皆さんは、タバコについてどう思いますか?
- タバコがないと生活できない!
- たまに吸うぐらい。
- どっちでもいい。
- 絶対反対!
考え方は人それぞれだと思います。
ただ、少なくとも吸う人にとってますます吸いにくい状態になっています。
今回は、「喫煙に対して、とうとう法律で過料が規定された!?」についてご紹介します。
たばこ規制の簡単な振り返り
そもそも、タバコは2000年から始まった健康日本21からさまざまな規制・対策が実施されるようになりました。
規制が始まる前は、バスや電車ですら当たり前のようにたばこが吸える社会だったため、今から考えるとありえない状態でした。
そんな状態からたばこ税はどんどん上がり、健康増進法の制定、受動喫煙防止条例や禁煙治療の保険適用拡大など、たばこへの規制は約20年をかけてゆっくりのスピードで進められてきました。
「ゆっくり」といったのは、WHOが示している政策パッケージをみると、日本がどれだけ遅れているのかが見てとれるためです。
このことについては最後にご紹介するとして、それでは罰則について説明します。
健康増進法
2003年5月に施行された健康増進法は、「国民の健康を増進するために定められた法律」で、この中で受動喫煙への防止も規定されています。
国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない。
これにより、分煙が進められていきました。
さて、この健康増進法なんですが、2018年7月「健康増進法の一部を改正する法律:改正健康増進法」が成立しました。
改正健康増進法により、望まない受動喫煙の防止を図るために多数の者が利用する施設等の区分に応じた受動喫煙防止対策の措置が定められました。
- 喫煙可能な場所に20歳未満(客・従業員)を立ち入らせてはいけない!
- 屋内は喫煙専用室を設置
- 喫煙可能な場所である旨を掲示し、一定の条件を満たすことで店内の全部または一部の場所で喫煙可能
- 屋外・家庭であっても、周囲の状況に配慮する
さて、このように全ての人が関わる内容になっていますが注意するのはここからです。冒頭でお伝えしたように、違反すれば罰則が適応されることになります。
その罰則というのが「過料(かりょう・あやまちりょう)」です。
内容によっては50万円の過料に処されます。
~間違えやすい「過料」と「科料」!~
過料は、税金と同じような手続きで回収されます。また、犯罪ではないため刑罰が適用されないことから、「前科」が付くこともありません。
とはいえ、改正健康増進法のように生やさしい金額ではない過料が請求される場合があります。
ちなみに、同じ読み方で「科料(かりょう・とがりょう)」というものがあります。こちらは、1,000円以上~1万円未満の刑罰です。ただ、金額は少ないですが刑罰になるため前科が付きます。
→「過料」とは違い、「科料」は納付しなければ労役場留置(刑務所に収監されて「1日いくら」と決められた額で払い終わるまで強制的に働かされる)ことになります。
それでは、どういった場合に罰則が付くのでしょうか?
義務違反をした場合の一連の流れ
①全ての人が対象(喫煙禁止場所での喫煙が発覚!)
1.違反が発覚(都道府県等に住民からの相談窓口を設置)
⇊ ⇊
2.管理権限者等が喫煙の中止等を求める
⇊ ⇊
3.改善がみられない場合、都道府県知事等に通報
⇊ ⇊
4.都道府県知事等が指導
⇊ ⇊
5.改善がみられない場合
⇊ ⇊
6.都道府県知事等が命令
⇊ ⇊
7.改善がみられない場合
8.罰則が適用(都道府県知事等が地方裁判所に通知)
②管理権原者等が対象(禁煙器具・設備等の設置が不十分であることが発覚!)
1.違反が発覚(都道府県等に住民からの相談窓口を設置)
⇊ ⇊
2.都道府県知事等が指導
⇊ ⇊
3.改善がみられない場合
⇊ ⇊
4.都道府県知事等が勧告
⇊ ⇊
5.改善がみられない場合
⇊ ⇊
6-1.都道府県知事等が公表
or
6-2.都道府県知事等が命令⇒改善がみられない⇒罰則の適応
③全ての人が対象(紛らわしい標識の掲示、標識の汚損等が発覚!)
1.違反が発覚(都道府県等に住民からの相談窓口を設置)
⇊ ⇊
2.都道府県知事が指導
⇊ ⇊
3.改善がみられない場合
⇊ ⇊
4.罰則の適用
④管理権原者等が対象(20歳未満の者を喫煙室に立ち入らせたことが発覚!)
1.違反が発覚(都道府県等に住民からの相談窓口を設置)
⇊ ⇊
2.都道府県知事等が指導
⇊ ⇊
3.違反があった場合、都道府県知事等の指導によって改善を図る
このように、「対象」と「状況」によっても違いますが、いきなり罰則が適応されることはないことが分かります。ただ、標識等の掲示を汚損などした場合は1回の指導で改善しない場合は罰則の適応がなされます。
さらに、お店などの場合は信用問題にも関わるため、そく死活問題になる案件です。「喫煙専用室」がないような分煙では、20歳未満の従業員を働かせることはできなくなります。
「知らなかった」では済まされないため、十分にご注意下さい。お客さんや従業員などが通報者になります。
それでは最後に、日本とイギリスを比較してWHOが掲げる政策パッケージを比較してみましょう!
WHOの政策パッケージ
WHOでは、日本も批准している「たばこ規制枠組条約」に6つの主要政策が盛り込まれています。
- Monitor(たばこ使用と政策のモニタリング)
- Project(受動喫煙からの保護)
- Offer(禁煙支援・治療)
- Warm(たばこの危険性の警告)
- Enforce(たばこの広告・販促・後援の禁止)
- Raise(たばこ税の引き上げ)
それぞれの頭文字をとって「MPOWER」と呼ばれています。
《日本のたばこ規制対策の現状(2016年)》
WHOの政策パッケージ | 日本 | 英国 | |
M | たばこ使用と政策のモニタリング | 優 | 優 |
P | 受動喫煙禁止のための法規制 | 不可 | 優 |
O | 禁煙支援・治療 | 良 | 優 |
W | たばこの危険性の警告表示 | 可 | 優 |
マスメディア・キャンペーン | 不可 | 優 | |
E | たばこの広告・販促・後援の禁止 | 不可 | 良 |
R | たばこ税の引き上げ | 良 | 優 |
上記のように、4段階で表示されているため、とりあえず優・良・可・不可で表示してあります。
いかがでしょうか?
とりあえず、「たばこ使用と政策のモニタリング」だけは申し分ない最高の評価にも関わらず、「たばこの宣伝はしている」という評価になっています。
しかも、「受動喫煙の法規制がまったくできていない」という評価です。
法規制ができておらず、たばこの宣伝もしているのに、モニタリングで「優」の評価をえていることに矛盾を感じますが、とりあえず日本の現状はこのようになっています。
「たばこを広告や後援などで勧めて、依存症になって困ったら治療する」という悪循環に陥っているようにも見えますね。
→禁煙治療については、こちらの記事で紹介しています。
最後に
たばこへの規制は、年々厳しくなります。
今回紹介した改正健康増進法は、基本的に2020年4月1日から施工されます。(一部、猶予期間あり)
ただ、根本問題として「ここまで規制するのなら、そもそもたばこを販売しなくてはいいのでは?」
極論になるのかもしれませんが、「命に関わる健康への害がすでに証明されているため、麻薬防止法のように確実に取り締まってもいいのでは?」
という素朴な疑問が生まれます。
そもそも、すでにたばこは度重なる値上げで高級品に変わりつつあります。
今後、日本でのたばこの立ち位置は、昔のように改善することはないと思います。ただ、新しいたばこが生まれるたびに振り回されないようにしたいですね。
参考
e-ヘルスネット:わが国のたばこ規制・対策の現状
→https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-04-004.html
健康増進法
→https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414AC0000000103#132
厚生労働省:健康増進法
→https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html
JT:法律
→https://www.jti.co.jp/tobacco/bunen/knowledge/law/index.html
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