肥大型心筋症は遺伝することもある「指定難病」 ~突然死の原因になることも~

 

「難病」というと、普通に生活していれば、どこか他人事のように思ってしまうかもしれません。ですが、私や家族がいつなるか分かりません。

なぜなら、遺伝してしまう難病が数多くあるためです。

今回は、指定難病のなかでも私の家族が指定された難病「肥大型心筋症」についてご紹介します。

「指定難病」については、こちらの記事で紹介しています。

難病の医療費助成と言えば「指定難病」のはずが・・・ 誰でもは受けられない!? 

 

そもそも心筋症ってなに?

「心筋症」というと、誰もが一度は聞いたことがある病名かもしれませんね。

その名の通り「臓の肉の病気」で、進行性の循環器系の疾患です。ただ、「心筋症」とひと言でいっても大きく分けて3種類あります。(心臓の形や心筋の厚みで分類されている)

そして、それぞれ「指定難病の告示番号」によって振り分けられています。

 

◎告示番号◎

  • 告示番号:57→突発性拡張型心筋症・・・突発的(原因不明)に、心臓が薄くなり、収縮する力が弱くなり、心臓の内腔(ないくう)が異常に大きく(拡張)する。
  • 告示番号:58→肥大型心筋症・・・心筋が異常に厚く(肥大)なる。
  • 告示番号:59→拘束型心筋症・・・心筋が硬くなり、血液が入りにくくなる。

 

指定難病の種類検索については、こちらの難病情報センターのHPから「病名」「告示番号」「キーワード」から調べることができます。(平成30年4月:指定難病は331種類)

拡張型・肥大型・拘束型とそれぞれ分けられていますが、重複する場合もあります。それでは、肥大型心筋症についてご紹介します。

 

肥大型心筋症ってなに?

◎どんな定義があるの?◎

高血圧や弁膜症などの心肥大を起こす明らかな他の原因がないのに、左室に異常な肥大を起こす疾患です。とはいえ、約半数は家族内発症が見受けられます。

実は、約100以上の原因遺伝子が報告されています。また、原因遺伝子によって経過や症状が異なります。

*日本では人口10万人当たり374人。男女比→2.3:1と男性に多く、男女ともに60~69歳がピークとされています。

 

◎症状は?◎

まず最初に、一般に病気の経過は良好で、まったく無症状のまま天寿を全うできる場合も少なくありません。ただし、症状の有無に関わらず危険な不整脈心機能の進行性の低下がみられることがあります。

定期的に、専門医のもとで経過観察を受けることが重要になります。


《若年者の注意点》

  • 突然死(特に、運動中に多い)

 

《壮年~高齢者の注意点》

  • 心不全死      
  • 塞栓症死(心房細動などの不整脈を合併した場合など、心臓内に生じた血栓が主な原因)

 

無症状のまま?

なぜ、「無症状なのに診断がおりる」と思いますか?

正確には、「無症状」か「わずかな症状」を示すだけのことが多いようですが・・・

たまたま検診で「心雑音」や「心電図異常」をきっかけに診断にいたるケースが少なくありません。

 

指定難病による分類

重症度分類

「肥大型心筋症」が、指定難病として指定されるためには、重症度分類で中等度以上と認められる必要があります。

重症度分類 活動度制限 不整脈 心不全や不整脈治療のための入院歴(過去1年間) 突然死リスク 判定基準
軽症 なし
NYHA Ⅰ
なし。または散発する心室または心房期外収縮 なし なし 中等症の基準を満たさない
中等度 軽度
NYHA Ⅱ
非持続性心室頻拍 1回 あり NYHA Ⅱ度で、かつ不整脈、入院歴、突然死リスクのいずれかをみたす
重症 中等度~重度
NYHAⅢ~Ⅳ
持続性心室頻拍。または心室細胞 2回以上 3項目いずれかをみたす
最重度 重度
NYHA Ⅳ
2回以上または持続静注、補助人工心臓、心臓移植適応のいずれか 2項目すべてをみたす。

→このように、肥大型心筋症は進行していくのですが具体的な活動制限は、NYHA(活動度制限の評価に用いる指標)で規定されています。

 

NYHA分類(活動度制限の評価に用いる指標)

Ⅰ度
  • 心疾患はあるが身体活動に制限はない。
  • 日常的な身体活動では疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生じない。
Ⅱ度
  • 軽度から中等度の身体活動の制限がある。(安静時または軽労作時には無症状
  • 日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇・坂道歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。
Ⅲ度
  • 高度の身体活動の制限がある。安静時には無症状
  • 日常労作のうち、軽労作(例えば、平地歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。
Ⅳ度
  • 心疾患のためにいかなる身体活動も制限される。
  • 心不全症状や狭心痛(胸痛)が安静時にも存在する。
  • わずかな身体活動でこれらが増悪する。

 

気をつけるポイントは?

心筋症は、冒頭でお伝えしたように進行性です。そして、治療はまず薬で病気の進行を遅らせることから始まります。

そして、日頃から日常生活には注意する必要があります。

 

注意点

  1. 辛く感じるような、心臓に負担がかかる作業・運動は避ける。
  2. 「しんどい」と思ったら十分に休み、無理をしない。
  3. 風邪は禁物。(症状が悪化し、入院する可能性もある)
  4. 体重が増えると心臓に負担がかかるため、減量を心がける必要がある。
  5. 水の飲み過ぎ・塩の摂り過ぎは、血液量を増やして心臓の負担になる。
  6. タバコやアルコールなどは血圧を上昇させ、脈拍を増やすため心臓の負担になる。(禁煙・節酒)
  7. 体重が増えていないかチェックする(心臓への負担や馬力が弱くなると身体がむくんでくる)

このように、できる限り心臓への負担を軽減し、体重チェックが必要になります。そして、薬を一生飲み続ける必要があります。

間違っても、勝手に服薬をやめたり不摂生をすれば病状が進行していくため医師と相談しながら治療を進めていく必要があります。

*外科的手術が行われることもあります。

 

最後に

今回ご紹介した、「肥大型心筋症」は遺伝する可能性があります。私自身、不整脈があるので「将来的に難病指定を受けるのか?」と考えてしまうこともあります。

ただ、医療の進歩はめざましいものがあります。実際、心筋症と言えば「がん」と同じくらい危険な病気でした。ですが、「心筋症」も「がん」も死の病ではなくなってきました。

とはいえ、「心不全」の場合は先程ご紹介した「NYHA Ⅰ~Ⅳ度」の数字が大きくなる(重症になる)に従って、難治性の心不全であることを意味し、予後も悪くなっていきます。

心不全全体の死亡率は年間7~8%ですが・・・

*心不全:種々の心臓病や心臓以外が原因で起こり、心臓が最終的に至る生命の危険を伴う状態で、「病名」というよりは症候群のことです。

「心筋症」は心不全の原因となります。

 

◎心不全の死亡率◎

  • Ⅲ度→20~30%
  • Ⅳ度→50%(2年以内)

つまり、Ⅰ・Ⅱ度の状態でとどめておく必要があります。

このように、早期発見・早期治療が大前提です。ただし、「難病=治療が確立していない病気」ですので、治療とはいっても進行を遅らせるという意味です。

難病は、このように必ずしも「社会生活ができなくなる!」というわけではありません。難病は、病名・進行段階・個人の症状などで状態はさまざまです。

「難病は全て同じだ!」と勘違いしないようにしていきたいですね。


参考

KOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000199.html

難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/320

国立循環器病研究センター
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/181030_press.html

公益財団法人 日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/11/

 

 

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