●この記事では、ヒスタミン中毒の原因と子どもについて説明しています。
皆さんは、「食中毒」といえばサルモネラ菌などの細菌やアニサキスのような寄生虫、また毒茸などによる自然毒を思い浮かべるのではないでしょうか?
ですが、実は食べ物に残存した洗剤などの化学物質も食中毒に含まれます。
今回は、化学物質の1つ「ヒスタミン中毒」についてご紹介します。
そもそも「食中毒」ってなに?
全日本病院協会では、このように説明されています。
食中毒とは、有害な微生物や化学物質を含む飲食物を食べたときに生じる健康被害のこと
ちなみに、一時期は寄生虫や伝染病は除かれていましたが、現在はそれらを食品が運んだことが明らかであれば、関連する問題も食中毒とみなされます。
つまり、「食中毒」と一言でいっても原因は「細菌」や「ウイルス」、「自然毒」だけでなく化学物質をはじめ広範囲にわたることになります。
それでは、食中毒を引き起こす化学物質の1つ「ヒスタミン」による食中道は、よく引き起こされることなのでしょうか?
ヒスタミン食中毒は珍しい食中毒?
今回、この食中毒を取り上げた理由は、令和2年11月11日墨田区内の保育園で提供された給食で発生した食中毒の原因として、ヒスタミンの検査がおこなわれたことを東京保健局が発表したためです。
私の息子が通っている幼稚園は来年(2021年)から、突然、こども園になることが決まり、給食が始まるため、「子どもにも関係するかもしれない?」思い調べて見ました。
それでは、ヒスタミンは何から検出されるのでしょうか?
そもそも「ヒスタミン」ってなに?
ヒスタミン食中毒は、アミノ酸の一種「ヒスチジン」が多く含まれる赤み魚等の食品の温度管理不良などで、食品に付着していたヒスタミン酸性菌が増殖。
この菌が産生する酵素の働きで食品中に多量のヒスタミンが生成・蓄積されることで引き起こされます。
→原因は、赤身魚やその加工品がほとんど。
ちなみに、ヒスタミンは加熱調理しても分解しないため注意が必要です。
とはいえ、少しでも摂取すれば食中毒いなるわけではなく・・・
- 大人:22~320g
*ヒスタミンとして100ミリグラム以上食べると、食中毒を発症するとされている。
それでは、珍しい食中毒なのでしょうか?
1歳~4歳が最も多い!?
厚生労働省によると、平成18(2006)年~27(2015)年までの10年間で、ヒスタミン食中毒の発生状況はこのようになっています。
図1 【ヒスタミン食中毒の年代別患者数】
図1から分かるように、幼稚園・保育園・小学校・中学校までの子ども達に発生していることが分かります。
さらに、厚生労働省では、平成23年~平成29年までのそれぞれの年間ヒスタミン食中毒の事件数と患者数が発表されています。
それによると、以下のようになっています。
図2 【平成23~29年 ヒスタミン食中毒の事件数と患者数】
その年によって、「事件数」や「患者数」は異なります。
ただ、ヒスタミン食中毒は一度発生してしまうと多くの子ども達が巻き込まれてしまう食中毒であることが分かります。
そして、少なくとも毎年引き起こされる食中毒の1つであり、図1から分かるようにヒスタミン食中毒になる患者は、14歳以下の子ども達だけで全体の60%を越えてしまっています。
少なくとも、子どもと比べれば高齢者には珍しい食中毒といえるでしょう。
それでは、どういった症状があるのでしょうか?
ヒスタミン食中毒はどうなってしまうの?
さて、ヒスタミン食中毒は14歳以下の子ども達に特に発生しやすい食中毒で、その中でも1歳~4歳までの子ども達に最も多い食中毒であることが分かりました。
それでは、どういった症状があるのでしょうか?
東京都保健福祉局では、ヒスタミン食中毒の特徴が示されています。
ヒスタミン食中毒の特徴とは?
すぐに発症する!
食中毒といえば、様々なものがありますよね。
代表的な食中毒の症状発症時間の目安を挙げれば以下のようになります。
- 腸炎ビブリオ(食後5~24時間)
- ボツリヌス菌(食後8~36時間)
- ノロウイルス(食後1~2日)
このように、食中毒はすぐに症状が出るとは限りません。
ちなみに、腸管出血性大腸菌にいたっては、発症までに4日~9日が目安になっています。
ところが、ヒスタミン食中毒は食べた直後~1時間以内に症状が出始めます。
それでは、どんな症状が出てしまうのでしょうか?
主な症状!
- 顔面紅潮
- 蕁麻疹
- 頭痛
- 発熱などのアレルギー様症状
ただし、重症になると呼吸困難や意識不明になることはありますが、幸い死亡事例はいまのところないようです。
墨田区で発生した保育園事例の原因は?
ところで、先程、ヒスタミン食中毒は「赤身魚」や「その加工品」がほとんどの原因になっていることをお伝えしました。
それでは、2020年11月に墨田区の保育園で引き起こされたヒスタミン食中毒も赤身魚やその加工品からヒスタミンが検出されたのでしょうか?
この事例で「ヒスタミン中毒の原因!」とされた食べ物は、当時、給食で出された「きつねうどん」でした。
- 検食(きつねうどん、きざみ揚げ)から8mg/100g、20mg/100gを検出
- 残品(だしパック)は5mg/100g未満
この事例では、「給食のきつねうどん」がヒスタミン食中毒の原因として決定されていますが、その原因の1つが、「長時間煮た出汁パック?」とされています。
確かに、大人の摂取量でも22gからヒスタミン食中毒が引き起こされる場合があるため、子ども、それも保育園児(被害者:1~6歳)ならなおさら、少しの摂取量でヒスタミン中毒が引き起こされる可能性はあります。
ただ、これでは家庭で安易に出汁パックを使ってうどんを作ることができませんよね・・・
ところで、出汁パックについては、残品とはいえ微量のヒスタミンしか検出されていないため、そこまで警戒しないといけないのかについては疑問が残ります。
もしも、本当に出汁パックがヒスタミン食中毒の原因になったとすれば、今後何かしらの対策がなされることになるでしょう。
ただ、これまで出汁パックでヒスタミン食中毒が発生した事例はそもそも見つかっていないため、墨田区の保育園で引き起こされた食中毒の件については、別の原因を考えた方が現実的かもしれません。
それでは、魚を調理するときにヒスタミン食中毒を家庭でも気をつけるポイントはどこにあるのでしょうか?
ヒスタミン食中毒を防ぐには?
- 冷凍魚介類は冷蔵庫で解凍し、常温解凍は避ける。(凍結・解凍を繰り返さない。)
- 室温を確認し、魚の下処理場所は熱源から離すなど、品温が高くならないよう気を配る。
- 下味をつける際も室温で放置せず、冷蔵保存し、その日のうちに使い切る。
つまり、魚介類の常温解凍は避け、できるだけ低温で短時間で解凍する必要があります。また、冷凍・解凍を繰り返さないことも大切になります。
ちなみに、冷蔵保存をしていても長時間の保存でヒスタミンが増えることもあるため、できるだけ早く食べる必要があります。
→常温で放置せず、調理した食材はその日のうちに使い切る。
ちなみに、給食施設などおこなわれる検食の注意点として、東京都保健福祉局ではこんな指摘があります。
魚を原材料として使用したメニューについて、香辛料とは異なる「ピリピリ 」と舌や唇に刺すような感覚があった場合は、速やかに 給食中止の判断がされます。
これは、ヒスタミンが生成されても外観や臭いの変化はほとんどありませんが、多量のヒスタミンを一度に摂取すると、食べた時に舌がビリビリと感じることがあります。
例えば、家庭での検食は親がすることになります。異変を感じれば、特に子どもはヒスタミン食中毒が引き起こされる危険性が高いため、食べさせないようにする必要があります。
ヒスチジンが多く含まれる魚介類は・・・
- 本マグロ(赤身)
- カツオ
- カジキ
- ブリ
- サバ
- サンマ
といった順番で、多く含まれています。当然、これらを使った加工食品も多く含まれることになります。(白身魚にも赤身魚よりは少ないですが含まれている)
事例としては、社員食堂で出された「カジキの照り焼き定食」を食べた73名の内、36名が顔が赤くなるなどの症状(その内16名が入院)した事例などもあるため、子どもだけの食中毒ではありません。
→ヒスチジンが多く含まれる魚ほど、ヒスタミン食中毒の原因になりやすい。
最後に
ヒスタミンは、一定以上を摂取することで一部の人にアレルギーと似た中毒症状を引き起こします。ただ、多くの場合、ヒスタミン中毒を引き起こすことはありません。
あくまでも・・・
- 保存が不適切だった魚
- アンチョビ
- 魚醤(ぎょしょう):生の魚を塩で漬けこんで発酵させてできる液体
などにより、ヒスタミン濃度が大きく増えたため、ヒスタミン中毒が引き起こされています。
過剰に気をつける必要はないとは思いますが、舌の痺れや蕁麻疹のアレルギーのような症状が現われることがあれば、食べないようにご注意下さい。
味見をしながら料理を作る場合が多いと思いますが、特に子どもが食べる時は必ず確認してから食べさせるようにしてあげて下さいね。
参考
東京都保健福祉局
→https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/anshin_topics.html
コメントを残す