一度災害が発生すれば、問題になる災害ゴミ。
実際、2019年10月に発生した台風19号でもその被害の甚大さもさることながら災害ゴミの置場がないことが問題となっています。
今回は、「災害廃棄物の危険性」についてご紹介します。
災害廃棄物ってそもそもなに?
そもそも、廃棄物処理法上で「災害廃棄物」という区分や定義はありません。そのため、「産業廃棄物」か「一般廃棄物」かという区分で、原則として廃棄物処理法にともなって判断されていきます。
産業廃棄物
処理責任:事業者
事業活動にともなって生じた廃棄物の中の、法令で定められた20種類。
つまり、事業活動によって生じた廃棄物であってもこの20種類に該当しなければ、「一般廃棄物」となります。
*「工場から出されたゴミ=産業廃棄物」ではありません。
《あらゆる業種から排出される廃棄物》
①燃えがら
②汚泥
③廃油
④廃酸
⑤廃アルカリ
⑥廃プラスチック類
⑦ゴムくず
⑧金属くず
⑨ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くず
⑩鉱さい
⑪がれき類
⑫ばいじん
⑬紙くず
《業種が限定される廃棄物(業種指定以外から排出される物は一般廃棄物)》
⑭木くず
⑮繊維くず
⑯動植物性残さ
⑰動物系固形不要物
⑱動物の糞尿
⑲動物の死体
⑳以上の産業廃棄物を処理した物で、上記の産業廃棄物に該当しない物(コンクリート固形化物など)
これらが、産業廃棄物として指定されています。
一般廃棄物
処理責任:市町村
産業廃棄物以外の廃棄物が「一般廃棄物」となります。
- ゴミ→家庭系ゴミ(可燃ゴミ・不燃ゴミ等)・粗大ゴミ、事業系ゴミ
- し尿
- 特別管理一般廃棄物
これらが一般廃棄物になります。
このように、「災害廃棄物」とひと言でいっても大別すると「産業廃棄物」と「一般廃棄物」があることがわかります。
- 産業廃棄物を一般廃棄物として処理した場合、不法投棄となります。
- 一般廃棄物を産業廃棄物として処分しても違反となります。
→不法投棄になれば、廃棄物処理法(第25条)により、5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金となる可能性があります。
これが、原則です。
それでは、災害廃棄物はどのように処分されるのでしょうか?
災害廃棄物処理 《3つの仮置き場》
《一次仮置き場》
- 壊れた家や建物を解体
- 道路などから撤去した瓦礫を一時保管
→大まかな選別を行なう。
《二次仮置場》
一時仮置き場から災害瓦礫を集めて・・・
- 細かく砕く
- 選別
- 焼却
《市民仮置場》
災害時、家の中で生活する上でどうしても急いで捨てる必要がある壊れた家具などを一時的に集める場所。
→近くの公園などに設置されます。
ちなみに、各家庭や避難所での生活で出てくるゴミや壊れた家具などの粗大ゴミを災害ゴミと呼びますが、緊急生がなければ家で保管しておくことが基本となります。
*災害廃棄物は細かく分類され、そのほとんどが再生利用することができます。
それでは、災害廃棄物にはどういった危険があるのでしょうか?
災害廃棄物で二次被害!?
災害廃棄物は、ありとあらゆる物が廃棄物として辺り一面に交ざった状態で放置されている状態です。
危険な薬剤だったり、バッテリーなどにより感電することなど、あらゆる危険を想定する必要があります。
《廃アスベスト(石綿)》
~危険場所~
- 古い建築物の鉄骨
- 天井裏の吹き付け材
- 船舶や工場の煙突
- ボイラーの保湿剤等
→プラスチック袋を用いて梱包した上で、フレコンバック等丈夫な運搬容器に入れ、他の廃棄物と混合することがないよう区別して保管・運搬します。
《試薬・農薬等の化学物質》
~危険場所~
- メッキ工場
- 農協
- 漁港の倉庫
- クリーニング工場等
→保健所の指示に従う必要があります。
《感染性廃棄物》
~危険場所:病院等~
- 「感染性廃棄物」等と記されている容器
- バイオハザードマークのついた容器
→これらは、容器をそのまま保管場所へ運搬する。
《トランス等の電気機器》
~危険場所:被災した工場や大型の建物内~
- PCB使用機器は、他の廃棄物と一緒に取り扱わずに分別する。
- 建物内で保管するか、密封性のある容器に収納する。
- 漏洩防止措置(防水性のビニールシートで覆うなど)
《高圧ガスボンベ(LPガスやプロパンガスなど)》
~発生場所:一般家庭や一般事業所等~
- 自分で回収・集積せず、全国LPガス協会へ連絡する。
《カセットボンベ・スプレー》
~発生場所:一般家庭等~
- 火の気・可燃物のない風通しの良い場所でガス抜きをする。
- 太陽光から遮断した温度上昇のない場所で保管する。
《消火器》
~発生場所:一般家庭・事業所等~
- 消化器リサイクル推進センターへ連絡する。
*容器内部に海水が残留している(揺すると音がする)、極度に変形した物は引き取ることができない。
、
《塗料・ペンキ・有機溶剤》
~発生場所:事業所~
- ガスを吸い込まないように注意する。
- 液がこぼれないように注意する。
- 分別保管し、販売店・メーカー・廃棄物処理事業者へ回収、処理依頼をする。
《乾電池・ボタン電池》
~発生場所:一般家庭・事業所等~
- 販売店に処理を依頼する。
《カーバッテリー》
~発生場所:自動車~
- 液漏れに注意する。
- 液漏れしないように運搬する。
- 販売店・ガソリンスタンドへ回収依頼する。
このように、工場など特別な場所だけでなく一般家庭であっても災害廃棄物に注意する必要があります。
最後に
そもそも、様々な物質が溶け出している可能性があるため、完全防備で災害廃棄物の処理は実施しなくては危険です。
- 防塵マスク
- ヘルメット
- ゴーグル
- ゴム手袋
- 底の丈夫な靴(安全靴など)
とはいえ、一般家庭で普通はこんな装備持っていないですよね・・・
基本的には、危険な場所には近づかないことが必要になってきます。
つまり、まだ手が入っていない場所には、できる限り近づかないようにするしかないでしょう。そして、できる限りの防御をして作業する必要があります。
→作業時の服装については、こちらの記事でも紹介しています。
参考
環境省
→https://www.env.go.jp/recycle/waste/laws.html
株式会社 遠藤商会
→https://www.endoshokai.co.jp/industrial-waste/
ゴミの手引き
→https://dwasteinfo.nies.go.jp/plan/project_man/after_sakai_city_handbook.pdf
災害発生時における廃棄物処理の注意点
→http://kouikishori.env.go.jp/document_video/pdf/pamphlet.pdf
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