験しています。
→「歩きスマホの危険性」については、こちらの記事でも紹介しています。
ちなみに、大阪市でも市民から「歩きスマホ禁止の条例を作って欲しい」という要望がありますが、大阪市ではこのような見解が出されています。
歩きながらのスマートフォン使用について、禁止し、罰金を徴収する条例の制定を求められておられますが、上記のように道路における歩行者の通行方法や罰則は、道路交通法で定められるものであり、また、本市が独自に条例を制定することについては、「歩きスマホ」による事故の発生状況等を踏まえながら、慎重に検討すべきものと考えております。
そして、大阪市ではあくまでも「携帯電話等の使用の有無にかかわらず、道路交通のあらゆる場面で周囲の安全確認が大切であることは当然」という考え方があるようです。
このように、なかなか歩きスマホに対して政策がなかなか進んできませんでした。
ただ、その当然のことができないために引き起こされているのが「歩きスマホ」であり、道路上の問題だけでなく、認知症をはじめ様々な危険性も指摘されています。
「風邪が万病のもと」なら、「歩きスマホはトラブルのもと」です。どうせ見るなら、歩きスマホではなく、立ち止まりスマホ
を心がけて下さいね。
→「スマホ認知症」はこちらの記事で紹介しています。
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