命に関わる乳幼児揺さぶられ症候群(SBS) ~虐待ありきで分離!?~

 

今回は、身体的虐待のなかでも死の可能性が高い「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」についてご紹介します。

さて、今回の記事は先日ご紹介した「SBS理論」についても触れていますので知っておいて損はないと思います。

以前の記事はこちらです。

ただの事故が虐待に!?子どもが母から離されて起こる「母子分離不安」とは?

それでは、厚生労働省が発表している「平成25年8月 改訂版 子ども虐待対応の手引き」から説明します。

 

「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」ってなに?

乳幼児揺さぶられ症候群=シェイクン・ベビー・シンドローム(Shaken Baby Syndrome⇒SBS

頭部が暴力的に揺さぶられることで生じる、頭部外傷です。つまり、乳幼児を激しく揺さぶることで生じるため身体的虐待に位置付けられています。

《症状》

  • 嘔吐
  • 意識混濁
  • けいれん
  • 呼吸困難
  • 呼吸停止
  • 重篤な場合は死に至る

→短時間だけでなく、半日以上経過して症状が出現することもあります。

 

《後遺症》

  • 視力低下
  • 失明
  • 知的障害
  • 四肢麻痺

など、生涯にわたって子ども達へ計り知れない影響があります。虐待はもちろん論外ですが、絶対にやってはいけない虐待の1つということになります。

geralt / Pixabay

 

どうしてこんな虐待が起こるの?

子育てをしていると、イライラすることは誰もが経験していることだと思います。SBSは、鳴き声に苛立って激しく揺さぶることで起きることが多いとされています。

→揺さぶることで泣き止むことを体験をすると、繰り返してエスカレートすることもあるようです。

さて、強く揺さぶるだけでは「高い高いでもなるの?」「ベビーカーでガタガタしてもなるの?」なんて思うかもしれません。

「強く揺さぶる」というのは、1秒間に3回~4回往復するほどの激しい揺さぶりです。ためしに、ぬいぐるみで試してみて下さい。かなり激しい運動になります。

そのため、よっぽど激しい動きをしないと起こりません。つまり、普通に生活していれば基本的に起こることはないと考えられています。

これだけひどい揺さぶりですので、脳と頭蓋骨をつないでる血管が激しい揺さぶりで引きちぎられ、出血が広がるため、重篤な状態になってしまうことも頷けます。

whoismargot / Pixabay

 

SBS理論

さて、このSBSと判断される診断は・・・

  1. 「硬膜下血腫」または「くも膜下出血」
  2. 眼底出血
  3. 脳浮腫

などの脳実質損傷の3主徴が挙げられています。→SBS理論

つまり、この症状があればSBSと診断され児童相談所へ連絡がいき場合によっては警察にも連絡がいきます。

 

この理論の根拠は?

  • 90㎝以下からの転落や転倒などで硬膜化出血はほとんど起きない。(疾患や交通事故などを除く)
  • 広範で多相性の眼底出血は、SBS以外ではほとんど起きない。

これがSBS理論の軸の考え方であり、根拠です。

→ちなみに、SBSでも眼底出血が起こるとは限らず、そもそも「家庭内の転倒・転落を主訴」にしたり「受傷機転不明」で硬膜下血腫を負った乳幼児が受診した場合は、SBSが疑われます。

geralt / Pixabay

 

医療機関はどんな所を見ているの?

虐待が疑われる場合

  • 家族それぞれの説明が異なる。
  • 身体能力など、発達レベルと合わないことを述べる。
  • 説明がころころ変わり、途中で変化する。
  • きょうだいのせいにする。
  • 傷の態様が受傷機転の説明では起きる可能性が少ない。
  • 医師の説明や内容の重篤さに無関心な態度。

など。

SBSが疑われれば、休日・夜間関係なく通告があり子どもの安全確保の状態を確認した上で速やかに医療機関へ担当者が赴くことになります。

虐待マニュアルで、「受傷の原因が特定できず、虐待の可能性がある限り安全を第一に分離の判断をせざる負えない」とされています。つまり、疑わしきは母子分離がおこなわれます。

 

親の対応(反省がないと判断された場合)によっては・・・

医療機関での委託一時保護(治療)⇒転院(子どもの居場所を隠すため)⇒(治療終了後)児童福祉施設への委託一時保護

 

~職権により子どもを保護する際の保護者への説明~

  1. 保護者の説明では、SBS理論で起こるような診断はほとんどないことを指摘する。
  2. このような状況では、同様のことを繰り返す可能性が高く子どもの安全が確保できない。
  3. 原因究明のためさらなる調査の必要性があり児童相談所の保護下に置く。

など、今後の一定の見通しについても丁寧に保護者に説明することになっています。

以上が、SBS理論に基づいた部分の簡単な子ども虐待の手引き(マニュアル)です。

ijmaki / Pixabay

 

最後に

SBSは、子どもを重篤な状態に陥らせてしまうため命に関わる虐待です。そのため、通告がシビアになるのは必然ともいえます。

ただ、それはSBS理論が全て正しければの話しです。

実際は、このマニュアルの影響でつかまり立ちをしてこけたときに頭を打った事故さえもSBSと判断され、問答無用で一時保護にされています。

例えば、痴漢を証明することはかなり難しく、やっていなくても和解金を払うことが当然のように言われます。同じように、SBSは家の中で発生することが多く「やっていないと証明することはほぼ不可能」です。

そのため、「やっていない!」といえば反省がないと判断され長期間分離(隔離)されてしまうことが起こっているようです。また、「SBSは基本的に虐待でしか起こらない!」と考えられているので親も逮捕されるという悲劇まで発生しています。

免罪事例については、冒頭で説明した先日の記事内でも紹介しています。先日の記事はこちら。

ただの事故が虐待に!?子どもが母から離されて起こる「母子分離不安」とは?

次回は、SBS理論が当てはまらない「中村Ⅰ型」についてご紹介します。


参考

厚生労働省:子ども虐待対応の手引き
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/dl/120502_11.pdf

NHK生活情報ブログ
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/118466.html

 

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