前回、歯の「再植」についてご紹介しました。
それでは、抜けてしまってどうにもならなくなった歯は捨てるしかないのでしょうか?
実は、抜けた歯は再生医療に使えることが分かってきました。今回は、「抜けた歯を捨てるのはもったいない!」理由をご紹介します。
「再植」についての記事はこちらで紹介しています。
これまで捨てられてきた歯
乳歯が抜ければ、『「上の歯は、床下へ」・「下の歯は屋根へ」と永久歯が生える方向に伸びますように』という願いを込めて昔から行われてきました。
私自身、祖母にそう教えられよくやっていました。
さて、日本の歯科で毎年*抜歯されている歯の本数をご存じですか?
答え.1,000万本以上!
*抜歯:歯科医師や医師が人為的に患者の口腔内から歯を抜く医療行為。
つまり、自然に抜けた歯の数も合わせれば本当に膨大な歯が毎年抜けていることが分かります。それでは、この抜けた歯にはどんな役割が残っているのでしょうか?
再生医療の可能性!
「歯髄」は、神経や血管を含む組織で歯髄がなくなると「死んだ歯」になります。そして、歯医者で「神経を抜く」ということは、歯髄を取り除く行為をいいます。
→歯髄を取り除いた歯は、折れやすくなります。(壊死した歯髄を放置しても感染症になり危険)
さて、「歯髄」の必要性が理解していただけたかと思います。再生医療に使うのも。この歯髄です。
なぜ歯髄に注目?
再生医療というと、皮膚移植をイメージする方も多いのではないでしょうか?
ただ、皮膚は紫外線にさらされ新陳代謝も激しく正直、遺伝子がすでに傷付いている可能性がありました。
ですが、歯髄なら歯の固い組織に保護されているためまさに「タイムカプセル」のように遺伝子への影響も最小限に抑えることができるというメリットがあります。
*歯髄には、神経を修復する機能も分かっておりそのまま使える細胞としても注目されています!
それでは、いよいよ現在おこなわれている2つの歯の活用法についてご紹介します。
歯の有効活用
DPストック(Dental Pulp=歯髄)
寄付された歯(乳歯・親知らず)を研究や治療に活用する方法です。対象は、「乳歯」と「20歳以下の親知らず」です。
→「献歯(けんし)のボランティア活動」とも呼ばれます。
*「献歯」ですので、費用はかかかりません。
歯髄細胞バンク
万一の病気や事故に備えて、自分や家族のために歯髄細胞を保管する方法です。(半永久的に保管可能)
できるだけ若い歯髄細胞を預けることで・・・
- 本人はもちろん100%
- 母子間でもほぼ100%
- 兄弟間で約25%
の確率で適合するため、万一の再生医療に利用することができます。
◎細胞保管申し込み費用◎
- 10年間の保管料含む初期登録料は税別30万円必要。→月額25,000円
- 11年目以降は、10年間保管料税別12万円必要。 →月額1,000円
決して安くはありませんが、保険には多くの方がお金を支払っています。ですが、治療そのもののための保険ではありませんよね。
つまり、治療費の確保のための保険ではなく、治療そのものの保険と考えて見てはいかがでしょうか。
◎100歳まで生きるとして10歳から乳歯を預けた場合◎
- 30(万)✕1回(初回の10年分)=30万円
- 12(万)✕8回(80年分)=96万円
→保管料126万円。
あとは、手術代や細胞の培養料などが別途必要になるようです。
「歯髄細胞」は本当に効果があるの?
①名古屋にある「タツキ歯科」では、患者さんのインプラント治療で上顎の歯の骨が足りなかったが、「歯髄細胞を注入することで骨を再生。無事インプラント治療が完了した」という実績が報告されています。(普通は、骨移植がおこなわれるがリスクがあり時間もかかる)
②「日本大学歯学部総合歯科研究所」では、脊髄損傷により後ろ足が動かないマウスに、歯髄細胞を移植して約2週間で後ろ足が動くようになったという臨床結果や、他にも自己免疫疾患にも効果が期待されています。
*歯髄細胞の効果については、脊髄損傷の患者さんの腕が上がるまで治療効果があった症例まで紹介されています。
注意点は?
①約85%が細胞保管が可能ですが・・・
- 虫歯が進行している。
- 細胞が細菌に感染している。
- 歯髄細胞が汚染などにより培養できない。
といったことがあります。
②自然脱落乳歯を預かってもらうこともできますが、抜歯とは違い感染の確率が高まります。できれば、歯髄バンクの提携歯科クリックで抜歯することが望まれます。
→乳歯が自然脱落する前に、専用容器を保持している必要があります。
*全国に提携歯科クリニックがあります。
③再生医療に使える幹細胞は、「20~30歳で激減する!」と言われています。できるだけ、若い時期の細胞保管が重要になります。
*資料請求はこちらからできます。
最後に
これまで捨てるだけだった歯ですが、科学の進歩とともに可能性がどんどん広がっています。個人的にはそこまで長生きしたいとはあまり思っていません。
ただ、最後まで健康でいたいとは誰もが願うことではないでしょうか?
再生医療がこれからどこまで進むか未知数ですが、子ども達の将来を考えると「歯髄バンク」という選択肢はこれまでにない画期的な方法です。
ひょっとしたら、「爪」からとか「唾液」からとかもっと画期的な方法ができるようになるかもしれませんね。
参考
歯髄細胞バンクと献歯
→https://www.acte-group.com/
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