抗体検査でなにが変わる? 新型コロナウイルスの未知の部分とは?

 

「抗体」と言えば、感染症に感染しなくなったり、軽くすむことでリスクを抑えることができる人間に備わった免疫機能ですよね。

前回紹介した予防接種をする理由も、免疫を獲得するためでした。

それでは、新型コロナウイルスに対する抗体はどうでしょうか?

今回は、「新型コロナウイルスと抗体検査」についてご紹介します。

 

予防接種についてはこちらの記事で紹介しています。

緊急事態宣言で子どもの予防接種を遅らせる!? その危険な理由とは?

 

抗体検査ってそもそもなに?

新型コロナウイルスの検査と言えば、遺伝子検査であるPCR検査がよく報道でも取り沙汰されます。

そんなPCR検査と言えば、検査時点で新型コロナウイルスに感染しているかどうかを知るための検査です。つまり、体内にいる新型コロナウイルを発見するための検査。

一方、抗体検査は免疫機能として獲得できる抗体があるかどうかを調べるための検査です。

それでは、そもそも私達を感染症から守ってくれる抗体はどうやってできるのでしょうか?

 

抗体はどうやってできるの?

大前提として、抗原(細菌やウイルスなどの異物)が体内に侵入してこないことには、そもそも抗体を作ることができません。ここまでは、多くの人がすでに理解されているかと思います。

この理由は、1つの抗体はある特定の抗原しか認識できないためです。これを「抗体の特異性」と呼びます。まるで匠を極めた職人さんみたいですが、自分の仕事は確実にこなすそんなイメージでしょうか。

→「おたふくかぜウイルス」を認識する抗体は、「ハシカウイルス」には反応することはできませんし、その逆もしかり。

これは、抗体産生細胞と呼ばれるB細胞も同じで、1つのB細胞からは1種類の抗体しか作ることができません。

とはいえ、異物は順番に並んで進入してくるわけではないですよね。

そのため、私達の体内にはあらかじめ数千万~数億種類といった単位でB細胞は普段から待機している状態になっています。

つまり、一度抗体ができることで2度目に侵入してきたときはすでに適切な抗体を獲得しているため、速やかに対応できるようになります。

そのため、抗体検査により抗体が発見されれば感染リスクが低い証明になることが期待されます。

それでは、新型コロナウイルスでも同じことが言えるのでしょうか?

 

新型コロナウイルスと抗体検査

日本赤十字社より

日本赤十字社では、「献血にご協力いただくみなさまへ」と題して、2020年4月22日に発表。

日本赤十字社では、厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部および医薬・生活衛生局からの協力依頼を受け、献血血液における検査の残りの血液を有効活用し、新型コロナウイルスに対する抗体検査に使用する測定キットの信頼性を評価する研究を実施いたします。

とあります。

つまり、抗体検査の検査キットが日本赤十字社でも開始されていることが分かります。

ちなみに、この発表時点で「抗体の測定には現在多くの検査キットがありますが、その性能を十分に評価された検査キットはありません」とはっきりと断言されています。

*ちなみに、献血結果を知らされることはないため、これまで通りの献血と同じ。

 

「一般社団法人日本臨床検査医学会」と「新型コロナウイルスに関するアドホック委員会」より

「COVID-19 における抗体検査についての基本的な考え方」と題して、2020年4月17日に発表。

IgM 抗体および IgG 抗体はいずれも発症早期には陽性とならない可能性が高く、医療機関では発症早期の患者の診断に用いることは推奨されない。また、IgM 抗体については偽陽性も少なくないため、IgM 抗体陽性のみで COVID19 を確定診断することはできない。一方で、発症してから時間が経過したものでは IgG 抗体の陽性率が非常に高いため、既感染の確認には有用であると考えられる。

つまり、抗体が作られるまでに一定の時間がかかるため、発症早期の場合は抗体検査を実施しても陽性になりにくいが、その一方で時間経過により抗体が判定できる可能性が高くなるため、抗体検査は条件付きで有用だとされています。

ただし、同時に新型コロナウイルスの未知の部分が指摘されています。

 

新型コロナウイルスと免疫

  1. 抗体検査の種類は様々で、そもそも「既感染の確認=感染免疫獲得者」と断定できない。
  2. 抗体が陽性であったとしても、そもそも再感染するかどうかわからない。

つまり、感染したからといって免疫を獲得していると断定できる段階にはないこと。さらに、免疫を獲得していたとしても、再感染するかもしれないということです。

これは、インフルエンザについて考えると分かりやすいのではないでしょうか?

 

もしも、新型コロナウイルスが新型インフルエンザと同じような性質だったら?

インフルエンザワクチンは、毎年接種する必要がありますよね。

これは、そもそもワクチンには5ヶ月程しか効果がないためです。さらに、ワクチンを接種してから抗体ができるまでの期間は約2週間と考えられています。

一違いには言えませんが、新型コロナウイルスの発症早期でも同じように、抗体ができるまでのタイムログにより、「抗体検査の結果が正確にでない」と考えた方が自然です。

さらに、実はワクチンを打ったからといって必ずしても免疫を獲得できるとは限りません。

例えば、不活化ワクチンはそもそもウイルスの毒性をなくしているため抗体が作られにくい人が存在しています。

そして、最大の原因はインフルエンザの場合は変異を繰り返していくため、いくら免疫を獲得しても新しい抗体を作る必要があるためです。

こういった理由から、インフルエンザウイルスは一般社会に当たり前にある感染症として、厚生労働省の発表では日本だけで毎年約1万人の死者をだす怖い感染症として定着してしまいました。

*ちなみに、個人的には新型コロナウイルスよりもワクチンや特効薬とされる薬があるにも関わらず、高齢者だけでなく子どもにもリスクが高いインフルエンザの方が怖いのですが・・・

こういった理由から、もしも新型コロナウイルスが変異を繰り返す感染症だった場合は、日常的な感染症となり、何度も感染することで抗体を作り続けることになります。

ただ、抗体検査には様々なメリットが考えられています。

 

抗体検査のメリットとは?

簡単に検査できる!

PCR検査の場合は、正しい手順で熟練した技師が実施する必要があります。しかも、ウイルスを確認するため、最悪技師が感染する恐れまであります。

ですが、抗体検査は急性期に実施するものではありません。体調が安定してから実施されるため、感染リスクも低くなります。

また、採血を摂れば10~20分程で結果が分かるため、簡単に実施することができます。

*ちなみに、PCR検査は鼻の奥まで綿棒が入れられることになるでしょう。

→インフルエンザの陽性検査のために、綿棒を鼻に突っ込まれたことがある人なら、どれだけ辛いか分かるのではないでしょうか?

 

新型コロナウイルスの本当の感染者数が分かる!

そもそも、抗体があると言うことは「新型コロナウイルスに罹った!」というなによりの証拠です。

正確な抗体検査を進めることができれば、正確な感染者数などが分かることになります。

 

感染者の現状

2020年5月5日12時時点で日本での感染者数は、15,069人

東洋経済新聞の2020年5月4日18時点の新型コロナウイルスの年齢別の死者数

  1. 80代以上・・・206名
  2. 70代  ・・・95名
  3. 60代  ・・・40名
  4. 50代  ・・・16名
  5. 40代  ・・・7名
  6. 30代  ・・・2名
  7. 不明  ・・・3名

死亡者数は369名。「不明」が気になりますが、日本では30代未満の死者は今のところ発生していません。ただし、全年齢に重症事例(10代・10代未満は1名ずつ)はあり、特に40代から重症化しやすいようです。

つまり、今の時点では特に40代以上は気をつけるべき感染症であることが統計からみてとれます。

そして、抗体検査をすることで正確な統計を知ることができるようになります。

 

ワンポイントアドバイス!:日本での三第死因は?

これまでは・・・

  1. 悪性新生物(がん)
  2. 心疾患
  3. 脳血管疾患

でした。

ですが、平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、「老衰(ろうすい)」が脳血管疾患を抜いて初めて日本の三大死因3位となりました。

「老衰」というのは、その名の通り加齢により心身の能力が衰えていくことです。

高齢者は、嚥下機能が落ちたことにより誤嚥性肺炎になることもあれば、心臓機能が衰えてうまく鼓動が打てなくなるなど、様々な加齢による原因で亡くなります。

つまり、衰弱死といってもいいでしょう。

厚生労働省の「令和2年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」によると・・・

「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います。

ただし、老衰から他の病態を併発して死亡した場合は、医学的因果関係に従って記入することになります

とあります。

これは、終末期の病状を書いてしまうと、例えば多くの死因が「心不全」や「呼吸不全」になってしまいます。

マニュアルによると、老衰の場合は直接の死因が「誤嚥性肺炎」だったとしても、その原因はあくまでも「老衰」となり死因も「老衰」となります。

このように、医学的な因果関係によって死因が決められているようです。

 

最後に

抗体検査は、まだまだ万能検査とはいえません。

ただ、正確な抗体検査ができるようになれば社会活動が許される目安になるかもしれません。

問題としては、すでに変異が繰り返されていることが指摘されていることです。

その真意は、これから私達が感染することで分かってくるでしょう。

毎年恒例の感染症になるのか?

1度の感染で終わるのか?

それは、まだ誰にも分かりません。そもそも、新型のコロナウイルスですのでまた新しいウイルスが発生することは容易に想像がつきます。

今回は、緊急事態宣言が発令されるまでに至りました。まだ終わっていませんが、災害対策のように次の感染症対策も見据えて様々な対策を講じていって欲しいですね。


参考

健栄製薬:インフルエンザの抗体とは? 抗体ができる仕組みと、その働きを知ろう!
https://general.kenei-pharm.com/learn/influenza/5074/

 

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