スギ花粉に効果的!?シドウィア菌を利用した新技術の効果とは!

 

皆さんは、花粉症で困ったことはありませんか?

かくいう私は、2・3年程前から鼻がムズムズ、目が潤むようになってきました。「花粉症は、突然なる!」なんて言われますが、実感しています。

そんな花粉症の原因となる花粉の飛散を防ぐ菌が発見されました。

今回は、「花粉症に期待されるシドウィア菌」についてご紹介します。

 

「シドウィア菌」ってそもそもなに?

そもそも、シドウィア菌は全国に生育しているカビの仲間です。さらに、実は約100年も前から知られている菌でもあります。

ただ、当時花粉症は問題になることはなく「雄花に病気を起こす新規の植物病原菌」として報告されスギ黒死病という病名が付けられていました。

ちなみに、この微生物は約100年前に日本語でのみ報告されたため、世界では認知されていないようです。

ただ、雄花以外にはスギにとって無害なため「上手く利用すれば花粉の飛散だけを抑えることができる!」という考えのもとシドウィア菌の研究が始まりました。

 

シドウィア菌にはどんな効果があるの?

感染を拡大させていく!?

健全な雄花の場合、開花して花粉を飛散させた後に落下します。

ですが、シドウィア菌に感染した雄花の多くは落下せずにそのまま枝に留まります。こうして枯れた雄花(枯死雄花)の中にはシドウィア菌が残ることになります。

❶枯死雄花の中に残ったシドウィア菌は、夏にかけて枯死雄花の中で成熟し、雄花の鱗片の間に黒色の菌糸体を発達させ、胞子を形成。

➋これらの胞子が飛散して、再び新たな感染を引き起こす。

 

《感染拡大サイクル》

  1. 5月~9月:枯死雄花が黒変
  2. 9月~10月:鱗片の隙間に胞子形成
  3. 9月~12月:胞子を分散させる
  4. 10月~12月:当年夏に形成された健全な雄花に感染。
  5. 2月~3月:枯死雄花→開花しないため花粉は飛ばない。

ただ、これでどんどん感染していくのならそもそもスギ花粉が社会問題化(「3人に1人」と言われている)ようなことにはならないですよね。

つまり、シドウィア菌を雄花に感染させるためには課題があるということです。

 

乾燥に弱い!

シドウィア菌をスギに散布すれば簡単に感染させることができそうですが、実は雄花表面にシドウィア菌を散布しただけでは意味がありません。

なぜなら、雄花表面にシドウィア菌が付着できても乾燥してしまい活性しなくなるためです。つまり、「スギ花粉の飛散を防止するための防止効果」を発揮できるようにする必要があります。

Tama66 / Pixabay

とはいえ、すでに防止効果のある防止液の大量生産に成功しています。

 

《防止液の効果》

乾燥粉末化した胞子を使った防止液を、秋にスギ雄花へ散布

  • 雄花が感染・枯死
  • 花粉の飛散を抑えた

約8割の雄花に、こういった効果がありました。

 

今後の展望は?

スギ花粉症対策の新技術として、「菌類を活用する」という方法が、今回紹介しているシドウィア菌を利用した花粉症対策です。

確かに、研究段階とはいえ一度散布することで高確率で感染させることができる防止液の大量生産にも成功しています。

しかも、一度感染させれば冒頭で紹介したようなサイクルに入るため、二次感染により拡大させていくことができます。

ただ、実用化させるには大きな課題があります。

 

《課題》

  • 農作物や森林生態系に悪影響を及ぼさないことを立証する。
  • 農薬取締法に従って微生物農薬の登録を目指す。

まさかとは思いますが、細菌兵器のようになってしまっては意味がありません。菌は生物です。慎重の上にも慎重に進められていくことは当然のことでしょう。

というわけで、実用化されるにはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、効果は立証されており、しかも難しい方法でもありません。

まずは、安全性の確認がどれくらいかかるかが目安になりそうです。

eroyka / Pixabay

 

最後に

花粉症は、大人だけの病気ではありません。

2~3歳で、花粉症になることは珍しくなくなりました。

しかも、10歳以下で花粉症になった場合、その子どもは花粉への感受性が高いため、私のように大人になってからアレルギーになった人よりアレルギーが重たい状態になります。

また、治療しないと成長とともに重症化するリスクが高く、他のアレルギーの病気にもかかりやすくなります。

なにより、花粉症は症状が出ていない人にとっても、いつ症状がでるかわからないアレルギーの1つです。新技術が開発・実用化されていくことで、花粉症は将来的になくなるかもしれません。

ただ、新しい技術の影響で新しい病気や環境問題が引き起こされては意味がありません。完璧な技術はありませんが、できる限り影響の少ない技術が開発されるといいですね。

研究を進めているのは、国の研究機関である「森林総合研究所」になります。


参考

スギ花粉対策に向けた新技術
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/4th-chuukiseika7.pdf

菌類を活用したスギ花粉飛散量の抑制効果
http://taffrc.pref.toyama.jp/nsgc/shinrin/webfile/t1_2203ae94edbdaca4547255af95167364.pdf

もろほしクリニック
http://www.morohosi-jibika.jp/

 

 

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