インターネットが普及し、大抵のことなら簡単に調べることができるようになりました。

昔のように、「新聞記事」や「図書館に行って蔵書を探す」なんてことも少なくなったのではないでしょうか?

ただ、インターネットに限ったことではないですが1つの記事だけをみて信じてしまうと、あなたも騙されるかもしれません。

今回は、そんなインターネット上で問題になっている「インターネット上の人権侵害」についてご紹介します。

 

インターネットで人権侵害?

日本国憲法では、「基本的人権」についてこのように規定されています。

第十一条【基本的人権の享有と性質】
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に不へられる。

とはいえ、憲法は「絵に描いた餅だ!」と考えている人も多いと思います。

ですが、憲法は日本の最高法規です。そして、法律は憲法に基づいて作られています。

つまり、憲法を守らないということは法律を守らないことになるため、処罰の対象になることを意識しておく必要があります。

それでは、法務省の人権擁護機関がとりまとめた平成30年(2018)版を確認してみましょう。

 

インターネット上の人権侵害事件件数

平成30年における、インターネット上の人権侵害事件の合計は1,910件。

  • うちプライバシー侵害:849件
  • うち名誉毀損:667件

内訳は、このようになっています。

それでは、国はなにも対策をおこなってこなかったのでしょうか?

 

インターネット上の人権侵害情報への取組みは?

平成19年2月から、インターネットを利用した「人権相談受付システム」が導入・運用されています。

他にも人権相談には・・・

  • みんなの人権110番→0570-003-110
  • 子どもの人権110番→0120-007-110
  • 女性の人権ホットライン→0570-070-810

このように、人権侵害についてはインターネットによる人権侵害だけでなく、職場や学校などあらゆる人権侵害に対する相談窓口としてこのようなシステムが組まれています。

それでは、「人権相談受付システム」とはどういった取組みなのでしょうか?

 

人権相談受付システム

そもそも、インターネット上に流通している人権侵害情報は、一般的に伝播性が高いため重大な被害になる可能性が高いです。

さて、そんな「人権侵害情報」を人権擁護機関が被害深刻を受けた場合、人権相談受付システムにより被害者に対して、このような対応がなされます。

 

《被害者自身が対応できる場合》

  • プロバイダ等への当該侵害情報の削除依頼等の具体的な方法などを助言するといった援助。

→相手方にも、「表現の自由」などがあるため国の機関が関与することは望ましくないため、可能であれば基本的には被害者自身が対応すること前提としています。

*国が介入しすぎると、検閲など別の問題がでてくる。

 

《被害者自身が対応できない場合》

  1. 調査:必要に応じて被害者から事情を聴くなど。
  2. 法令・判例に照らして違法性を判断。
  3. 違法性(プライバシー侵害・名誉毀損など)が認められた。
  4. 人権擁護機関から、プロバイダ等に対して当該情報の削除を要請。

流れとしては、下記のようになります。

Pexels / Pixabay

 

インターネットの書き込みで被害を受けたら!?

①最寄りの法務局へ人権相談

  • 処罰を希望:「警察署」・「各都道府県本部のサイバー犯罪相談窓口」等を案内。
  • 書き込みの削除を希望:法務局職員または人権擁護委員による聞き取り。

⇊  ⇊

②書き込みの削除依頼をした場合

  • 相談者自身が削除依頼をする:プロバイダ等への削除依頼等の具体的方法を助言。
  • 相談者自身が削除依頼ができない:法務局が当該書き込みの違法性を判断し、プロバイダ等へ削除依頼。(強制力を伴わない任意の措置)

⇊  ⇊

③法務局の削除要請に応じない場合

  • 裁判所に、削除の仮処分命令の申立てをする方法の案内。

→法務局が申立てを代行することはできない。
→相談者自身が申し立てをすることが困難であれば、弁護士等に相談。
→金銭的に厳しい場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を利用することができる。

 

それでは、具体的にどんな事件があったのでしょうか?

 

法務局からの削除依頼事例

 

インターネット上のプライバシーの侵害

SNSにおいて、なりすましアカウントにより被害者の氏名・顔の画像等が掲載。

被害者は、SNSの運営会社に対し、なりすましアカウントの削除依頼をしたが応じてもらえなかった。

法務局に相談があり、調査した結果当該アカウントは被害者のプライバシーを侵害するものと認められ、法務局からSNSの運営会社に対し削除要請を行ったところ削除されるに至った。

 

インターネット上の識別情報の*摘示(てきじ)

*摘時:暴いて示すこと。

インターネット上の掲示板に、実在する特定地域を「同和地区である」と摘示し、当該地区の住民への差別を助長させるような内容が書き込まれている旨が法務局に情報提供があった。

調査後、特定地域の地域住民に対して不当な差別的取扱いをすることを助長または誘発する恐れがあり、人権擁護上問題があると認められ、法務局からサイト管理者へ削除要請を行ったところ当該書き込みが削除された。

このように、法務局で対策がなされています。

 

最後に

情報は、「事実であれば情報を開示すればいい」というわけではありません。

そこには、プライバシーなど基本的人権と隣あわせになっています。

その上、最近では「あおり運転の容疑者と同乗していた女性だ!」と人違いにも関わらず全くの別人がネット上でさらされるという二次被害まで発生しています。

確かにネットの情報は、最小限の労力で手に入れることができます。

ですが、その情報が正しいとは限りません。

そもそも、「正しければなんでも公開していい」というわけではありませんが・・・

インターネット上の情報に加害者・被害者として巻き込まれないように十分ご注意下さい。


参考

日本国憲法
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm

法務省インターネット人権相談受付窓口
https://www.jinken.go.jp/

法務省:平成30年における「人権侵犯事件」の状況について
http://www.moj.go.jp/content/001288006.pdf

 

 

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