「電磁波!」と聞くとどんな身体への影響を思い浮かべますか?
- 電子レンジがまわっているときに近づいたら危ない!
- 白血病などガンになりやすい!
- 高圧線の下に行ってはいけない!
など、これまで電磁波についてはさまざまなことが言われてきました。
ただ、そもそも電磁波は携帯や蛍光灯など電化製品からもでているため、多くの人は24時間365日浴び続けていることになります。
今回はそんな、「たびたび問題になる電磁波の影響」についてご紹介します。
「電磁波」ってそもそもなに?
「電磁波」とは、電気のエネルギーが波として遠くに伝わることをいいます。つまり、電気を使えば電磁波が発生するため現代人にとって電磁波と無縁の生活はほぼ不可能でしょう。
そして、電磁波には大きく分けて3種類あります。
電磁波の種類
- 低周波 (0~300Hz) :家電製品・送電線
- 中間周波(300Hz~10Mhz) :IH調理器
- 高周波 (10Mhz~3THz) :携帯電話
このように、電磁波は強さによって「底・中・高」に分けられています。当然、家電製品によって電磁波の種類は異なります。
電磁波の影響
さて、それでは気になる電磁波の影響についてですが、今のところ「日常生活程度の電磁波による悪影響はない!」ということが通説になっています。
そもそも、電磁波は1895年(約120年前)から利用されています。イタリア人のマルコーニという人物が無線電信を成功させたことがその始まりです。
当時とは比べものにならないほど現在では電化製品に囲まれ、電線が張り巡らされていますが、「一般の生活では電磁波の影響はない!」とされています。
「電離性放射線」と「非電離性放射線」
ただ、電磁波は周波数によって性質が異なります。
《電離性放射線》
健康診断などで、皆さんも経験したことがあると思います。
電離放射線は、通常「放射線」と呼ばれ病気の診断・治療などに使われるX(エックス)線・γ(ガンマ)線がこれに含まれます。
先程、「日常生活で使われる電磁波は影響がない」と区別されているのはこのためです。
電離放射線は、電磁波が非常に高いため(高エネルギー)、原子や分子から電子を剥ぎ取る作用(*電離作用)を引き起こします。
つまり、エネルギーが大きいため「発がん」や「突然変異」などの顕著な生体作用を及ぼすことがあります。
*電離作用:電子を弾き飛ばす作用。
→電子が弾き飛ばされたことで、電子の数は非常に不安定な状態になります。さらに、残った電子が穴埋めをしようとして、はじき出された外側の電子の分だけ内側に移動。または、ただ単に内側から外側に移動(励起)するなど。
(あまりにも強い電磁波を受けると、原子は不安定になり、不都合な化学反応が起きたり壊れたりする)
《非電離放射線》
紫外線の一部・可視光線・赤外線・テレビ・ラジオの電波など周波数が3,000兆Hz以下の電磁波。
→生体組織の分子・原子を電離・励起するようなエネルギーを持たず、発がんや突然変異などの生体作用をきたしません。
つまり、正確にはあまりに異常な電磁波は身体に影響を与えるが、普段から私達の周りにある程度の電磁波なら身体の悪影響はないということです。
科学的に証明されている影響(「刺激作用」・「熱作用」)
さて、普段私達の周りにある電磁波は、特に悪影響がないと紹介しました。
電磁波の影響については、WHOをはじめ各国で研究が進められ50年以上の研究成果が蓄積されています。
《刺激作用》
- 電波が当たっている金属に触ると、人体に電流が流れる。
- 電波の影響によって体内で誘導電流が生じる。
これらの電流がある程度以上の強さになると「ピリピリ」「チクチク」と感じます。
→電波による「刺激作用」
《熱作用》
電波は物に当たると反射する性質があります。人体にあった場合も一部は反射しますが吸収され電波もあります。
吸収された電波のエネルギーは熱となり、全身または局所的に人体の体温を上昇させます。
*吸収される電波のエネルギーが極めて強く、約1℃以上も深部体温が長い時間上昇する場合は、生体に影響があることが多くの動物実験で知られています。
安静状態で全身に1kg当たり約4W(4w/㎏)のエネルギーを吸収した場合が、これに当てはまります。
→この大きさの電波エネルギーを、一般的に吸収することはありません。
とはいえ、「やはり電磁波の影響は心配!」ということでこんな作用が心配されています。
非熱作用
弱い電波により・・・
- 遺伝子が損傷
- 脳腫瘍
- 白血病などのガン
- 頭痛
- 睡眠や学習への影響
といった不安を感じている人もいます。
ただ、冒頭でお伝えしたように非電離放射線は、X線・γ線のような電離放射線と違い電離作用を引き起こすことは、そもそもできません。
→非熱作用を引き起こす可能性は今の所、世界中の50年以上の研究において証拠は示されていません。
とはいえ、電磁波にはさまざまな制限がなされています。
「基礎指針」と「管理指針」
《基礎指針》
電波の生体作用(刺激作用と熱作用)を考慮した人体の安全性評価の基準となる指針。
→例えば、基地局からの電波の場合は10倍の安全率を考慮し0.4w/㎏以下であることが定められています。
《管理指針》
基礎指針を満たすための実測できる物理量(電界強度等)を定めたもの。
「管理環境」と「一般環境」に分けて規定されています。
- 管理環境・・・電波を職業的に取り扱う人が対象。
- 一般環境・・・それ以外の一般の人を対象。
→一般環境の指針値は、管理環境からさらに5倍の安全率を考慮し0.08w/㎏以下であることが定められています。
このことから、一般環境の管理指針は50倍もの十分な安全率が考慮されています。
世間一般的に言われる不安
胎児など赤ちゃんへの影響
- 送電線や家電製品からの低周波電磁界による胎児への影響(脳梗塞や小児白血病など)は考えられていません。
- IH調理器具を含む家電製品の電磁波は、国際ガイドラインをさらに下回るレベル。
- 妊娠中であっても、携帯電話による健康被害は考えにくい。
電子レンジ
電子レンジは、2.45GHzの電磁界(マイクロ波)を発生させることで調理を行う調理器具です。
マイクロ波は、組織内で熱を発生させるため・・・
- 血液の供給が少なく温度調節機能の弱い気管(眼球など)
- 温度に敏感な気管(睾丸など)
→こういった気管は、マイクロ波を浴びることで熱による損傷を受ける場合があります。
ただし、こういった症状がでるときは、電子レンジの周囲の測定値よりはるかに高いレベルに長時間ばく露された場合だけです。
つまり、電子レンジはマイクロ波をそもそも内部で隔離するため・・・
- 電子レンジのスイッチを切れば、レンジ庫内の食べ物にもマイクロ波のエネルギーが残ることはない。
- 現在の電子レンジは、マイクロ波がレンジの内部で確実に閉じ込められる構造になっている。
- 扉を開けたときに、マイクロ波が外に漏れないようにすぐに停止する設計。
このような機能があるため、電子レンジを使ったからといって健康に影響を及ぼすことはありません。
電磁波過敏症
めまい・吐き気・ヒリヒリするなどの症状を訴える方がいますが、電磁波が原因ではないと考えられています。
つまり、電波を扱うような仕事などで、よほど他の人よりも電磁波にさらされてでもいない限り、電磁波に関する影響は「刺激作用」と「熱作用」だけで、それ以外の悪影響は長年の研究の中でも発見されていません。
このように、私達が生活するだけの環境で電磁波による影響がないことが一般的です。とはいえ、「まだ、危険性が見つかっていないだけ?」と言えるかもしれません。
そもそも、「身体に悪いと思っているだけ」だとしても実際に体調は悪くなるものです。あとは、今後の研究成果とそれぞれの考え方・感じ方次第でしょう。
最後に
目に見ることができないため、電磁波の影響は確かに気になります。
例えば、携帯電話は電波が届きにくい所で発信すると電波の強さが大きくなります。
ただ、私達の周りは電磁波に囲まれていて、もし本当に悪影響があるのなら、そもそも長寿大国になっていないようにも思います。
少なくともWHOは電磁波による病気との因果関係を否定しています。
実際、私自身も小学生の頃に高圧線の下で1年程住んでいたことがありましたが、特になにも感じませんでした。
→高圧電線の下は、破格の値段になっている場合があります。
*電磁波による懸念もあるかもしれませんが、そもそも事故物件と同じで、誰も住みたがらなければ価格は下がります。
ちなみに、電磁波対策についてはスウェーデンが最先端のようです。(電磁波規制は、日本の100倍厳しい!)
1つ事実としてあることは、電磁波を無くすことはできないし、仮に影響があったとしても今の所どうすることもできません。
ただ、本当に影響があるとしても、長寿大国になっている現状を考えると、影響がでるまでにかなり長い時間がかかるということが言えるでしょう・・・
参考
JEIC:電磁界情報センター
→http://www.jeic-emf.jp/index.html
おしえて!ゲンさん
→http://www.oshietegensan.com/atomic/atomic_c/1529/
くらしの中の電波
→https://www.arib-emf.org/01denpa/denpa03-01.html
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